著者の所属・活動拠点の国は、中国、チェコです。

掲載誌:Foods

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

捨てられがちな杏仁の栄養を品種ごとに調べる

アンズは果肉の風味だけでなく、種(核)の中にある「杏仁(アンズの仁)」でも知られる果樹です。しかし著者らによると、これまでのアンズの研究や品種開発は、生食用や加工用の果実の味、色、硬さ、保存性などが中心でした。果実加工の副産物である杏仁は見過ごされたり捨てられたりすることが多く、資源の無駄になっていると指摘しています。

品種による違いを調べた先行研究もありますが、著者らは、その多くが一部地域の品種、とりわけ野生のアンズを対象としており、栽培品種を中心にした研究は少ないと述べています。杏仁の栄養品質についてのデータはさらに限られていました。そこで研究チームは、国内外の栽培品種を幅広く集め、杏仁の栄養的な特徴を比べることを目的にしました。

141品種の15成分を同じ条件で測定

研究には、北京市の林業・果樹研究機関が保存しているアンズの遺伝資源の中から141品種を使いました。どの品種も同じ果樹園で、土壌、水、肥料、日当たりをそろえて栽培されています。各品種について3本の木から果実を採り、木ごとに杏仁を取り出して乾燥・粉砕し、別々に分析しました。採取時期は2025年6月上旬から7月中旬です。

測定したのは、たんぱく質、脂肪、全脂肪酸、主な脂肪酸(オレイン酸、リノール酸、パルミチン酸)、アミノ酸の合計、ビタミンB1、ビタミンEとその構成成分であるトコフェロール類、亜鉛・カリウム・カルシウムといったミネラルを含む15項目です。

研究チームは、品種間のばらつきの大きさを「変動係数」で、成分量の分布の多様さを「多様性指数」で表しました。さらに、成分同士の関係を調べる相関分析、多数の項目を少数の総合的な指標にまとめる主成分分析、栄養組成の似た品種をグループに分けるクラスター分析を組み合わせ、品種ごとの総合評価点も算出しました。

品種による差は大きく、成分同士にもつながりがあった

杏仁からは12種類の脂肪酸が検出され、合計量は100グラムあたり19.0〜49.7グラムでした。中でもオレイン酸は7.91〜35.2グラム、リノール酸は8.4〜17.1グラムでした。アミノ酸は18種類が検出され、このうち人の体に必要な8種類の必須アミノ酸の合計は、100グラムあたり5.37〜9.67グラムでした。論文の考察によると、たんぱく質は100グラムあたり17.50〜25.97グラム、脂肪は16.64〜51.85グラムの範囲にありました。

15項目の多様性指数はいずれも1.0を上回り(1.52〜2.09)、著者らは品種による栄養の違いが大きいと判断しています。品種間の変動係数は8.49〜35.43%でした。たんぱく質はばらつきが最も小さく、オレイン酸、カリウム、ビタミンB1、トコフェロール類は品種による差が比較的大きく出ました。

相関分析では、全脂肪酸と脂肪の量が強く連動していました(相関係数0.981)。一方、オレイン酸が多い品種ほどビタミンEやγ-トコフェロールが少ない傾向(負の相関)も見られました。ただし、これらは成分同士の量の連動を示したもので、一方がもう一方を変える因果関係を示したものではありません。

主成分分析では、15項目の情報が五つの指標にまとめられ、全体のばらつきの約75.6%を説明しました。一つ目の指標は主に油分の多さを、二つ目は不飽和脂肪酸(リノール酸)の多さを表していました。研究チームはこの結果と相関分析をもとに、評価に使う中心的な項目を、全脂肪酸、オレイン酸、リノール酸、アミノ酸、亜鉛、α-トコフェロール、ビタミンB1の7項目に絞り込みました。

クラスター分析では141品種が五つのグループに分かれました。総合評価点では「Kuhehonglian」が1.68で最も高く、次いで「Machuanling」「Guajiayutianhexiangbai」「Guanlaoyelian」「GRAFLTHAN」が上位に入りました。たんぱく質・アミノ酸、亜鉛・カリウム、ビタミンBといった分野ごとに特徴の目立つ品種も示されています。最終的に、特徴的な栄養価をもつ11品種が選ばれました。

杏仁の多様さを示す基礎データとして

この研究は、多数の栽培品種について杏仁の多くの栄養成分を同時に測り、品種による違いが大きいことを示しました。著者らは、こうしたデータが、特定の栄養特性をもつ品種の選抜や、杏仁の加工利用、仁の利用を目的とした品種改良の土台になると位置づけています。

一方で、著者らは注意点もはっきり述べています。杏仁には、分解されるとシアン化物を生じうるアミグダリンなどの青酸配糖体が含まれる可能性があります。しかし本研究では、これらの量を測っておらず、食品としての安全性も評価していません。栄養の順位や総合評価点は、そのまま食べるのに適していることを意味しません。また、試料は1か所・1年分のみで、評価には脂質関連の項目が多く含まれています。そのため著者らは、選ばれた品種を「優れた親として実証されたもの」ではなく、今後さらに評価すべき候補として扱っています。

原著論文の著者・所属:Junhuan Zhang(Institute of Forestry and Pomology, Beijing Academy of Agriculture and Forestry Sciences, Beijing 100093, China; Key Laboratory of National Forestry and Grassland Administration on Apricot, Beijing 100093, China; Key Laboratory of Urban Agriculture (North China), Ministry of Agriculture and Rural Affairs, Beijing 100093, China)、Wenjian Yu(Institute of Forestry and Pomology, Beijing Academy of Agriculture and Forestry Sciences, Beijing 100093, China; Key Laboratory of National Forestry and Grassland Administration on Apricot, Beijing 100093, China; Key Laboratory of Urban Agriculture (North China), Ministry of Agriculture and Rural Affairs, Beijing 100093, China)、Meiling Zhang(Institute of Forestry and Pomology, Beijing Academy of Agriculture and Forestry Sciences, Beijing 100093, China; Key Laboratory of National Forestry and Grassland Administration on Apricot, Beijing 100093, China; Key Laboratory of Urban Agriculture (North China), Ministry of Agriculture and Rural Affairs, Beijing 100093, China)、Li Yang(Institute of Forestry and Pomology, Beijing Academy of Agriculture and Forestry Sciences, Beijing 100093, China)、Fengchao Jiang(Institute of Forestry and Pomology, Beijing Academy of Agriculture and Forestry Sciences, Beijing 100093, China)、Boris Krška(Research and Breeding Institute of Pomology Holovousy Ltd., Holovousy 129, 508 01 Holovousy, Czech Republic)、Haoyuan Sun(Institute of Forestry and Pomology, Beijing Academy of Agriculture and Forestry Sciences, Beijing 100093, China; Key Laboratory of National Forestry and Grassland Administration on Apricot, Beijing 100093, China; Key Laboratory of Urban Agriculture (North China), Ministry of Agriculture and Rural Affairs, Beijing 100093, China)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Junhuan Zhang, Wenjian Yu, Meiling Zhang, et al. Comprehensive Nutritional Profiling of Kernels in 141 Apricot Cultivars Based on Amino Acids, Fatty Acids, Vitamins, and Mineral Elements. Foods 2026-10-09. DOI: 10.3390/foods15203588. 原著ライセンス:CC BY.