著者の所属・活動拠点の国は、クロアチアです。
掲載誌:Horticulturae
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
ゲッケイジュ(月桂樹、学名Laurus nobilis)は地中海地域を代表する香りの強い植物で、その葉はローリエ(ベイリーフ)として料理の香辛料に使われてきました。葉の商業的な価値は、主に精油(植物から蒸留して得られる香り成分の混合物)にあります。ただし、精油の成分は生育環境、産地、収穫時期、乾燥や抽出の方法などで大きく変わることが知られています。
著者らによれば、クロアチア産のゲッケイジュの葉の揮発性成分(香りのもとになる成分)を調べたこれまでの研究は、いずれも1つの試料だけを分析したものでした。そこで研究チームは、クロアチアのアドリア海沿岸13か所から葉を集め、精油の成分に産地による違いがあるかを調べました。あわせて、ポリフェノール類、主要栄養成分、抗酸化活性も測定し、産地の違いが葉の成分や抗酸化能に影響するか、また産地ごとの集団を見分ける決め手になる化学的特徴は何かを明らかにしようとしました。
何をどのように調べたか
2022年夏、沿岸部と島々を含む13地点で、栽培されている木を各地点10本(雄木5本・雌木5本)選び、傷のない十分に成長した葉を採取しました。ゲッケイジュは雄花をつける木と雌花をつける木が分かれている植物です。葉は直射日光を避けた風通しのよい部屋で20日間自然乾燥させたのち、水蒸気を使って精油を取り出し、ガスクロマトグラフィー質量分析法(成分を分離し、それぞれの重さの特徴から種類を特定する方法)で成分を調べました。
ポリフェノール類は、総ポリフェノール、タンニン、フラボノイド、フェノール酸を、それぞれ発色反応を利用した測定法で定量しました。料理に使われる葉であることから、灰分・たんぱく質・脂質といった主要栄養成分も測定しています。抗酸化活性は、ABTS法、DPPH法、FRAP法という3種類の試験管内の測定法で評価しました。これらは、不安定な分子(ラジカル)を試料がどれだけ打ち消せるか、あるいは鉄イオンをどれだけ還元できるかを色の変化で測るもので、エタノールで抽出したものと水で抽出したものを比べました。
主な結果
精油からは合計49種類の成分が特定され、精油全体の99.27〜100.00%を説明できました。葉の乾燥重量に対する精油の量は0.50〜0.90%でした。成分の大部分はモノテルペン類と呼ばれる香り成分のグループで、全体の86.51〜95.55%を占め、なかでも酸素を含むタイプ、特にモノテルペンオキシド類(42.76〜57.24%)が最も多い割合でした。
すべての試料で最も多かったのは、ユーカリにも含まれる清涼感のある香り成分1,8-シネオールで、産地により42.40〜56.83%でした。次いでα-テルピニルアセテート(6.89〜12.76%)が多く、ほかにサビネン(6.10〜8.65%)、リナロール(2.06〜14.46%)、メチルオイゲノール(0.45〜10.10%)が主要成分として挙げられています。リナロールやメチルオイゲノールのように産地によって含有量の幅が大きい成分もありました。著者らは、この結果をシネオールを多く含むタイプ(ケモタイプ。同じ植物種のなかで成分構成が異なる系統のこと)に当たると位置づけ、地中海地域の他の報告とも整合するとしています。
ポリフェノール類では、総ポリフェノールが6.03〜9.65%、タンニンが1.81〜4.76%、フラボノイドが0.23〜0.71%、フェノール酸がロスマリン酸換算で1.34〜3.03%、クロロゲン酸換算で2.51〜5.66%でした。
抗酸化活性の試験では、エタノール抽出物の方が水抽出物より高い活性を示し、ABTSラジカルを74.58〜82.03%、DPPHラジカルを57.93〜69.54%抑えました。研究チームは、精油の成分、ポリフェノール類、主要栄養成分、抗酸化活性のいずれにも産地による差が見られたと報告しています。
この研究が示すこと
著者らは、本研究をクロアチア産ゲッケイジュの葉について香り成分から栄養成分、抗酸化活性までをまとめて調べた初めての研究と位置づけています。同じ国の沿岸部でも、採取地によって葉の成分構成に違いがあることが具体的な数値で示されました。研究チームは、こうした産地間の違いを手がかりに、望ましい成分特性をもつケモタイプを選び出せる可能性があると述べています。なお、抗酸化活性はあくまで試験管内の測定法による評価であり、食べたときの体への作用を調べたものではありません。
原著論文の著者・所属:Dario Kremer(Faculty of Agriculture, University of Zagreb, 10000 Zagreb, Croatia)、Marinko Petrović(Institute IGH, d.d., J. Rakuše 1, 10000 Zagreb, Croatia)、Renata Jurišić Grubešić(Faculty of Medicine, University of Rijeka, 51000 Rijeka, Croatia)、Lovorka Vujić(Faculty of Pharmacy and Biochemistry, University of Zagreb, 10000 Zagreb, Croatia)、Valerija Dunkić(Faculty of Science, University of Split, 21000 Split, Croatia)、Tatjana Prebeg(Faculty of Agriculture, University of Zagreb, 10000 Zagreb, Croatia)、Suzana Inić(Faculty of Pharmacy and Biochemistry, University of Zagreb, 10000 Zagreb, Croatia)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Dario Kremer, Marinko Petrović, Renata Jurišić Grubešić, et al. Essential Oil Composition, Polyphenolic Profile, Macronutrients, and Antioxidant Activity of Bay Laurel Leaves from Croatia. Horticulturae 2026-08-14. DOI: 10.3390/horticulturae12081013. 原著ライセンス:CC BY.