著者の所属・活動拠点の国は、エジプトです。
掲載誌:Ukrainian Food Journal
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
オリーブオイルの副産物に着目した研究の目的
オリーブオイルを搾ると、果皮や種、果肉の残りからなる「オリーブ搾りかす(オリーブポマス)」が大量に出ます。論文によると、搾りかすは搾油所で処理されるオリーブ重量の78〜83%を占めます。一方で、果実に含まれるポリフェノールの多くが搾りかすに残ることが知られており、廃棄物を価値ある素材に変える試みの対象として注目されています。
著者らは、エジプトで広く栽培されているマンザニロ種のオリーブ搾りかすを対象に、栄養成分、ポリフェノール類の組成、抗酸化活性を調べました。さらに、必須ミネラルであるセレンを亜セレン酸ナトリウムの形で抽出物に加え、ポリフェノール量や抗酸化活性がどう変わるかを検討しました。研究チームは、性質がよく分かっている無機セレン源として亜セレン酸ナトリウムを選び、過剰摂取を避けるため添加量の管理が必要であることにも触れています。
どのように調べたか
研究チームは、乾燥・粉砕した搾りかすについて、水分、脂質、たんぱく質、食物繊維などの基本成分と、カリウムやカルシウムなどのミネラル量を測定しました。
次に、成分を取り出す方法を比べました。70%メタノール、70%エタノール、70%クロロホルムにそれぞれ浸す方法、水を溶媒としてマイクロ波を使う「グリーン抽出」、性質の異なる5種類の溶媒を順番に使う「逐次溶媒抽出」の五つです。得られた抽出物について、抽出収率、ミネラルの吸収を妨げうる「反栄養因子」とされるフィチン酸の量、ポリフェノール全体の量(総フェノール量)とその一群であるフラボノイドの量を測りました。
抗酸化活性は、試験管内で不安定な分子(ラジカル)をどれだけ消去できるかを示す割合(ラジカル消去活性)と、ラジカルの半分を消去するのに必要な濃度(IC50、値が小さいほど強い)で評価しました。また、セレンの推奨摂取量を参考に、3段階の量の亜セレン酸ナトリウムを抽出物に加えて同じ測定を行いました。個々のポリフェノール化合物は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)という分離分析法で同定・定量しました。
主な結果
搾りかすの水分は10.17%と低く、著者らはこれが微生物の増殖などを抑え、保存性の向上につながる可能性があるとしています。粗繊維は35.71%と多く、ミネラルでは乾燥重量100グラムあたり1302.27ミリグラムのカリウムが最も多く含まれていました。
抽出収率と、ポリフェノールの量は同じ傾向を示しませんでした。収率が最も高かったのは逐次溶媒抽出(85.6%)とメタノール抽出(81.20%)でしたが、総フェノール量が多かったのはメタノール抽出物(抽出物1グラムあたり没食子酸換算49.93ミリグラム)とエタノール抽出物(同47.92ミリグラム)でした。フラボノイド量もこの二つが高い値でした。フィチン酸はグリーン抽出物(0.53%)とメタノール抽出物(0.49%)で多く、抽出法によって量が変わりました。
セレンを加えない抽出物の中では、70%メタノール抽出物の抗酸化活性が最も強く、ラジカル消去活性は55.37%、IC50は1ミリリットルあたり0.13ミリグラムでした。亜セレン酸ナトリウムを加えると、どの抽出物でも総フェノール量、フラボノイド量、抗酸化活性が有意に増え、添加量が多いほど増加が大きくなりました。最も多く添加したメタノール抽出物では、総フェノール量が70.48ミリグラム、ラジカル消去活性が78.15%、IC50が0.09ミリグラムとなりました。著者らは、この結果がポリフェノールとセレンの相乗効果の可能性を示唆するとしています。
HPLC分析では、キナ酸やオレウロペインなどの化合物が主要な成分として確認されました。同定された化合物の合計量は70%エタノール抽出物で最も多く、ヒドロキシチロソールは逐次溶媒抽出物で最も多く検出されました。
研究が示すこと
この研究は、オリーブオイル製造で出る搾りかすが、食物繊維やミネラルに加えて多様なポリフェノールを含み、抽出方法の選び方で取り出せる成分の量が変わることを示しました。著者らは、マンザニロ種の搾りかすが低コストな天然抗酸化物質の供給源になりうること、セレンを加えた抽出物は試験管内の抗酸化活性がさらに高まったことから、機能性食品の素材開発や副産物の有効利用に役立つ可能性があると結論づけています。
原著論文の著者・所属:Esraa Shams(- Kafrelsheikh University , Kafrelsheikh , Egypt)、Mahmoud Gouda(- Kafrelsheikh University , Kafrelsheikh , Egypt)、Abd-Elbaset Salama(- Kafrelsheikh University , Kafrelsheikh , Egypt)、Galal Magdy(- Kafrelsheikh University , Kafrelsheikh , Egypt; - Mansoura National University , Gamasa , Egypt)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Esraa Shams, Mahmoud Gouda, Abd-Elbaset Salama, et al. Bioactive compounds and antinutritional factors in olive pomace. Ukrainian Food Journal 2026-09-01. DOI: 10.24263/2304-974x-2026-15-3-9. 原著ライセンス:CC BY.