店先に紫や緑の房が並ぶと、夏の盛りを実感します。8月になると国産のぶどうが多く出回るようになり、小粒のデラウェアも、巨峰やシャインマスカットといった主力品種も、ちょうど旬の時期にあたります。ひと粒口に含んだときの、あの甘みと、それを引き締める酸味は、いったい何でできているのでしょうか。

ぶどう(皮つき・生)は、ブドウ科のつる植物の果実で、中央アジアが原産地とされ、古く中国から日本へ渡ってきたといわれています。品種は黒・赤・緑の三系統に大きく分けられ、選ぶときの手がかりは、たいてい甘みと酸味の効き方です。黒系では巨峰が大粒で甘みが強く、ナガノパープルは種がなく皮ごと食べられます。スチューベンは酸味が少なく、マスカット・ベリーAはほどよい渋味があってワインの材料にもなります。赤系のデラウェアは小粒ながら糖度が高く、緑系のシャインマスカットは大粒で種がありません。

用途で見ると生食用のほかにワイン醸造用、干しぶどう用があり、世界的にはワイン醸造用が大半を占めるとされています。ただし成分表に載っているのは、品種を分けない「ぶどう」1品です。ここから先の数値は、品種ごとの違いではなく、ぶどうという果実全体の姿を示しています。

甘みの主役は果糖、酸味の主役は酒石酸

可食部100gあたりのエネルギーは69kcal、炭水化物は16.9gです。この甘みのもとを内訳で見ると、単糖・二糖のうち最も多いのは果糖8.7gで、次いでぶどう糖8.4gとなっています。「ぶどう」といえば「ぶどう糖」という響きがありますが、数値のうえでは果糖のほうがわずかに上回っており、甘みの主体は果糖にあるといえます。

一方、口に含んだときにきりっと感じる酸味を支えているのが有機酸です。こちらは酒石酸0.4gが最も多く、リンゴ酸0.2gが続きます。酒石酸は、ワインの酸味を語るときにもよく出てくる、「ぶどう」ならではの代表的な酸です。リンゴ酸も、りんごや「ぶどう」といった果実に広く含まれる酸味成分です。果糖という甘みの主役と、酒石酸という酸味の主役が同じ実の中に同居しているからこそ、ぶどうは単に甘いだけでなく、後味の締まった味わいになっているのでしょう。

そのほか、たんぱく質は0.6g(日本人の食事摂取基準の女性30〜49歳の推奨量50g/日に対して1%)、脂質0.2g、食物繊維0.9gと、主役はあくまで糖と酸にあることがうかがえます。ぶどうには色素成分のアントシアニンや、苦み・渋みにかかわるタンニン、カテキンなど多種類のポリフェノールが含まれているとされ、強い抗酸化作用があるとされています。薬膳や東洋医学の考え方では、のどの渇きやむくみによいとされてきました。

選ぶときはブルームと粒のハリを

房を選ぶときの目印は、粒にハリがあり、表面に白い粉のようなものがふいているものです。この白い粉はブルームと呼ばれ、果実が自ら出すもので、水分の蒸発を防ぎ味を守る役目があるとされ、ついているものほど新鮮とされています。ツルがしっかりしているかどうかも、鮮度を見るポイントです。主産地としては、山梨がおよそ29.1%、長野がおよそ21.4%、岡山がおよそ9.6%、山形がおよそ9.4%、福岡がおよそ4%を占めるとされ、山梨と長野の二県で収穫量の半分ほどを占める計算になります。食べ方はそのまま冷やしていただくほか、冷凍してシャーベット状にして味わうのもよいとされています。

甘さと酸味は同じ実の中で釣り合っている

ぶどうの甘さは果糖が主役となってつくられ、酒石酸という酸がその輪郭を引き締めています。黒・赤・緑と系統の違う房が同時に並ぶのは、国産のぶどうが出そろう8月ならではです。

摂取基準の記述は、次の公的資料に基づきます:厚生労働省 食事摂取基準

※本記事は日本食品標準成分表(八訂)および日本人の食事摂取基準(2025年版)のデータ等をもとに作成しました。

※本記事は特定の食品の効果・効能を示すものではありません。