著者の所属・活動拠点の国は、インドネシアです。

掲載誌:Journal of the Saudi Society of Agricultural Sciences

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

キャッサバをもっとサクサクのチップスに

キャッサバは熱帯地域で重要な炭水化物源となっているイモ類です。インドネシアのように栽培が盛んな国では、チップスなどの加工食品の原料として活用すれば、農産物の付加価値を高め、ジャガイモの輸入への依存を減らせると期待されています。しかし、キャッサバのチップスはジャガイモに比べて硬く、サクサク感に欠けるという課題があります。

これまでにも、下ゆでやカルシウム塩の添加、超音波や減圧揚げといった方法が試されてきました。ただ、著者らによると、色や栄養の保持に影響が出る、割れやすくなりすぎる、高価な設備が必要になるなどの難点があります。また、植物の細胞同士をつなぎとめる成分「ペクチン」を分解する酵素ペクチナーゼを、キャッサバチップスの食感改善に使った研究は限られていました。

そこで研究チームは、酵素で多糖類(でんぷんやペクチンなど)を部分的に分解する処理が、キャッサバチップスのサクサク感、色、微細構造、成分にどう影響するかを調べました。最も効果的な酵素を選び、処理温度とpHの適した条件を探ることも目的としました。

3種類の酵素を比べ、条件を絞り込む

研究チームは、インドネシア東ジャワ州マドゥラ産のキャッサバを厚さ約1ミリに薄切りし、ペクチナーゼ、でんぷんを分解するアミラーゼ、糖の末端からブドウ糖を切り離すグルコシダーゼの3種類の酵素液にそれぞれ120分間浸しました。その後、パーム油を使って150℃で10分間揚げました。比較対象として、酵素を加えない水に同じ時間浸したチップスも作りました。

食感の評価には、チップスを押しつぶす機器を使いました。主な指標は、チップスが割れ始めるときに必要な力を示す「破砕性」です。著者らはこの値を、チップスのもろさやサクサク感を示す指標として扱っています。あわせて、押された後に元へ戻ろうとする性質(復元性)、明るさなどの色、電子顕微鏡で見た内部構造、水分・脂質などの成分も調べました。さらに、キャッサバチップスに慣れた15人の評価者が、サクサク感と色の好ましさを5段階で採点しました。

最初に最も効果の高い酵素を選び、続いてその酵素について、処理温度とpHを一つずつ順番に変えて適した条件を探しました。

ペクチナーゼがサクサク感と色を両立

酵素を比べた段階では、ペクチナーゼで処理したチップスの破砕性が1807.15グラム重と最も高くなりました。アミラーゼは1684.83、グルコシダーゼは1484.61で、いずれも酵素なしのチップス(577.24)を大きく上回りました。ペクチナーゼ処理では復元性が0.25と、酵素なし(0.49)より低くなりました。著者らは、これをよりもろく好ましい食感を示す結果と位置づけています。評価者によるサクサク感の得点は、ペクチナーゼ処理が4.1、アミラーゼ処理が4.2で、酵素なしの3.0を上回りました。

色には違いが出ました。グルコシダーゼ処理のチップスは暗い色になり、色の好ましさの得点は2.8と最低でした。一方、ペクチナーゼ処理は明るい色を保ち、得点も4.2と酵素なし(4.3)に近い値でした。著者らは、グルコシダーゼが生むブドウ糖が揚げる際の褐色化反応を促した可能性を挙げています。ただし、糖の量は直接測っておらず、この説明は既存の知見に基づく推測だとしています。サクサク感と色の両方を踏まえ、研究チームはペクチナーゼを最も有望な酵素と判断しました。

ペクチナーゼの処理条件を調べた段階では、処理温度35℃で、評価者のサクサク感と色のバランスが最も好ましい結果になりました。40℃でも機器で測った破砕性は高かったものの、評価者のサクサク感の得点は35℃の方が有意に高くなりました。pHについては、やや酸性のpH6で破砕性とサクサク感の得点が最も高くなりました。

電子顕微鏡で観察すると、酵素なしのチップスは比較的詰まった層状の構造だったのに対し、ペクチナーゼ処理したチップスでは細かく砕けた構造や孔(すきま)が多く見られました。著者らは、ペクチナーゼが細胞同士の結びつきを弱め、揚げる際に孔ができやすくなったことが食感の改善につながったと解釈しています。

成分分析では、ペクチナーゼ処理したチップスは酵素なしより水分が少なく、脂質が多くなりました。たんぱく質と灰分には有意な差がありませんでした。著者らは、水分の減少がサクサク感に寄与した一方、油の吸収が増えた可能性があり、食感の向上と吸油量の増加はトレードオフの関係にあると指摘しています。成分値は、インドネシアの国家規格が定めるキャッサバチップスの基準の範囲内でした。

研究が示すこと

この研究では、揚げる前のキャッサバの薄切りをペクチナーゼで処理すると、色の好ましさを保ちながら破砕性とサクサク感の得点が高まることが報告されました。著者らは、ペクチナーゼの効果について、でんぷんの分解だけによるものではなく、細胞同士をつなぐペクチンなど細胞壁を狙って変化させたことによるものと解釈しています。なお、アミラーゼ処理でもサクサク感は改善しており、この仕組みの説明はあくまで著者らの解釈です。

一方で著者らは、酵素の濃度が1種類だけであること、温度とpHを一つずつ調べたため条件同士の組み合わせの影響は十分に評価していないことを限界として挙げています。また、試験の繰り返しが3回でサンプル数が比較的限られているため、統計的な検出力や結果の一般化に制約がありうること、半訓練の評価者を用いたため感じ方の個人差が結果に影響した可能性があることも挙げています。揚げ条件も一定のままでした。今回の結果は、こうした条件のもとで得られたものとして受け止める必要があります。

原著論文の著者・所属:Cahyo Indarto(Department of Agroindustrial Technology, Trunojoyo University, Bangkalan, Indonesia)、Supriyanto Supriyanto(Department of Agroindustrial Technology, Trunojoyo University, Bangkalan, Indonesia)、Wahyu Prihanta(Department of Biology Education, Universitas Muhammadiyah Malang, Malang, Indonesia)、Nurul Mahmudati(Department of Biology Education, Universitas Muhammadiyah Malang, Malang, Indonesia)、Iswahyudi Iswahyudi(Department of Agriculture, Universitas Islam Madura, Pamekasan, Indonesia)、Siti Alfiatul Amani(Department of Agriculture, Universitas Islam Madura, Pamekasan, Indonesia)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Cahyo Indarto, Supriyanto Supriyanto, Wahyu Prihanta, et al. Enzymatic modification of cassava polysaccharides for improved crispness and quality of cassava chips. Journal of the Saudi Society of Agricultural Sciences 2026-07-28. DOI: 10.1007/s44447-026-00185-1. 原著ライセンス:CC BY.