著者の所属・活動拠点の国は、インドです。

掲載誌:Frontiers in Food Science and Technology

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

総説のねらい

ギーは、牛や水牛などの乳から作るバターを加熱し、水分などを除いて乳脂肪を取り出した「澄ましバター」の一種です。インドでは古くから料理や伝統菓子に使われてきました。

著者らによると、ギーには健康面や風味の利点があるとされる一方、調理・揚げ物用の油脂としての商業規模での利用は少なく、化学的な性質や調理特性には未解明の部分が残っています。この論文は既存の研究をまとめた総説です。ギーの化学組成、調理用油脂として役立つ性質(テクノ機能性)、一般的な食用油との比較を整理し、研究が不足している点を示すことを目的としています。

ギーは何でできているか

著者らは、ギーの主成分がトリアシルグリセロールであると紹介しています。これはグリセリンに脂肪酸が三つ結びついた油脂の基本的な分子で、アシルグリセロール全体の約98%を占めます。このほか、ステロール、リン脂質、カロテノイド、脂溶性ビタミン、遊離脂肪酸、加熱で焦げた乳たんぱく質などが少量含まれます。

脂肪酸の構成では、パルミチン酸やステアリン酸といった飽和脂肪酸が主要な成分です。不飽和脂肪酸のオレイン酸も含まれます。また、酪酸やカプロン酸などの短鎖脂肪酸、カプリル酸やカプリン酸などの中鎖脂肪酸も含まれています。含有量は、原料が牛乳か水牛乳か、家畜の品種や飼料、製法によって変わると報告されています。たとえば水牛のギーは融点の高いトリアシルグリセロールを多く含み、牛のギーより粒状に見えるとされます。

加熱に対する安定性

総説では、ギーの発煙点(加熱して煙が出始める温度)をおよそ250℃と紹介しています。この温度は、一般的な調理に必要な180〜200℃を上回ります。著者らは、ギーが飽和脂肪酸を多く含むため、不飽和脂肪酸の多い油より酸化しにくいと説明しています。揚げ物では、高温に加えて食材からしみ出す水分と空気中の酸素が重なり、油が劣化しやすくなります。

引用された研究からは、温度によって劣化の程度が異なることが読み取れます。ある研究では、140〜170℃の加熱ではギーの成分に大きな変化はみられませんでしたが、200℃を超えると劣化が進みました。別の研究では、伝統菓子グラブジャムンを180℃で60分揚げた際、劣化の指標である極性化合物の割合が時間とともに増えました。それでも、目安とされる25%は下回っていました。

一方で、ギーの熱安定性は一般的な揚げ油と同程度だったとする研究もあります。この研究では、従来の揚げ方の方がエアフライヤーより劣化が大きいという結果でした。著者らは、ディープフライのように高温に長く繰り返しさらされると劣化が進むこと、炒め物や少量の油で焼く調理では劣化が小さいことを整理しています。そのうえで、160〜180℃程度が適した温度とされていると紹介しています。また、カレーリーフや薬草の抽出物を加えると酸化が抑えられたという研究も取り上げています。

食感・風味と、総説が示すこと

著者らは、消費者に好まれる要素として粒状の食感と風味も取り上げています。粒は融点の高い油脂成分が結晶化してできます。その大きさや形は、原料、製法、冷却の速さなどで変わります。ナッツやバターを思わせる香りは、製造中の加熱で糖とたんぱく質が反応するメイラード反応などによって生じると説明されています。

この総説が示すのは、ギーが高温調理に向いた性質をもつと考えられる一方、調理・揚げ物用の油脂としての研究はまだ少ないという現状です。著者らは、どのような食品を何度で何分調理すれば油脂と食品の劣化を抑えられるかが十分に分かっていない点を、研究上の空白として指摘しています。

原著論文の著者・所属:Dheeraj Kumar(Food Technology, Amity Institute of Biotechnology, Amity University)、Harsh B. Jadhav(Food Technology, Amity Institute of Biotechnology, Amity University)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Dheeraj Kumar, Harsh B. Jadhav. Understanding the techno-functionality of ghee as a cooking medium. Frontiers in Food Science and Technology 2026-08-10. DOI: 10.3389/frfst.2026.1826916. 原著ライセンス:CC BY.