著者の所属・活動拠点の国は、ロシアです。
掲載誌:Molecules
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
大豆はタンパク質や脂質の供給源です。加えて、植物がつくるフェノール類、特にその一群であるフラボノイドを多く含む作物としても知られています。フェノール類には、体内で酸化を引き起こす不安定な分子(フリーラジカル)を打ち消す「抗酸化」の性質を持つものがあります。そのため、こうした成分の多さは大豆品種の栄養的な価値に関わる指標の一つとされています。
大豆の成分研究の多くは種子を対象としてきました。一方、葉や茎を含む植物の地上部全体を、青刈り飼料やわらなどの用途を想定して調べた研究は限られていると、著者らは指摘しています。また、ロシア極東には大豆の育種拠点が三つありますが、そこで育成された品種のフェノール類含量や抗酸化活性を系統的に比べた研究は、これまでなかったといいます。
そこで研究チームは、ハバロフスク地方の大豆育種センターで育成された品種を対象に、地上部と種子それぞれのフェノール類含量と抗酸化活性を測り、品種間の違いを評価しました。
何をどのように調べたか
対象は8品種です。いずれも2024年に同じ試験地で栽培しました。地上部は8月、さやの中の豆が十分に膨らんだ時期に採取し、種子は10月の成熟期に収穫しました。種子は種皮を除いてから粉砕し、地上部は乾燥させて粉にしました。どちらも70%エタノールで成分を抽出しています。
抽出液については、三つの値を測りました。一つ目は総フェノール含量で、試料100グラムあたりの没食子酸換算グラム数として示します。二つ目は総フラボノイド含量で、同じくルチン換算で示します。三つ目は抗酸化活性で、DPPHという試験用のラジカルを抽出液がどれだけ消去したかを百分率(阻害率)で表しています。あわせて、高速液体クロマトグラフィー質量分析(成分を分離し、分子の重さから種類を推定する手法)で、含まれる化合物を調べました。種子については、タンパク質や脂肪などの基本成分も分析しています。
主な結果
種子の粗タンパク質は37.4〜39.7%でした。品種間に統計的に意味のある差はみられず、品種間で有意差が出たのは脂肪だけでした。これに対し、フェノール類と抗酸化活性には、地上部でも種子でも品種間ではっきりした差がありました。
地上部の総フェノール含量は平均9.2%でした。最も低いのはマリナタ(5.8%)、最も高いのはジェムチュジナ・ヴォストカ(10.8%)です。総フラボノイド含量は0.3〜1.2%、抗酸化活性(阻害率)は、マリナタの16.1%からハバロフスキー・ユビリャルの54.3%まで開きがありました。
種子の値は全体に地上部より低くなりました。総フェノール含量の平均は2.8%で、地上部の約3分の1です。総フラボノイド含量の平均は0.04%にとどまりました。種子で目立ったのは、8品種で唯一黒い種子をつけるコブラです。総フェノール含量(4.4%)と抗酸化活性(47.5%)がいずれも最も高く、総フェノール含量はほかの品種のおよそ2倍でした。著者らは、種子での品種間のばらつきが大きくなった理由として、この黒色種子の品種が含まれていたことを挙げています。
成分分析では、大豆に特徴的なイソフラボンであるダイゼイン、ゲニステイン、グリシテインが、全品種の地上部と種子の両方で確認されました。カテキン、クロロゲン酸、カフェ酸も検出されています。検出された化合物の数は、種子より地上部のほうが多い結果でした。
測定値どうしの関係も調べられました。種子では、抗酸化活性が総フェノール含量(相関係数0.90)や総フラボノイド含量(同0.83)と強く連動していました。地上部でも、抗酸化活性と総フェノール含量の間に相関(0.75)がみられました。なお、これらは数値の連動を示すもので、どの成分が抗酸化活性をもたらしたかを直接示したものではありません。
研究が示すこと
今回の結果は、同じ地域で育成された大豆でも、タンパク質量はそろっている一方で、フェノール類や抗酸化活性には品種によって大きな差があることを示しています。著者らは、飼料用途を想定するなら種子だけでなく地上部全体を評価することが妥当だとしています。また、抗酸化性の高い品種を選ぶことは、機能性食品や飼料への利用を考えるうえで手がかりになると論じています。ただし今回のデータは、1か所・1年の栽培で得られた試料にもとづくものです。
原著論文の著者・所属:Andrei Kholodkov(Far-Eastern Agriculture Research Institute, 680521 Vostochnoe, Russia)、Alexey Stepanov(Far-Eastern Agriculture Research Institute, 680521 Vostochnoe, Russia)、Natalja Tsimbalist(Central Research Laboratory, Department of Biochemical Research Methods, Far Eastern State Medical University, 680000 Khabarovsk, Russia)、Mayya Razgonova(Advanced Engineering School, Institute of Biotechnology, Bioengineering and Food Systems, Far Eastern Federal University, Fr. Russian, Ajax, 10, 690922 Vladivostok, Russia; N.I. Vavilov All-Russian Institute of Plant Genetic Resources, 190031 Saint Petersburg, Russia)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Andrei Kholodkov, Alexey Stepanov, Natalja Tsimbalist, et al. Determination of Phenolic Content and Antioxidant Activity in Khabarovsk Soybean Cultivars. Molecules 2026-07-31. DOI: 10.3390/molecules31152671. 原著ライセンス:CC BY.