買ってきた分の8割以上を捨てる食品と聞くと、もったいない印象を受けるかもしれません。廃棄率とは、殻や皮、ガクなど通常の食習慣で食べずに捨てる部分が、食品全体(または購入時の状態)に対してどれくらいの重さの割合を占めるかを示す数値です。裏を返せば「100%−廃棄率」が実際に口にする可食部の割合ということになります。この数字を軸に、さざえやほや、アーティチョーク、しじみという顔ぶれを見比べてみます。
殻・ガク・皮――違う部位なのに近い廃棄率という不思議
成分表のデータで廃棄率が高い部類の食品を並べると、面白いことに気づきます。貝の硬い殻を捨てるさざえ 焼きとさざえ 生はともに廃棄率85%です。同じく廃棄率の高いグループには、貝殻を持つみるがい 水管 生やしじみ 水煮だけでなく、外皮(外套膜)を取り除くほや 生、さらに硬いガクを剥いていく野菜のアーティチョーク 花らい ゆでまでもが廃棄率80%で並びます。捨てる部位は、貝殻・外皮・ガクとまったく違うのに、数字の上では近い水準に並んでいるわけです。
これらの食品に共通するのは、100gあたりで見ると脂質がほぼゼロで低カロリーという軽さと、特定の栄養素の際立つ濃さを併せ持つという点です。廃棄率の高さそのものに優劣はなく、それぞれの食品ならではの中身を見ていきましょう。
さざえは銅とヨウ素、ほやは亜鉛、しじみは鉄とビタミンB群
さざえ 焼き(廃棄率85%・91kcal)は、100gあたり銅0.73mgを含み、これは女性30〜49歳の推奨量0.7mg/日の104%にあたります。銅は赤血球の形成や多くの酵素の働きに関わる成分です。一方さざえ 生(同85%・83kcal)はヨウ素97µgで、女性30〜49歳の推奨量140µg/日の69%を占めます。ヨウ素は甲状腺ホルモンを構成し、成長・発達やエネルギー代謝に関わる成分です。同じさざえでも、100gあたりに銅とヨウ素という異なる栄養が集中している格好です。ともに脂質はほぼゼロです。
見た目がユニークなほや 生(廃棄率80%・27kcal)は、100gあたり亜鉛5.3mgを含みます。これは女性30〜49歳の推奨量8.0mg/日の66%にあたり、亜鉛は多くの酵素の成分で、味覚の維持やたんぱく質・核酸の代謝に関わる成分です。低カロリーでありながら、この一点で存在感を放っています。
ここで「では野菜のアーティチョークも似た傾向か」と思いきや、少し毛色が違います。アーティチョーク 花らい ゆで(廃棄率80%・35kcal)が際立たせるのは水溶性食物繊維6.3gです。貝やほやがミネラルで勝負するのに対し、アーティチョークは食物繊維というまったく別の軸で存在感を示しており、廃棄率という似た数字の裏にある中身は食品ごとにばらばらだと分かります。
そして最後にもう一段の驚きを用意しているのがしじみ 水煮(廃棄率80%・95kcal)です。鉄15mgは女性30〜49歳(月経なし)の推奨量6.0mg/日に対して250%という高い値になりますが、これは推奨量に対する割合であり、食事摂取基準上の過剰摂取の指標ではありません。さらにビタミンB12を82µg含み、これは女性30〜49歳の目安量4.0µg/日を大きく上回ります。B12はアミノ酸や核酸の代謝に関わり、赤血球(ヘモグロビン)の形成を助ける成分です。加えてビタミンB2も0.57mgで推奨量1.2mg/日の48%を占め、多くの栄養素の代謝に関わり、皮膚や粘膜の健康維持を助ける成分です。鉄・B12・B2という三拍子が一度に揃うのは、ここで見比べた食品の中でもしじみならではの特徴です。
廃棄率が近くても、中身の顔ぶれは食品ごとに違う
こうして見比べると、廃棄率80〜85%という近い数字の食品を並べても、100gあたりに際立つ栄養素は銅、ヨウ素、亜鉛、水溶性食物繊維、鉄、ビタミンB群とそれぞれ異なることが分かります。つまり、捨てる部分の多さは、残った可食部に何が詰まっているかまでは教えてくれません。次に鮮魚店やスーパーでこうした食品を手に取るときは、パッケージの重さではなく「可食部にはどんな栄養が詰まっているか」という視点で見てみると、買い物の景色が少し変わってくるかもしれません。
※本記事は特定の食品の効果・効能を示すものではありません。
※本記事は日本食品標準成分表(八訂)および日本人の食事摂取基準(2025年版)のデータ等をもとに作成しました。
栄養素のはたらき・摂取基準の記述は、次の公的資料に基づきます:厚生労働省 食事摂取基準