著者の所属・活動拠点の国は、インドネシアです。
掲載誌:AGRITEKNO Jurnal Teknologi Pertanian
ライセンス: CC BY-SA 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的:湯の温度という身近な条件に注目
インドネシア西ジャワ州は同国最大の茶の産地で、その中のガルット地域には「テ・クジェック(クジェック茶)」と呼ばれる伝統的な緑茶があります。研究チームによれば、クジェック茶は独特の味や香りを持つお茶として知られています。
茶には、植物由来の成分であるポリフェノールの仲間(フェノール類)や、その一群であるフラボノイドが含まれ、これらは抗酸化作用を持つ成分として研究されてきました。同じ茶葉でも、加工方法によってこうした成分の量が変わることは先行研究で報告されています。著者らは加工に加えて、淹れるときの湯の温度にも注目しました。そして、湯の温度の違いが、お茶に溶け出すフェノール類とフラボノイドの総量、さらに抗酸化活性にどう影響するかを調べることを目的としました。
何を調べたか:55℃・75℃・95℃で淹れて比較
試料には、ガルット県の国営農園で得た茶葉を伝統的なクジェック製法で加工したものが使われました。この製法では、葉を選別・洗浄し、鍋の上で乾かしたあと足で踏み、再び炭火の上で乾燥させます。
研究チームは、茶葉5グラムを55℃、75℃、95℃の3通りの湯でそれぞれ9分間浸し、こした液を分析しました。各抽出液について、フェノール類の総量とフラボノイドの総量を測りました。抗酸化活性は「DPPH法」で調べました。DPPHは色のついた安定な不安定分子(ラジカル)の一種で、試料がこれをどれだけ打ち消すかを色の変化から測定します。結果は「IC50」という値で示されます。これはラジカルの半分を打ち消すのに必要な試料の濃度で、値が小さいほど少ない量で効くため、抗酸化活性が強いことを意味します。
あわせて、茶葉の外観や顕微鏡で見た組織の特徴、含まれる成分のグループの簡易検査、水分や灰分などの品質項目も確認されました。著者らは、これらの品質項目がインドネシアの生薬関連の基準を満たしていたと報告しています。
主な結果:温度が高いほど成分量が多く、抗酸化活性も強かった
フェノール類の総量は、55℃で18.94%、75℃で22.02%、95℃で23.22%でした。湯の温度が高いほど多くなっています。フラボノイドの総量も同じ傾向を示し、55℃で9.47%、75℃で10.9%、95℃で12.5%でした。統計解析では、どちらも温度による差が有意と判断され、95℃の値は55℃・75℃のいずれよりも有意に高かったと報告されています。
抗酸化活性を示すIC50は、55℃で約19.78、75℃で約13.27、95℃で約12.44(マイクログラム毎ミリリットル)でした。値は温度が高いほど小さくなっており、論文は、高温で淹れたものほどラジカルを打ち消す力が強かったと述べています。一方で、純粋なビタミンCを比較用に測定したところ、IC50は約4.05でした。どの温度で淹れたクジェック茶も、純粋なビタミンCより抗酸化活性は低かったことになります。
著者らは、高温では茶葉の細胞から成分が溶け出しやすくなるとする先行研究と、今回の結果が合っていると考察しています。
この研究が示すこと
研究チームは、淹れる湯の温度が高いほどフェノール類とフラボノイドの量が増える、正の関係が見られたと結論づけています。より高い温度は、抗酸化活性に関わる成分をより多く引き出しうる、というのが著者らの見方です。
ただし論文は、今回測ったのは成分の総量であり、熱による個々の成分の分解や組成の変化は評価していないことを限界として挙げています。また、フェノール類は渋みにも関わるため、成分を多く引き出す条件は味わいにも影響します。そのため、機能面と飲みやすさのバランスを考える必要があるとも指摘しています。普段何気なく選んでいる湯の温度が、伝統茶の成分の出方を左右する要因の一つであることを示した研究といえます。
原著論文の著者・所属:Khairunnisa, Anita Khairunnisa(Universitas Garut)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Khairunnisa, Anita Khairunnisa Pengaruh Suhu Penyeduhan Terhadap Aktivitas Total Fenol Flavonoid Dan Antioksidan Pada Teh Hijau Tradisional Garut (Teh Kejek). AGRITEKNO Jurnal Teknologi Pertanian 2026-08-02. DOI: 10.30598/jagritekno.2026.15.1.10-19. 原著ライセンス:CC BY-SA 4.0.
本紹介記事の文章(題名・見出しを含む)は、CC BY-SA 4.0で提供します。原著論文をもとにNutriMap Japanが日本語で要約・説明を加えています。対象は本紹介記事の文章に限り、ヒーロー画像・サイトのロゴ・画面デザイン・他の記事・データベース全体は含みません。