8月半ば、大分の産地ではカボスの実がまだ濃い緑色をまとったまま収穫される時期です。かぼす 果汁 生は旬が8〜10月とされ、8月は走りにあたる季節です。大分県特産の酸用かんきつで、果汁を搾って生のまま使う食品とされています。生産のほとんどが大分県産で占められ、香酸柑橘の仲間としてはテニスボールほどの大きさが多く、清涼感のある香りとさわやかな酸味、ほろ苦さが持ち味とされています。

このカボス、1個まるごとから搾れる果汁はおよそ35%しかありません。つまり果実の3分の1ほどしか液体として取り出せない計算です。だからこそカボスは飲み物のように飲むものではなく、料理にひとしぼり添えて香りと酸味を効かせる使い方が向いています。成分表に大分カボスとして個別の収載はないため、ここでは一般的な「かぼす 果汁 生」の値で見ていきます。可食部100gあたりでエネルギーは36kcal、たんぱく質0.4g(30〜49歳女性の推奨量50g/日の1%弱)、脂質0.1g、炭水化物8.5gです。数字だけを見ると控えめですが、この果汁の役目はお腹を満たすことではなく、少量で味の輪郭を引き締めることにあります。

ビタミンCは100gあたり42mgで、抗酸化やコラーゲンの生成に関わり、皮膚や粘膜の健康維持を助ける栄養素として知られています。カリウムは140mg、マグネシウムは8mg、葉酸は13µgと、無機質やビタミン類も薄く広く含まれています。目安量として大さじ1杯はおよそ15g。絞りたての一滴に凝縮された香りと酸味こそがカボスの持ち味であり、成分表の数字以上に食卓の印象を左右してくれます。似た香酸柑橘のすだちはゴルフボールほどの大きさでライムに近い苦みと渋い酸味を持つとされ、カボスの清涼感のある香りとは違った個性を持つといわれています。

焼き魚や鍋にひとしぼりの贅沢

カボスの果汁は、すだちやゆずと同じように、焼き魚や鍋物、さしみ、酢の物にしぼって使われるのが定番とされています。8月はまだ走りの時期ですが、冷奴やそうめんのつゆに加えれば、暑さの中でも爽快な後味が生まれます。いずれも少量で十分に香りが立ちます。皮の濃い緑色と張りのある実を選び、乾燥を避けてポリ袋に入れ冷蔵庫で保存すれば、香りを保ったまま使い切ることができます。

少量に凝縮された旬の一滴

全果のわずか35%しか果汁が取れないという事実は、裏を返せばそれだけ贅沢な一滴だということです。大さじ1杯のカボス果汁は、緑の香りとさわやかな酸味を食卓にまとわせるには十分な力を持っています。ジュースのようにたくさん飲むものではなく、料理の仕上げにきゅっとひとしぼり添える。そんな小さな一手間の中に、大分の夏から秋への季節の移ろいが詰まっています。次にこの実が黄色く熟した姿で店先に並ぶ頃、また違った表情のカボスに出会えるはずです。

※本記事の栄養素の働きに関する記述は一般的な栄養知識であり、特定の食品や成分の効果・効能を示すものではありません。栄養素の基準値については日本人の食事摂取基準もあわせてご参照ください。

※本記事は日本食品標準成分表(八訂)および日本人の食事摂取基準(2025年版)のデータ等をもとに作成しました。

栄養素のはたらき・摂取基準の記述は、次の公的資料に基づきます:厚生労働省 食事摂取基準