著者の所属・活動拠点の国は、ブラジルです。

掲載誌:Boletim do Instituto de Pesca

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

ダスキーグルーパー(学名 Epinephelus marginatus)はハタの仲間で、生態系の上位に位置する捕食者です。大西洋東部や地中海、ブラジル南部からパタゴニアにかけての大西洋西部に分布しています。ブラジル南東部では肉が料理用に高く評価される重要な商業魚種ですが、需要の高さから野生の個体数が減少しており、国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストでは「危急種」に分類されています。論文は、こうした状況から養殖技術の発展が急務だと述べています。

養殖魚の品種改良では、肉の量が多い個体を親魚として選ぶことが望まれます。しかし、肉の量を直接確かめるには魚を締めて解体する必要があり、その個体を親として使えなくなります。そこで、生きたまま測れる体の長さや高さといった測定値を手がかりに、関連する別の目標形質を改良する「間接選抜」という方法が考えられます。研究チームは、ダスキーグルーパーで体の測定値と生産成績の関係を調べ、異なる養殖方法の間で収穫時の成績を比べるとともに、体の測定値が間接選抜に使えるかを検討しました。

何を調べたか

研究には同じ種苗場から入手した稚魚が使われました。稚魚は同じ条件で育てられた後、生後310日(平均体重およそ140グラム)の時点で、三つの商業的な養殖方法に振り分けられました。水を循環させて飼育する循環式養殖システム、沿岸に浮かべた円形の海上いけす、そして河口域の池です。各方法は飼育密度や水温、餌の種類や与え方などが異なります。

生後730日の収穫時にデータを集めた58尾のうち、記録に不備や疑問のあるものを除いた55尾が分析対象となりました。研究チームは、体長(標準体長)、頭の長さ、体の高さ、体の幅の四つを測り、生産成績として枝肉重量(食用に処理した後の魚体の重さ)と肉の体積を調べました。

分析では、まず三つの養殖方法の間で枝肉重量と肉の体積の平均を比べました。次に、四つの測定値から二つずつ組み合わせ、それぞれ平均より大きいか小さいかで魚を四つのグループに分けました。例えば「体長も体の高さも平均より大きい魚」「両方とも平均より小さい魚」といった分け方です。そのうえで、グループ間で枝肉重量や肉の体積に差があるかを統計的に比べました。

主な結果

養殖方法による差ははっきりしていました。平均の枝肉重量は海上いけすが約983グラムで最も重く、循環式システムが約690グラム、河口域の池が約445グラムでした。肉の体積も同じ順で、海上いけすが最も大きい値でした。海上いけすでは個体間のばらつきも比較的小さく、論文は成績の高さと安定性の両面で他の方法を上回ったと報告しています。

一方、それぞれの養殖方法の中で見ると、体の測定値と枝肉重量・肉の体積との相関は大半が統計的に有意ではありませんでした。例外として、循環式システムでは体の高さと肉の体積の間に有意な相関が見られました。枝肉重量と肉の体積は、どの方法でも互いに強く関連していました。

測定値の組み合わせでグループ分けした比較では、循環式システムと河口域の池で、組み合わせによって枝肉重量の平均に有意な差が見られました。差は主に「両方とも平均より大きいグループ」と「両方とも平均より小さいグループ」の間に生じていました。最も重い個体をまとめて見分けられた組み合わせは、循環式システムでは体長と体の高さ、河口域の池では体の高さと体の幅でした。海上いけすでは、グループ間に枝肉重量の有意な差は見られませんでした。また、肉の体積については、どの養殖方法の中でもグループ間に有意な差は認められませんでした。

三つの方法をまとめた全体のデータでは、枝肉重量と肉の体積の多くの組み合わせで差が有意になりました。ただし著者らは、これは標本数が増えたことによる面があり、性質の異なる飼育環境の影響が混ざっている可能性もあると述べています。

研究が示すこと

著者らは、体の測定値は魚の体形や相対的な大きさを知る手がかりにはなるものの、それだけで枝肉重量や肉の体積を予測するには限界があると結論づけています。そのうえで、循環式システムと河口域の池では、特に体の高さや幅に関わる組み合わせが枝肉重量の高さと結びついており、解体せずに親魚候補を見分ける間接的な指標になりうる一方、その有効性は養殖方法によって異なり、海上いけすでは枝肉重量について確認されなかったと報告しています。

論文は同時に、慎重な解釈が必要な点も挙げています。分析対象は三つの方法に分かれた55尾と少なく、グループによっては個体数がごく少なかったこと、養殖方法ごとに塩分や飼育密度、給餌方法などが大きく異なり比較を難しくしていること、そして間接選抜として使うには測定値と収穫時の重さが中程度以上に遺伝することが前提となることです。著者らは、この魚種が絶滅のおそれのある種であり、ブラジルでの養殖生産もまだ初期段階にあるため、多数の個体のデータを集めること自体が難しいと説明しています。

この研究は、肉の多い個体を選ぶ目安が養殖環境によって変わりうることを示し、ダスキーグルーパーの親魚選びでは養殖方法ごとに基準を考える必要があることを伝えています。

原著論文の著者・所属:Matheus Luiz da Costa Silva(São Paulo State University)、Graziela Tarôco(Federal University of Lavras)、Caio Augusto Perazza(University of Mogi das Cruzes)、Alexandre Wagner Silva Hilsdorf(University of Mogi das Cruzes)、Leila de Genova Gaya(Federal University of São João del-Rei)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Matheus Luiz da Costa Silva, Graziela Tarôco, Caio Augusto Perazza, et al. Morphometric criteria for selection of high-yield phenotypes in Epinephelus marginatus (Lowe, 1834) under varying farming systems. Boletim do Instituto de Pesca 2026-08-18. DOI: 10.20950/1678-2305/bip.2026.52.e991. 原著ライセンス:CC BY.