牡蠣は冬のもの、と思っている方は多いかもしれません。たしかに多く出回る真牡蠣は冬が旬で、寒い頃のものはふっくらと大きく、産卵を終えると一気に味が落ちるといわれます。ところが牡蠣には、種類によって旬の違うものがあります。能登の岩牡蠣は夏、6〜8月が食べどきとされ、8月の今がまさにその盛りです。

岩牡蠣は真牡蠣より大きく、身に厚みがあります。ボリュームのあるジューシーな味わいが持ち味とされ、真牡蠣の凝縮した旨味とクリーミーさとはまた違う食べごたえがあるといわれます。選ぶなら、身がふっくらとしてフチの黒みがあざやかなもの、貝柱に透明感のあるもの。貝柱が黄色味を帯びていたら、鮮度が落ちているサインとされます。

その牡蠣は「海のミルク」ともいわれるほど栄養豊富な食品として知られています。では中身はどうなっているのか。能登岩牡蠣は日本食品標準成分表に個別の収録がないので、ここからは成分表のかき(養殖・生)——市場に出回る養殖の真牡蠣を測った値——で見ていきます。

小さな身に、ミネラルがぎっしり

可食部100gあたりのエネルギーは58kcal。たんぱく質6.9g、脂質2.2g、炭水化物4.9gと、どれも控えめです。たんぱく質は女性30〜49歳の1日の推奨量50gの14%ほどで、決して多い部類ではありません。牡蠣の持ち味はむしろ、少量に凝縮されたミネラルのほうにあります。

筆頭は亜鉛です。100gあたり14mgは、女性30〜49歳の推奨量8mgの175%にあたります。亜鉛は多くの酵素の成分で、味覚の維持やたんぱく質・核酸の代謝に関わるとされる栄養素です。日本人の食事摂取基準には耐容上限量(女性30〜49歳で35mg)も定められていますが、100gあたりの14mgはそこには届きません。

かき(養殖・生)100gあたりのミネラルと、女性30〜49歳の推奨量に対する割合
成分(100gあたり)推奨量に対する割合
セレン 46µg(推奨量25µg)184%
亜鉛 14mg(推奨量8mg)175%
1.04mg(推奨量0.7mg)149%
ヨウ素 67µg(推奨量140µg)48%

セレンと銅も推奨量を上回り、ヨウ素は推奨量の半分近くです。銅は赤血球の形成や多くの酵素の働きに、ヨウ素は甲状腺ホルモンの成分として成長・発達やエネルギー代謝に関わるとされています。

もうひとつ見逃せないのがビタミンB12。100gあたり23.0µgは、女性30〜49歳の目安量4µgの5倍以上です。アミノ酸や核酸の代謝に関わり、赤血球(ヘモグロビン)の形成を助けるとされる栄養素で、水溶性のため汁に溶け出しやすいといわれています。蒸したり鍋にしたりするなら、汁ごといただく食べ方が向いているとされます。※ここでの栄養素の働きの説明は一般的な知識であり、特定の食品の効果を示すものではありません。

1個ぶんで考えると

目安量では、殻をはずした身1個がおよそ15gです。可食部の重さなので100gあたりの値をそのまま換算でき、1個で亜鉛はおよそ2.1mg、ビタミンB12はおよそ3.5µgという計算になります。市販のかきには生食用と加熱用があり、加熱用は中心部までしっかり火を通すのが基本。生のままの保存には向かないとされ、買ったその日のうちに食べきるよう勧められています。

まとめ

牡蠣は冬だけのものではありません。フチの黒みや貝柱の透明感で鮮度を見極めながら、真牡蠣とは違う大ぶりでジューシーな岩牡蠣を、この季節ならではの一皿として楽しんでみてはいかがでしょうか。

※本記事は日本食品標準成分表(八訂)および厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」のデータ等をもとに作成しました。

栄養素のはたらき・摂取基準の記述は、次の公的資料に基づきます:厚生労働省 日本人の食事摂取基準