著者の所属・活動拠点の国は、ブラジルです。

掲載誌:Foods

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的:代替肉に合った評価の物差しをつくる

大豆やエンドウ豆などの植物を原料に、ハンバーグやソーセージなどの肉製品に似せて作る「植物由来の代替肉」は、世界中で市場が広がっています。論文の著者らは、こうした製品が手軽さや受け入れやすさを高めるだけでなく、植物中心の食事で不足しがちな栄養素を補う役割も期待されていると説明しています。具体的には、ビタミンB12、鉄、亜鉛、一部の必須アミノ酸です。

食品の栄養の質を点数や等級で示す仕組みは「栄養分類スキーム」と呼ばれ、すでにいくつもあります。例として、フランスで開発された食品パッケージ表示の「Nutri-Score」、ブラジルの学校給食の献立を評価する指標、ヴィーガンの食生活全体を評価する質問票が挙げられています。ただし著者らは、これらの仕組みはいずれも代替肉の評価を目的に作られたものではないと指摘しています。そのため、代替肉ならではの栄養面や製造技術面の特徴を十分にとらえられない可能性があるとしています。

研究チームは、加工を単に栄養の質を下げる要因とみなすのではなく、代替肉の食感や味を実現する技術でもあるととらえています。この見方に立って、控えるべき栄養素と、むしろ含まれていてほしい特性の両方を評価できる、代替肉専用の指標づくりを目指しました。

どのように調べたか:専門家の合意づくりと実際の製品への適用

研究は二つの段階で進められました。第1段階では、専門家の合意にもとづいて評価指標を作りました。最初に10人の専門家がオンライン質問票に回答し、代替肉の栄養、感覚、技術、規制などの重要な論点を洗い出しました。次に、その回答と科学文献、栄養政策、食事摂取基準などをもとに推奨事項の案がまとめられました。この案を20人の専門家が「関連性」と「妥当性」の観点から採点し、一定以上の賛同を得た項目が残されました。さらに34人が参加したオンラインのワークショップで、関連性と実行可能性の観点から再評価が行われました。

第2段階では、完成した指標を実際の製品に当てはめて試しました。対象は、研究グループが以前の研究で集めたブラジル市場の代替肉の食品表示情報です。このデータは2022年7月から2023年6月にかけて、ブラジルの五つの地域で集められました。調査先は国内大手3社の小売チェーン、ベジタリアン・ヴィーガン食品の専門店、地域のスーパーマーケットです。動物由来の原料を含まず、「ヴィーガン」「100%植物由来」などの表示がある肉の代替品334製品が分析対象となりました。

あわせて研究チームは、ブラジルの栄養士を対象に指標の使いやすさを調べる質問票調査も行いました。参加者は手引書と5枚の製品ラベルの写真を受け取り、少なくとも2枚に指標を当てはめてから、使いやすさや長所・短所について回答しました。また、この指標による評価結果が、ほかの四つの栄養分類スキームの評価とどの程度一致するかも、統計的な手法で比較されました。

主な成果:7つの領域で100点満点、AからEの5段階

研究の中心的な成果は、「Nutri Veggie Index」と名づけられた評価指標です。この指標は次の七つの領域から成ります。一つ目は、包装前面の警告表示の有無です。二つ目はたんぱく質の量・質・原料、三つ目は脂質の量と原料の種類、およびオメガ3脂肪酸の添加です。四つ目はナトリウムの量、五つ目は食物繊維の量と水溶性食物繊維の有無です。六つ目は鉄・亜鉛・ビタミンB12の添加、七つ目はブラジルの生物多様性に根ざした地域食材が原材料に含まれているかどうかです。合計は最高100点で、点数に応じてA(優秀)からE(不良)までの5段階に分類されます。評価に必要な情報は食品表示から得られるように設計されており、点数計算用のスプレッドシートも用意されています。

各領域の配点の重みは、代替肉が肉製品の代わりとして重要な栄養素を供給することが期待される点を踏まえて決められました。最も重視されたのはたんぱく質の量と質で、その次が脂質の量と質です。たんぱく質の質については、消化されやすさと必須アミノ酸のバランスを示す指標が判断材料になりました。大豆たんぱく質や、豆類・穀類・いも類を組み合わせたものに最も高い点が与えられています。原料面では、たんぱく質を濃縮・分離した素材を主原料とする製品が最高点となり、たんぱく質源が見当たらない製品はマイナス点とされました。

脂質では、エネルギーに占める脂質や飽和脂肪の割合が低いほど高得点になります。原料についても、キャノーラ油や亜麻仁油のように不飽和脂肪酸から成る油が高く評価され、パーム油やヤシ油など飽和脂肪の多い原料は減点されます。ナトリウムは、代替肉では植物原料特有の風味を隠すために多く使われがちなため、厳しめの基準で評価されます。1キロカロリーあたり1mg以下が最高点で、多いほど点が下がります。食物繊維は1食分あたり5g以上で最高点となり、量が極めて少ない場合は減点、水溶性食物繊維を含むと加点されます。著者らは、こうした減点や加点の仕組みが、メーカーによる減塩や食物繊維を増やす改良を促すことを意図したものだと述べています。

この研究が示すこと

この研究は、既存の汎用的な栄養評価をそのまま当てはめるのではなく、代替肉という食品群の役割と特徴に合わせて評価の物差しを組み立てるという考え方を、具体的な形で示しました。たんぱく質の質や脂質の種類、不足しがちな微量栄養素の添加までを、食品表示の情報から点数化できるようにした点が特徴です。著者らは、栄養士や研究者などの専門家が製品ごとの違いを読み取り、より一貫した栄養評価や食事指導を行う助けになることを、こうした専用ツールの意義として挙げています。

原著論文の著者・所属:Nathália Tarossi Locatelli(Food Labeling Observatory, Nutrition and Food Service Research Center (CPPNAC), Federal University of São Paulo (UNIFESP), Santos 11015-020, SP, Brazil)、Sarah Polezi(Food Labeling Observatory, Nutrition and Food Service Research Center (CPPNAC), Federal University of São Paulo (UNIFESP), Santos 11015-020, SP, Brazil; Graduate Program in Nutrition, Federal University of São Paulo (UNIFESP), Santos 11015-020, SP, Brazil)、Mariana Frazão Batista(Food Labeling Observatory, Nutrition and Food Service Research Center (CPPNAC), Federal University of São Paulo (UNIFESP), Santos 11015-020, SP, Brazil)、Daniel Henrique Bandoni(Food Labeling Observatory, Nutrition and Food Service Research Center (CPPNAC), Federal University of São Paulo (UNIFESP), Santos 11015-020, SP, Brazil)、Veridiana Vera de Rosso(Food Labeling Observatory, Nutrition and Food Service Research Center (CPPNAC), Federal University of São Paulo (UNIFESP), Santos 11015-020, SP, Brazil)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Nathália Tarossi Locatelli, Sarah Polezi, Mariana Frazão Batista, et al. Nutri Veggie Index: An Innovative Nutrition Classification Scheme for Quality Assessment of Plant-Based Meat Analogues. Foods 2026-09-24. DOI: 10.3390/foods15193416. 原著ライセンス:CC BY.