著者の所属・活動拠点の国は、イタリアです。

掲載誌:British Food Journal

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

小売業者に注目した研究の目的

肉などの動物性食品の生産は環境への負荷が大きいとされ、植物性の食生活への移行が議論されています。その選択肢の一つが、肉の見た目や味、食感をまねて植物原料から作る「代替肉」です。この論文では、こうした製品を植物由来アナログ(PBA)と呼んでいます。研究チームによると、これまでの研究は主にメーカーの商品開発や消費者の受け止め方を扱ってきました。どの商品を棚やオンラインのカタログに並べ、どう価格を付け、どう売り込むかを決める小売業者の側は、十分に調べられていませんでした。

そこで著者らは、欧州のオンライン小売業者を対象に二つの点を調べました。一つは、販売されている代替肉の特徴から、小売業者がどのような品ぞろえを選んでいるかです。もう一つは、商品の宣伝文句や情報の出し方に、どのような売り方のパターンがあるかです。

何をどう調べたか

研究チームは2024年春、イタリア、スペイン、ドイツ、オランダ・ベルギーで全国展開する17のオンライン小売業者のサイトを調べました。代替肉の掲載ページを748件集め、同じ商品の重複を整理すると555種類の商品になりました。記録した項目は、形状、ブランド、原材料、栄養成分、価格、パッケージやサイト上の宣伝文句(「植物由来」「高たんぱく」「環境に配慮」などの表示)、調理方法、パッケージの見た目です。記録は事前に決めた手順に沿って行い、別の研究者が全体を点検しました。

分析では、まず各項目の傾向を集計しました。次に、互いに関連の強い宣伝文句をまとめて、少数の「訴求の軸」を取り出しました。最後に、その軸の組み合わせが似た商品同士をグループに分け、売り方のパターンを探りました。

主な結果:画一的な品ぞろえと三つの売り方

品ぞろえには、国をまたいで共通する画一的な傾向が見られました。鶏肉、豚肉、牛肉をまねた商品が全体の8割を超え、魚の代替品は5.6%にとどまりました。形状はハンバーグ・ミートボール型が36.9%と最も多くなっています。牛肉風はハンバーグやミートボール、鶏肉風は切り身やフィレ、豚肉風はソーセージやスライスというように、まねる肉と形状が強く結びついていました。商品の72.3%はメーカーのブランド品で、小売業者独自のプライベートブランドは27.7%でした。プライベートブランドは価格が低めで、値引き販売の対象になることは少なく、宣伝文句も控えめでした。冷蔵販売が83.1%を占め、値引き中の商品は8.6%でした。サイト上の商品分類は小売業者ごとにまちまちで、多くの商品は専用の「ヴィーガン」売り場ではなく、肉や総菜と並べて掲載されていました。

価格は1kgあたり6.23ユーロから49.95ユーロまで幅があり、中央値は18.69ユーロでした。原材料では大豆を含む商品が56.2%、小麦グルテンを含む商品が47.0%でした。栄養成分の中央値は、100gあたりたんぱく質13.00g、食物繊維4.30g、エネルギー198kcalで、原材料数の中央値は16種類でした。宣伝文句では、パッケージ正面に「たんぱく質」に関する表示がある商品が69.4%と最も多く、小売サイト上ではヴィーガンや菜食向けといった食生活に関する表示が64.3%で最多でした。

宣伝文句の分析からは五つの訴求の軸が見つかりました。特定の食生活への適合、環境配慮や認証、健康、味や目新しさ、調理のしやすさです。これらの組み合わせによって、商品は三つの売り方に分かれました。環境面を強調する「持続可能性型」が213商品、ヴィーガン向けや特定の原材料不使用などを前面に出す「食生活型」が205商品、栄養面の利点と味や調理のしやすさを合わせて訴える「健康・味型」が137商品です。持続可能性型の商品は価格が高めでした。食生活型は主にスペインとドイツ、健康・味型は主にイタリアとオランダ・ベルギーの小売業者で見られました。

研究から見えること

著者らは、欧州のオンライン小売業者が国を越えてよく似た代替肉をそろえる一方で、環境、食生活、健康と味という異なる切り口で、それぞれ違う消費者層に向けて売り込んでいると報告しています。論文はこの結果から、扱うブランドの多様化、魚の代替品のように手薄な分野への取り組み、味や料理の伝統、植物たんぱく源の幅を広げることに余地があると指摘しています。あわせて、価格設定と商品分類をより一貫させることも挙げています。代替肉が人々の食卓に届くかどうかを左右する「門番」として、小売業者の選択に目を向けた研究といえます。

原著論文の著者・所属:Antonella Samoggia(University of Bologna Department of Agricultural and Food Sciences, , ,)、Chiara Benussi(University of Bologna Department of Agricultural and Food Sciences, , ,)、Giulia Rossi(University of Bologna Department of Agricultural and Food Sciences, , ,)、Andrea Fantini(University of Bologna Department of Agricultural and Food Sciences, , ,)、Erica Conversano(University of Bologna Department of Agricultural and Food Sciences, , ,)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Antonella Samoggia, Chiara Benussi, Giulia Rossi, et al. Retailers as gatekeepers of the protein transition: commercialization patterns for plant-based meat alternatives in Europe. British Food Journal 2026-10-03. DOI: 10.1108/bfj-01-2026-0135. 原著ライセンス:CC BY.