著者の所属・活動拠点の国は、メキシコです。
掲載誌:Molecules
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
栄養価が高く気候の変化にも強い一方で、あまり利用されていない在来植物を食生活に取り入れる方法が模索されています。この研究で著者らが取り上げたのは、メキシコ在来の三つの植物です。一つ目は青トウモロコシ、二つ目はアヨコテと呼ばれるベニバナインゲンの仲間の豆、三つ目はキントニルと呼ばれるヒユ属の伝統的な食用野草です。論文によると、これまでに次のような成分が報告されてきました。青トウモロコシにはアントシアニンなどの色素成分、アヨコテには豊富なたんぱく質と多様なポリフェノール類、キントニルには微量栄養素などが含まれます。しかし、いずれも現代の食事では十分に活用されていません。
研究チームの目的は二つありました。一つは、青トウモロコシのトルティーヤとトルティーヤチップスにアヨコテ粉とキントニル粉を加えて、栄養面を高められるかを確かめることです。もう一つは、調理の方法によって成分の残り方が変わるかを調べることです。事前の仮説の一つは、焼く(ベーキング)方が、トルティーヤとして加熱する場合や油で揚げる場合よりも成分を保ちやすいというものでした。
どのように調べたか
材料には、市販の青トウモロコシ粉を使いました。この粉は、ニシュタマリゼーションと呼ばれるアルカリ処理をすでに施したものです。そこへアヨコテとキントニルの混合粉を加え、無添加の対照のほかに2種類の配合を用意しました。F1はアヨコテとキントニルを1対1で混ぜた粉を約6%加えたものです。F2は2対1で混ぜた粉を約9%加えたものです。
それぞれの生地から、トルティーヤ、焼いたチップス、揚げたチップスの3種類の製品を作りました。そして、水分やたんぱく質などの成分、ミネラル、色、生地と製品の食感を測りました。さらに、ポリフェノールやフラボノイドの量を調べました。抗酸化能も、DPPHとABTSという2種類の試験で測りました。抗酸化能とは、不安定な分子を打ち消す働きを試験管内で測る指標です。加えて、口、胃、小腸での消化を試験管内で再現する方法も使いました。この方法で、消化の過程でポリフェノールがどれだけ溶け出すかを評価しました。
主な結果
粉を加えることで、すべての製品でたんぱく質が有意に増えました。トルティーヤでは、対照の7.98%からF2では10.43%へと約31%増加しました。揚げたチップスでも増えましたが、焼いたチップスより値は低くなりました。著者らは、揚げる際に吸収される油による希釈の影響が考えられるとしています。ミネラルについては、対照と比べてカルシウム、カリウム、マグネシウム、マンガンが増えました。一方で、鉄、ナトリウム、亜鉛は減ったと報告されています。100グラム当たりのエネルギーは、トルティーヤが約200キロカロリー、焼いたチップスが約376キロカロリー、揚げたチップスが約421キロカロリーでした。この違いは水分の減少や油の吸収によるもので、同じ製品の中では配合による有意な差は見られませんでした。
食感では、粉を加えた生地は対照よりやわらかく、やや粘着性が増しました。それでも、手で押し広げる作業には支障がありませんでした。トルティーヤはよく伸びるようになり、巻いても割れませんでした。F2では、引っ張りへの強さも最も高くなりました。一方、チップスでは粉を加えると硬さが増し、特に焼いたチップスでその傾向が目立ったとされています。色は、加熱が強いほど暗い赤褐色寄りになり、粉を加えると黄緑寄りに変化しました。
抗酸化能は、粉を加えた生地と焼いたチップスで高い値を示しました。焼いたF2のチップスでは、ABTSの値が最も高い水準に達しました。トルティーヤでは、調理後に抗酸化能が大きく下がり、特にDPPHの値で低下が目立ちました。揚げたチップスは、ABTSの値が最も低い結果でした。ポリフェノール全体の量は、焼いたチップスと揚げたチップスで同程度でした。ただし、フラボノイド量と抗酸化能は焼いたチップスの方が高くなりました。
試験管内の消化試験では、粉を加えた製品は対照よりも多くのポリフェノールを放出しました。差は特に胃の段階で目立ちました。消化の全過程を通じてポリフェノール量が最も多かったのは、F2の焼いたチップスでした。一方、消化前の量に対して小腸の段階まで溶け出した状態で残った割合も調べられています。この割合はバイオアクセシビリティと呼ばれ、トルティーヤで高く、F1のトルティーヤでは約94%でした。著者らは、この割合が相対的な値であることに注意を促しています。もともとの含有量が多い製品では、割合が低くても、溶け出す絶対量は多くなりうるということです。
研究が示すこと
著者らは、アヨコテとキントニルの粉を加えることで、トルティーヤやチップスとして扱いやすい品質を保てたと結論づけています。そのうえで、たんぱく質やミネラル、ポリフェノール、抗酸化能を高められたとしています。全体としては、約9%を加えたF2が最も良好な結果を示しました。また、焼く調理はフラボノイドと抗酸化能を保ちやすいことが分かりました。一方、ポリフェノール全体の量や消化時の溶け出しやすさは、調理法と配合の組み合わせによって異なりました。
なお、消化の評価は試験管内で再現した条件での結果です。成分が実際に人の体内に吸収されて利用されるか(生体利用性)は、確かめられていません。それでも本研究は、あまり使われていない在来植物を身近な主食に組み合わせることで、トウモロコシ製品の栄養面を高めうることを示した報告といえます。
原著論文の著者・所属:Edwin Rojo-Gutiérrez(Laboratorio de Biotecnología y Bioingeniería, Centro de Investigación en Alimentación y Desarrollo (CIAD), A.C., Av. Cuarta Sur 3820, Fracc. Vencedores del Desierto, Delicias CP. 33089, Chihuahua, Mexico)、Leticia Xochitl López-Martínez(Laboratorio de Antioxidantes y Alimentos Funcionales, SECIHTI, Centro de Investigación en Alimentación y Desarrollo (CIAD), A.C., Carretera Gustavo Enrique Astiazarán Rosas No. 46, Col. La Victoria, Hermosillo CP. 83304, Sonora, Mexico)、Mónica Alejandra Villegas-Ochoa(Coordinación de Tecnología de Alimentos de Origen Vegetal, Centro de Investigación en Alimentación y Desarrollo (CIAD), A.C., Carretera Gustavo Enrique Astiazarán Rosas No. 46, Col. La Victoria, Hermosillo CP. 83304, Sonora, Mexico)、Ezequiel Muñoz-Márquez(Laboratorio de Fisiología y Nutrición Vegetal, Centro de Investigación en Alimentación y Desarrollo (CIAD), A.C., Av. Cuarta Sur 3820, Fracc. Vencedores del Desierto, Delicias CP. 33089, Chihuahua, Mexico)、Ramiro Baeza-Jiménez(Laboratorio de Biotecnología y Bioingeniería, Centro de Investigación en Alimentación y Desarrollo (CIAD), A.C., Av. Cuarta Sur 3820, Fracc. Vencedores del Desierto, Delicias CP. 33089, Chihuahua, Mexico)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Edwin Rojo-Gutiérrez, Leticia Xochitl López-Martínez, Mónica Alejandra Villegas-Ochoa, et al. Thermal Processing and Fortification with Ayocote and Quintonil Flours Affect Blue Maize Tortilla and Tortilla Chip Properties. Molecules 2026-08-10. DOI: 10.3390/molecules31162774. 原著ライセンス:CC BY.