この研究は、パキスタンの研究機関の研究論文です。

掲載誌:Biomedical Journal of Scientific & Technical Research

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: 論文PDF

なぜ即席麺の「作り直し」が研究対象になったのか

即席麺は、安価で手早く調理でき、味の好みに合わせやすいことから世界中で広く食べられています。保存期間が比較的長く、都市化や生活様式の変化、不規則な食事時間とともに消費が広がってきました。

一方で著者らは、従来型の即席麺には栄養面の課題があると指摘しています。市販品はナトリウム(塩分)と脂質が多くなりやすく、食物繊維やたんぱく質、生体に働きかける成分(バイオアクティブ化合物)は比較的少ないという特徴です。論文は、栄養プロファイルの好ましくない高度加工食品を頻繁に食べることが、肥満や非感染性疾患といった食生活上の懸念と関連づけられてきたと述べています。

そこで著者らは、即席麺を食事から排除するのではなく、原材料の配合を見直し、不要な脂質やナトリウムを減らし、たんぱく質や食物繊維が豊富な素材を取り入れる方向での製品開発に注目しました。この総説は、そうした「より健康的な即席麺」に関わる近年の研究を、原材料の選択、栄養改善、加工方法、官能品質(味や食感などの評価)、持続可能性という観点から整理することを目的としています。

どんな研究が取り上げられ、何が報告されたか

著者らが取り上げたのは、精製小麦粉の一部または全部を、栄養価の高い植物性素材に置き換えたり補ったりする研究です。ひよこ豆粉、レンズ豆粉、サツマイモ、改質キャッサバ粉、米の加工副産物、大豆由来素材、レッドパームオレイン(赤いアカヤシ油の分画油)、海藻などが対象になっています。

ひよこ豆粉を使った即席麺の研究では、従来の即席麺と比較して、グルテンとトランス脂肪酸を含まず、カロリーは半分未満、食物繊維は約40%多く、ナトリウムは大幅に少なかったと報告されています。この研究では加工段階で油で揚げる工程をオーブン乾燥に置き換え、製造中に大量の脂質が加わることを避けた点も紹介されています。

レンズ豆粉については、10%・20%・30%・40%の配合を比べた研究が取り上げられています。30%の配合で官能評価の受容性が最も高く、たんぱく質は100gあたり15.84g、食物繊維は100gあたり3.14gでした。推定血糖指数(食後の血糖の上がりやすさを示す指標)は約60.57で中程度、試験管内でのたんぱく質消化率は72.59%と報告され、対照の小麦麺に比べて鉄・亜鉛・マンガンが増えていました。著者らはこの結果を、栄養改善と食べやすさの折り合いをつける一例として読み取っています。

このほか、白サツマイモを配合した麺が香り・色・硬さ・味・食感の評価で高い受容性を示したこと、改質キャッサバ粉63%と小麦粉36%の配合で結着剤を比較した研究ではカルボキシメチルセルロース(CMC)区が総合的な好ましさで7.30と最も高く、海藻のラトー(Caulerpa lentillifera)区は機能性の可能性を示したものの独特の海藻風味が一部の評価を下げたことが紹介されています。米の加工副産物である米の中砕米(ライスミドリンズ)40.34%、ジャガイモ28.89%、大豆チーズ30.77%という配合では、たんぱく質32.11%、カリウム100gあたり690.14mg、ナイアシン100gあたり4.85mgに加え、抗酸化に関わる活性も相当量示されつつ、官能評価も良好だったと報告されています。レッドパームオレインとコンニャク粉を用いた研究では、ビタミンEが増え、レッドパームオレインと調味油の比率75:25で色・香り・味の受容性が最も高かったとされています。

著者らはさらに、グルテンフリー即席麺の試作品についてタイとデンマークの消費者を対象に行われた質的研究も取り上げ、健康や持続可能性を重視した開発であっても、消費者の期待と環境面を併せて考える必要があることを示す例として紹介しています。

総説が示す意味

著者らの整理によれば、有望なのは小麦粉を単一の代替素材に置き換えることではなく、役割の異なる素材を組み合わせる方法です。豆類は主にたんぱく質と食物繊維を高め、サツマイモやキャッサバといった根菜類は別の炭水化物源と機能的性質をもたらし、米の加工副産物は資源の有効利用につながり、レッドパームオレインのような油は生体に働きかける成分を加えます。経済的価値の低い副産物を食品に変えることは、廃棄の削減や新たな価値の創出にもつながると述べられています。

ただし著者らは、栄養改善のそれぞれが技術的な難しさを生むとも強調しています。代替粉の配合を増やせば、生地のまとまりや弾力、硬さ、色、味、ゆで上がりの挙動が変わりうるためです。海藻の例は、機能性のある素材でも風味が消費者の好みに影響しうることをはっきり示しています。

そのため著者らは、より健康的な即席麺の開発を、栄養価・官能品質・加工効率・価格・消費者の期待・環境面の持続可能性を同時に扱う「複数目的の製品開発の問題」として捉えるべきだと結論づけています。栄養強化が最も大きい配合を自動的に最終製品とするのではなく、栄養と受容性の釣り合いが取れた配合を選ぶ——この総説が伝えているのは、便利さを手放さずに栄養を改善する道筋が研究として現実味を持ちつつあり、その実現は配合の調整と食べやすさの検証を切り離せないという見方です。

著者:Asma Saghir Khan(Supervisor, senior lecturer Food and Nutrition Department of Home Economics Mirpur University of Science and Technology MUST Azad Kashmir, Pakistan)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Asma Saghir Khan. Development of a Healthier Alternative to Conventional Instant Noodles: A Review of Nutritional Formulation, Processing, and Product Development Strategies. Biomedical Journal of Scientific & Technical Research 2026-09-07. DOI: 10.26717/bjstr.2026.66.010375. 原著ライセンス:CC BY.