掲載誌:TOBA Journal of Tourism Hospitality and Destination

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

捨てられがちな果皮を生かす郷土の味

インドネシアのスマトラ島やカリマンタン島では、ジャックフルーツの仲間であるチェンペダックという果物が多く採れます。ただし、食べられるのは果肉など一部で、論文が紹介する先行研究によれば、果実全体の65〜75%は皮や芯などの廃棄物になるといいます。

カリマンタンには、このチェンペダックの皮を塩で発酵させ、揚げたり煮たりしておかずにする「マンダイ」という伝統料理があります。独特の味わいで地元では親しまれていますが、調理法は素朴なままで、付加価値の高い商品として開発された例は多くありません。

研究チームは、マンダイを使った加工品の開発を、地域の知恵や伝統を土台にした料理の革新として検討し、消費者がその商品をどの程度受け入れるかを調べることを目的としました。著者らは、これまでのマンダイ研究が製品の特性や加工工程、保存性に偏り、新しい加工品への消費者の評価を直接調べたものは少なかったと指摘しています。

ピリ辛味のチップスを試食で評価

研究チームが開発したのは、マンダイをインドネシアの唐辛子調味料「バラド」で味付けしたチップスです。配合の異なる3種類の試作品を用意し、試食による評価を行いました。

評価には、料理分野の知識や経験を持つ審査員9人と、マンダイを食べたことがある17歳以上の一般の試食者27人が参加しました。色、香り、味、食感について、見た目や匂い、味わいなど五感による品質評価と、1〜9の段階でどれだけ好きかを答えてもらう「嗜好評価」を行い、平均点などを集計しました。さらに、配合の違いによって評価に統計的な差があるかを調べています。

あわせて、商品の強み・弱み・機会・脅威を整理するSWOT分析を行い、今後の開発の方向性を検討しました。

3種類とも受け入れられ、第1配合が最も高評価

論文によると、色、香り、味、食感のすべての項目で、第1配合の平均点が最も高くなりました。一般の試食者による評価では、第1配合の平均点は1〜9の尺度でおおむね5点台でした。

一方で、3種類の配合の間に統計的に意味のある差は、専門の審査員・一般の試食者のどちらの評価でも、どの項目でも認められませんでした。著者らはこの結果から、3種類のチップスはいずれも良好な感覚的品質を持ち、マンダイをバラド味のチップスに加工しても食感などが大きく損なわれず受け入れられたと述べています。色は金褐色に赤いバラドがからんだ見た目が好まれ、発酵による独特の香りもバラドの風味と調和していると評価されたと報告しています。

SWOT分析では、独特の味わい、利用されにくい果皮の活用、地域の文化的な独自性が強みとして挙げられました。弱みとしては、カリマンタン以外での知名度の低さ、発酵臭が初めて食べる人には抵抗になりうること、商品の種類や宣伝の少なさが指摘されています。機会としては、伝統食を現代風に仕立てた商品への関心の高まり、地元の中小事業者への支援、食をめぐる観光、デジタルマーケティングが、脅威としては広く知られた市販のお菓子との競合や流行の移り変わりが挙げられました。

伝統食に新しい販路をひらく手がかり

研究チームは、強みと機会が弱みと脅威を上回ると判断し、マンダイの独自性と文化的価値を生かして市場の機会をつかむ戦略を提案しています。具体的には、味のバリエーションを増やすこと、包装やブランドづくりの強化、デジタルを活用した宣伝が挙げられています。

この研究は、捨てられがちな果皮から生まれた郷土料理を身近なスナックの形に変えても、試食した人たちに受け入れられたことを示しました。地域の伝統の味を保ちながら新しい商品として届ける道筋を考えるうえで、一つの手がかりを与える報告といえます。

原著論文の著者・所属:Cantika Azzahra(Sekolah tinggi pariwisata bogor)、Dina Mayasari Soeswoyo(Sekolah Tinggi Pariwisata Bogor)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Cantika Azzahra, Dina Mayasari Soeswoyo. Analisis Pengembangan Produk Olahan Mandai sebagai Inovasi Kuliner Berbasis Kearifan Lokal. TOBA Journal of Tourism Hospitality and Destination 2026-08-07. DOI: 10.55123/toba.v5i3.9223. 原著ライセンス:CC BY.