食品を調理するとき、皮をむいたり骨を取り除いたりして捨てる部分があります。廃棄率とは、食品全体の重さに対して、そうした「食べない部分」が占める割合のことです。殻つきの貝なら殻、野菜なら皮や芯——廃棄率が高いほど、購入した食品のうち実際に口に入る量が少なくなります。食材を選んで使いこなすうえで知っておくと役立つ数字です。
15%しか食べられない貝の王者
廃棄率の高い食品を成分表のデータで見ると、上位に貝類が並びます。とりわけ目を引くのが、さざえ(焼き)とさざえ(生)の廃棄率85%という数字です。つまり殻つき1個(約200g)を手に取っても、実際に食べられる部分は30g前後にすぎません。あのどっしりとした螺旋の殻のほとんどが「捨てる部分」——そう考えると、磯の食卓での存在感と可食部の少なさのギャップが際立ちます。生と焼きで廃棄率は同じ85%で、調理による差はありません。
さざえは脂質がほぼゼロ(生・焼きともに100gあたり0.4g)で低カロリーな食品でもあります。可食部100gあたりのたんぱく質は生で19.4g、焼きで21.3gが含まれます。一度に大量に食べるものではないため、食卓では味わいを楽しむ素材として位置づけるのが自然でしょう。
80%の壁——4種の顔ぶれが興味深い
廃棄率80%のグループには、食べ慣れた貝から個性派まで4食品が並んでいます。
みるがい(水管・生)はむき身1個が約30gと小ぶりで、水管(サイフォン)の部分が主な食用部位です。殻と内臓を除くと廃棄部分が大きくなり、廃棄率80%の主な理由もここにあります。脂質はほぼゼロと淡泊な味わいの食品です。
同じく80%のほや(生)は、真ぼやや赤ぼやなどが食用とされる海の生き物で、分厚い外皮に包まれた内側の身だけを食べます。1個が約230gあっても可食部は46g程度の計算です。
植物でただ1つランクインしたのがアーティチョーク(花らい・ゆで)です。別名を朝鮮あざみといい、ガクのつけ根と底の花托(はなたく)と呼ばれる部分だけが食用になります。花托はアーティチョークの「底」にあたる肉厚な台座状の部分のことです。大きなつぼみのような見た目なのに食べられる箇所が限られるため、廃棄率が80%に達します。
このグループで異彩を放つのがしじみ(水煮)です。真しじみや大和しじみなどが対象で、あの小さな殻のほとんどが廃棄部分。殻ごと調理してだしを取る使い方が多いのも、可食部の少なさを補う知恵かもしれません。なお、しじみ水煮を一度に100g食べることは現実的ではなく、汁物に数粒使う程度なら実際の摂取量は大幅に下がります。
廃棄率を知ると、食材の「本当のコスト」が見える
廃棄率が高い食品は、値段だけで食費を判断すると損をしやすい食材でもあります。殻つきのさざえを1kg買っても食べられる身は150g前後——これを念頭に置くと、むき身の価格との比較や一食に必要な量の見当がつきやすくなります。貝やほやは「少量でも満足感がある」食べ方が向いていますし、アーティチョークは下処理に手間がかかる分、食べられる部分のおいしさを丁寧に味わいたい食材です。廃棄率という一つの数字が、食材の使い方や量の目安を考えるヒントになります。
※本記事は日本食品標準成分表(八訂)のデータ等をもとに作成しました。