著者の所属・活動拠点の国は、ポーランドです。

掲載誌:Agriculture

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

ポテトチップスの原料になるジャガイモには、収量の多さに加えて、加工に適した品質、長期貯蔵に耐える性質、食品としての安全性が求められます。チップス工場は一年の大半にわたって原料を必要とするため、収穫したいもを数か月単位で貯蔵することが欠かせません。また、安全性の面では、いもに含まれる硝酸塩や亜硝酸塩といった望ましくない窒素化合物を低く抑えることも重要とされています。

研究チームは、植え付け前の種いもに施す二つの処理に注目しました。一つは土壌由来の病原菌(リゾクトニア菌)から種いもを守る殺菌剤「Moncut 460 SC」です。もう一つはアミノ酸を主成分とするバイオスティミュラント(生育促進資材)「Supporter」で、植物の生理的なはたらきや生育を支えるとされています。著者らによれば、これまでの研究は主に個々の処理の効果に向けられており、両者を組み合わせて使った場合にチップス用ジャガイモの収量や品質、貯蔵後の状態がどう変わるかは十分に分かっていませんでした。そこで研究チームは、両資材の単独・併用処理が総収量、可販収量、でんぷん収量、硝酸塩・亜硝酸塩の含有量、貯蔵中の目減りに与える影響を総合的に調べました。

どのように調べたか

圃場試験は2021年から2023年までの3シーズン、大学付属の試験場で行われました。用いたのはチップス加工向けの3品種で、早生の「Beo」、中早生の「Pirol」、生育期間が最も長い中晩生の「Picus」です。それぞれについて、無処理、バイオスティミュラントのみ、殺菌剤のみ、両者の併用という4通りの処理を比べ、各組み合わせを3反復で栽培しました。灌水は行わず、作物は自然の降雨だけで育てられました。

収穫後には、いもの総収量に加え、直径40mmを超える健全ないもの量である「可販収量」を調べました。さらに、各区画から集めたいもの半分はすぐに分析し、残りは8℃、相対湿度95%というチップス用ジャガイモに推奨される条件で、10月から3月までの6か月間貯蔵しました。貯蔵前後で重さを量って自然に失われた重量の割合を求めたほか、硝酸塩と亜硝酸塩の含有量を収穫直後と貯蔵後の両方で測定しました。

主な結果

収量に大きく影響したのは品種でした。3年間の平均では、生育期間が最も長いPicusが総収量(約38.8トン/ヘクタール)、可販収量(約24.7トン/ヘクタール)ともに最も多くなりました。総収量が最も少なかったのはBeo(約32.5トン/ヘクタール)、可販収量が最も少なかったのはPirol(約20.1トン/ヘクタール)でした。総収量に占める可販収量の割合は、Pirolの59.0%からBeoの75.3%まで品種によって差がありました。また、年ごとの気象条件の違いを反映して、収量は年によっても変動しました。

一方、種いもへの処理は総収量に統計的に意味のある差をもたらしませんでした。数値の上では、殺菌剤とバイオスティミュラントの併用で総収量が最も高く(35.81トン/ヘクタール)、可販収量は殺菌剤のみの処理で最も高くなりました(23.40トン/ヘクタール)。ただし、論文はいずれの差も統計的に有意ではなかったと報告しています。

安全性に関わる窒素化合物は、全体として低い水準でした。論文は、調べたチップス用品種の含有量を新鮮重1kgあたり硝酸塩49.56mg、亜硝酸塩0.49mgと報告し、子ども向け食品の基準値である200mg/kgを下回っていたとしています。6か月の貯蔵後には、これらの含有量が平均で約8%減少しました。貯蔵中の自然な目減りも平均約3%にとどまりました。栽培中の処理による含有量の傾向は、収穫直後と貯蔵後とで一致していました。

研究が示すこと

この研究からは、チップス用ジャガイモの収量を左右する要因として、種いもへの処理よりも品種の特性や年ごとの気象条件の影響が大きかったことがうかがえます。同時に、調べた品種は硝酸塩・亜硝酸塩が少なく、推奨条件で6か月貯蔵しても目減りは小さく、これらの含有量はむしろ減っていました。

著者らは、今回評価した栽培方法はチップス用ジャガイモの生産に推奨できると結論づけています。一方で、より多くの品種や、フライドポテト用・生食用の品種でも同じ結果が得られるかは、さらに確かめる必要があるとしています。

原著論文の著者・所属:Katarzyna Brążkiewicz(Department of Agronomy and Food Processing, Faculty of Agriculture and Biotechnology, Bydgoszcz University of Science and Technology, 7 Prof. S. Kaliskiego, 85-796 Bydgoszcz, Poland)、Jarosław Pobereżny(Department of Agronomy and Food Processing, Faculty of Agriculture and Biotechnology, Bydgoszcz University of Science and Technology, 7 Prof. S. Kaliskiego, 85-796 Bydgoszcz, Poland)、Elżbieta Wszelaczyńska(Department of Agronomy and Food Processing, Faculty of Agriculture and Biotechnology, Bydgoszcz University of Science and Technology, 7 Prof. S. Kaliskiego, 85-796 Bydgoszcz, Poland)、Bożena Bogucka(Department of Agrotechnology and Agribusiness, University of Warmia and Mazury in Olsztyn, 8 Oczapowskiego, 10-719 Olsztyn, Poland)、Agnieszka Pszczółkowska(Department of Genetics and Plant Pathophysiology, University of Warmia and Mazury in Olsztyn, 21 Prawocheńskiego, 10-720 Olsztyn, Poland)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Katarzyna Brążkiewicz, Jarosław Pobereżny, Elżbieta Wszelaczyńska, et al. Effects of Different Cultivation Treatments on Tuber Yield, Nitrogen Compound Accumulation, and Natural Storage Losses in Chip Potatoes. Agriculture 2026-08-29. DOI: 10.3390/agriculture16171871. 原著ライセンス:CC BY.