著者の所属・活動拠点の国は、イランです。

掲載誌:International Journal of Food Properties

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

揚げ物では、食材の水分が抜けて代わりに油がしみ込みます。そのため、使う油の種類によって、できあがった料理の栄養成分も変わると考えられます。この研究チームは、ハタの仲間であるオレンジスポットグルーパー(チャイロマルハタ)の切り身を植物油で揚げたとき、脂質の栄養的な質、脂質の酸化、ミネラル、ビタミンがどのように変化するかを調べました。

なお、ここで紹介する内容は、論文の抄録に記載された研究目的・方法・結果に基づいています。

何を比べたのか

研究チームは、オリーブ油、グレープシード油、コーン油の3種類の植物油を使って切り身を揚げ、生の切り身と比べました。

脂質の質は、含まれる脂肪酸の構成から計算する「栄養指標」で評価しました。たとえば、多価不飽和脂肪酸と飽和脂肪酸の比(PUFA/SFA比)、コレステロールを下げる方向に働くとされる脂肪酸と上げる方向に働くとされる脂肪酸の比(HH比)、動脈硬化指数(AI)や血栓形成指数(TI)などです。あわせて、魚に多い長鎖オメガ3脂肪酸であるEPAとDHAの割合、脂質の酸化の目安となるTBA値、脂質が分解してできる遊離脂肪酸(FFA)の量、ビタミン類とミネラル類も測定しました。

主な結果

揚げることで、切り身の脂肪分は大きく増え、水分は減りました。切り身の脂肪酸の構成は、吸収された油の影響を強く受けていました。

コーン油で揚げた切り身は、脂質の栄養指標が最も良好でした。PUFA/SFA比は最も高い2.03で、HH比も最も高く、AIとTIは最も低い値でした。一方で、EPAとDHAの合計の割合は、生の切り身の6.06%から1.98%へと大きく下がっていました。揚げたサンプルの中でEPAとDHAを最もよく保っていたのはグレープシード油でした。オリーブ油で揚げた場合は、アラキドン酸とEPAの比(ARA/EPA比)が大きく上昇し、著者らはこの指標に好ましくない影響が出る可能性を指摘しています。

脂質の酸化については、揚げた後もTBA値に有意な変化は見られませんでした。著者らは、その理由として、酸化で生じるマロンジアルデヒドが揮発しやすいことや、油に含まれる抗酸化成分の働きが考えられるとしています。遊離脂肪酸は揚げた後に大きく減り、オリーブ油で揚げた切り身が最も低い値(オレイン酸換算で1.42%)でした。

ビタミンでは、熱に弱いビタミンB1とB3が揚げることで大きく減少しました。一方、ビタミンAは増加し、コーン油で揚げたものが最も多く、100グラムあたり8.36ミリグラムでした。ビタミンDの量は油によって異なり、オリーブ油で揚げた切り身が最も多く保っていました。ミネラルはほとんどが揚げても安定していましたが、銅(Cu)だけは有意に減少しました。

研究から見えてくること

論文は、揚げ油の選択にはそれぞれ長所と短所があり、両者のバランスを考える必要があるとまとめています。コーン油は脂肪酸の比率に関する指標を改善する一方でオメガ3脂肪酸を大きく減らし、オリーブ油は脂質の分解を抑えビタミンDを多く保つ一方でARA/EPA比を悪化させ、グレープシード油はオメガ3脂肪酸の保持に優れていました。

著者らは、どの油が最適かは一つに決まるものではなく、最終的な料理や製品でどの栄養面を重視するかによって選ぶべきだと結論づけています。

原著論文の著者・所属:Zahra Momenzadeh(Khorramshahr University of Marine Science and Technology)、Ainaz Khodanazary(Gonbad Kavous University; Khorramshahr University of Marine Science and Technology)、Kamal Ghanemi(Khorramshahr University of Marine Science and Technology)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Zahra Momenzadeh, Ainaz Khodanazary, Kamal Ghanemi. Effect of different vegetable oils on the nutritional properties of deep-fried orange-spotted grouper fillets. International Journal of Food Properties 2026-10-29. DOI: 10.1080/10942912.2026.2755171. 原著ライセンス:CC BY.