著者の所属・活動拠点の国は、アメリカです。

掲載誌:Nutrients

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

セリアック病は、小麦・大麦・ライ麦に含まれるたんぱく質「グルテン」を食べることで免疫反応が起こり、小腸が傷つく慢性の病気です。現在の治療法は、生涯にわたってグルテンを含まない食事(グルテンフリー食)を続けることだけです。少量でもグルテンを日常的に摂り続けると、腸の損傷が続くことが知られています。

外食では、グルテンを含む食品と同じ調理器具を使うことで、本来グルテンを含まない食品にグルテンが混入する「交差接触」が心配されます。特に、衣やパン粉をつけた食品と同じ油で揚げる共用フライヤーは危険性が高いと考えられ、フライドポテトやトルティーヤチップスを避けるよう勧められることが多くあります。しかし著者らによると、通常営業の飲食店で実際にどの程度のグルテンが含まれるのかを測ったデータは限られていました。

そこで研究チームは、米国の飲食店で共用フライヤーを使って揚げられた、もともとグルテンを含まない食品のグルテン濃度を測定し、店の種類や揚げ油の交換頻度によって違いがあるかを調べました。

何を調べたか

2025年9月から2026年1月にかけて、米国14州の飲食店から、フライドポテト55件とトルティーヤチップス43件、計98件の試料が集められました。いずれも揚げる前はグルテンを含まない食品で、グルテンを含む食品と共用し、グルテンフリー専用ではないフライヤーで調理されたものです。各試料は別々の店から1回ずつ採取されました。

グルテン濃度は、抗体を使って特定のたんぱく質を検出する「ELISA法」という標準的な検査で測定されました。この検査で数値として測れる下限は5 ppm(100万分の5)です。著者らは、試料を丸ごと均一に混ぜたうえで、一般的な検査より多い1 gを分析に使い、混入が一部に偏っている場合の見逃しを減らしたと述べています。

採取時には店のスタッフに揚げ油の交換頻度(毎日、毎週、不明)を尋ね、店の種類や所在州とあわせて記録しました。結果は、米国食品医薬品局(FDA)がグルテンフリー表示の基準としている20 ppm未満かどうかを目安に整理されました。

主な結果

98件のうち84件(85.7%)は測定下限の5 ppm未満で、5 ppm以上20 ppm未満が8件、20 ppm以上は6件(6.1%)でした。20 ppmを超えた6件はすべてフライドポテトで、フライドポテトに限ると約11%にあたります。一方、トルティーヤチップス43件はすべて5 ppm未満でした。

揚げ油の交換頻度が分かっている店で比べると、毎日交換していると答えた店の試料(39件)には20 ppm以上のものがありませんでした。これに対し、毎週交換と答えた店の試料(35件)では4件(11.4%)が20 ppmを超え、この差は統計的に意味のあるものと報告されています。店の種類や地域については、20 ppm超の試料が特定の種類や州に偏る明確な傾向は見られませんでした。

ただし、20 ppmを超えた試料の濃度は29.6 ppmから80 ppm超まで幅があり、3件は検査で数値を出せる上限の80 ppmを超えていました。著者らは、混入はまれだったものの、起きた場合にはその程度に大きなばらつきがあったと指摘しています。

この研究が示すこと

研究チームは、共用フライヤーが一律に高リスクというわけではなく、混入の程度は店の運営方法、特に揚げ油の交換頻度によって異なると結論づけています。なお、この研究は観察研究のため、油の交換頻度とグルテン量の関係は因果関係を示すものではないと著者ら自身が述べています。

著者らはまた、20 ppmという値は表示のための規制基準であり、個々の患者にとっての安全ラインではないと強調しています。実際に体に入るグルテンの量は、濃度だけでなく食べる量や頻度によって決まります。例として、20 ppmの食品を約500 g食べるとグルテン約10 mgに相当し、1日約10 mgの継続的な摂取は一部の人で腸の変化と関連するとされる量だと説明しています。

一方で、調査対象の店は無作為に選ばれておらず、油の交換頻度は店側の申告で確認されていません。また、症状や腸の状態などの健康への影響は調べていないため、個人にとっての安全性を示すものではないとされています。それでも、この研究は、共用フライヤーを「安全か危険か」の二択で捉えるのではなく、実際に測ったデータに基づいて、日常的に繰り返される摂取源と、たまにしか出会わない状況とを区別して考える材料を提供しています。

原著論文の著者・所属:Vanessa Maltin Weisbrod(Celiac Disease Foundation, Woodland Hills, CA 91367, USA)、Meghan Donnelly McKeon(Celiac Disease Foundation, Woodland Hills, CA 91367, USA)、Marisa Gallant Stahl(Children’s Hospital Colorado, University of Colorado, Aurora, CO 80045, USA)、Monique Germone(Children’s Hospital Colorado, University of Colorado, Aurora, CO 80045, USA)、Sadie Nagle(Children’s Hospital Colorado, University of Colorado, Aurora, CO 80045, USA)、Jackie Jossen(Celiac Disease Center, Columbia University Medical Center, New York, NY 10032, USA)、Jessica Lebovits(Celiac Disease Center, Columbia University Medical Center, New York, NY 10032, USA)、Maureen M. Leonard(Mass General Brigham for Children, Boston, MA 02114, USA)、Joanna Perl(Celiac Disease Center, Columbia University Medical Center, New York, NY 10032, USA; Vanderbilt Health, Nashville, TN 37232, USA)、Marilyn Grunzweig Geller(Celiac Disease Foundation, Woodland Hills, CA 91367, USA)、Aaron Geller(Celiac Disease Foundation, Woodland Hills, CA 91367, USA)、Luke Emerson-Mason(Bia Diagnostics, Colchester, VT 05446, USA)、Zhaoxing Pan(Children’s Hospital Colorado, University of Colorado, Aurora, CO 80045, USA)、Ritu Verma(Celiac Disease Center, University of Chicago, Chicago, IL 60637, USA)、Edwin Liu(Children’s Hospital Colorado, University of Colorado, Aurora, CO 80045, USA)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Vanessa Maltin Weisbrod, Meghan Donnelly McKeon, Marisa Gallant Stahl, et al. Shared Fryers May Not Always Be as Risky for Gluten Cross-Contact in Celiac Disease as Dietary Guidance Suggests. Nutrients 2026-10-20. DOI: 10.3390/nu18203433. 原著ライセンス:CC BY.