著者の所属・活動拠点の国は、ブルキナファソです。
掲載誌:International Journal of Poultry Science
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
熱帯地域では、暑さによるストレス(暑熱ストレス)が養鶏の大きな障害となり、ニワトリの産卵成績や生産性を下げることが知られています。ブルキナファソでは3月から6月ごろまでが暑い季節にあたり、鶏はしばしば暑熱ストレスにさらされます。また、魚粉や大豆かすといった従来の飼料原料は入手のしやすさや価格が安定せず、卵の生産コストを押し上げる要因になっていると著者らは指摘しています。
そこで研究チームは、現地で手に入る植物資源として、ワサビノキとも呼ばれるモリンガ(Moringa oleifera)の葉を粉にしたものと、西アフリカに自生するマメ科の樹木パルキア(Parkia biglobosa)の果肉を粉にしたものに注目しました。どちらもたんぱく質やビタミン、ミネラル、抗酸化作用をもつ成分を含むとされますが、強い暑熱ストレス下の産卵鶏の飼料に使った場合の情報は限られていました。この研究は、これらを飼料に加えることが、暑い季節の産卵成績、卵の性質、飼料にかかる費用の効率にどう影響するかを調べたものです。
何をどのように調べたか
実験はブルキナファソ西部、ボボ・ディウラソ近郊のナッソ村にあるナジ・ボニ大学農村開発研究所の養鶏研究施設で、一年で最も暑い5月から6月の2か月間に行われました。鶏舎は自然換気の半開放型で、温度と湿度を記録装置で毎日測り、暑熱ストレスの目安となる温湿度指数(気温と湿度を組み合わせて暑さの負担を示す指標)を算出しました。
対象は、産卵成績がよく知られ現地で広く使われているイサ・ブラウン種の若い産卵鶏です。2週間の慣らし期間の後、体重をそろえるようにして、通常の産卵鶏用飼料を与える対照群、モリンガの葉の粉を加えた飼料を与える群、パルキアの果肉の粉を加えた飼料を与える群の3つに無作為に分けました。各群はさらに4つの小グループに分けられ、それぞれを分析の単位としました。そのうえで、餌の摂取量、飼料要求率(卵を生産するのに必要な餌の量の目安で、低いほど効率がよい)、産卵率、卵の重さや大きさ、卵黄の色の濃さ、卵1個あたりの飼料費などを比べました。
主な結果
実験期間中、鶏舎の気温は産卵鶏にとって快適とされる範囲を一貫して上回り、温湿度指数も快適とされる基準を超え、ときに危険とされる水準にも達しました。著者らはこれを、中程度から重度の暑熱ストレスにあたる環境だったと位置づけています。
この条件の下で、2種類の植物素材を加えた群はいずれも対照群より餌を多く食べ、なかでもモリンガ群の摂取量が最も多くなりました。飼料要求率はどの群でも比較的高めでしたが、モリンガ群で最も低くなりました。産卵については、パルキア群で最初の卵が見られ、早く産卵を始めました。その後は、植物素材を加えた2つの群が対照群より高い産卵率を保ち、とくにモリンガ群は一定の週齢以降、最も高い産卵率を維持したと報告されています。
卵の性質では、モリンガ群の卵が対照群やパルキア群より重く、大きくなりました。卵白や卵黄の重さには群による差はみられませんでした。卵黄の色はモリンガ群が最も濃く、パルキア群が中間、対照群が最も薄いという結果でした。一方、卵殻の重さは対照群のほうが重かったとされています。
費用の面では、モリンガを加えた飼料は1kgあたりの価格が最も高くなりました。それでも、卵1個あたりや卵の重さ1kgあたりの飼料費は、植物素材を加えた2つの群で対照群より低くなりました。最も安く済んだのはパルキア群で、次がモリンガ群でした。
研究が示すこと
著者らは、暑い環境の下でモリンガの葉の粉を飼料に加えることで、飼料の利用効率、産卵成績、卵の一部の品質が改善したと結論づけています。同じ条件ではパルキアの果肉の粉よりも効果が大きかった一方で、卵を生産するための飼料費の効率ではパルキアにも利点がみられました。なお、この研究では鶏の体内のストレス指標は測定されていません。現地で手に入る植物を飼料に加えることが、熱帯の暑熱ストレス下で産卵鶏の生産性を支える一つの手段になりうることを、実際の暑い季節の飼育試験で示した研究といえます。
原著論文の著者・所属:Salimata Pousga(Institute of Rural Development, Université Nazi Boni, P.O. Box 1091, Bobo-Dioulasso 01, Burkina Faso)、Nabi Daouda Dao(Institute of Rural Development, Université Nazi Boni, P.O. Box 1091, Bobo-Dioulasso 01, Burkina Faso)、Timbilfou Kiendrébéogo(Institut de l'Environnement et de Recherches Agricoles (INERA), P.O. Box 8645, Ouagadougou 04, Burkina Faso)、Georges Anicet Ouédraogo(Institute of Rural Develpment, Université Nazi Boni, P.O. Box 1091, Bobo-Dioulasso 01, Burkina Faso)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Salimata Pousga, Nabi Daouda Dao, Timbilfou Kiendrébéogo, et al. Effects of Dietary Supplementation with Moringa oleifera Leaf Meal and Parkia biglobosa Pulp Meal on the Egg Production Performance of ISA Brown Laying Hens During the Hot Season in Western Burkina Faso. International Journal of Poultry Science 2026-10-17. DOI: 10.66920/ijps.2026.170.180. 原著ライセンス:CC BY.