8月の三陸沿岸で水揚げがにぎわっているのが、独特の見た目から「海のパイナップル」と呼ばれるほやです。ゴムのような皮に無数のいぼをまとった卵形の体は、体長20cmほど、幅は10cmくらいあります。皮をむくと、ランプのほや(火屋)に似たオレンジ色の身が現れる——これがこの名の由来とされています。食用にされるのは主に真ぼや・赤ぼやで、独特の磯の香りと、ほかにはない歯ごたえが持ち味です。

栄養の面でも、見た目に負けない個性があります。なお三陸ほやは日本食品標準成分表に個別の収録がないため、ここでは一般的な「ほや 生」の値で見ていきます。可食部100gあたりのエネルギーは27kcalと控えめで、たんぱく質5g・脂質0.8g・炭水化物0.8g。たんぱく質5gは女性30〜49歳の推奨量50g/日の10%にあたります。目を引くのは亜鉛で、100gあたり5.3mg——推奨量8mg/日の66%です。亜鉛は体内で多くの酵素の成分となり、味覚の維持やたんぱく質・核酸の代謝に関わるとされる栄養素です。なお亜鉛には耐容上限量が定められていますが、通常の一食量であれば心配はいりません(詳しくは日本人の食事摂取基準を参照してください)。

もうひとつ、数字として覚えておきたいのが食塩相当量3.3gです。海の生きものをそのまま食べる食材なので、塩気はしっかりあります。酢の物のように味を足す料理では、そのぶんを見込んでおくと味が決まりやすくなります。

三陸ほやならではの楽しみ方

定番は、身を薄切りにしてきゅうりと合わせる酢の物です。磯の香りときゅうりの爽やかさが夏らしく合い、歯ごたえの違いも楽しめます。そのまま炙る白焼きにすれば香ばしさが際立ちますし、片栗粉をまぶしてゆでれば椀だねにもなります。

買うときの目安は1個約230g。ただしこの重さには外皮や内臓など食べない部分が含まれていて、廃棄率は80%と示されています。上に並べた100gあたりの数字は、1個では届かない量の話です。

まとめ

海のパイナップルという愛称、ゴムのような皮の下から現れるオレンジの身、磯の香りと歯ごたえ。三陸ほやは、見た目も香りも食感も、どれをとっても説明が要る食材です。その一皿が食卓に上がるのは、今の時季だけ。まずは薄切りにして冷酒とともに、というのが三陸らしい味わい方でしょう。

※本記事は日本食品標準成分表(八訂)および日本人の食事摂取基準(2025年版)のデータ等をもとに作成しました。

栄養素のはたらき・摂取基準の記述は、次の公的資料に基づきます:厚生労働省 食事摂取基準