「低カロリー=満腹」と考えるなら、えのきたけ 生(34kcal)やこんにゃく しらたき(7kcal)、だいず おから 生(88kcal)あたりが満足感の主役に見えます。ところが今回並べた食品の中で最もエネルギーが高いのはえんばく オートミールで、100gあたり350kcal。低カロリー勢とは一桁違う数字です。それなのに「腹持ちがいい」と語られることが多いのはなぜでしょうか。手がかりは、水溶性食物繊維という成分の量にありました。
カロリーではなく、繊維の量と質で見る
オートミールの水溶性食物繊維は100gあたり3.2g。今回並べた食品の中では、えのきたけ 生とおから 生の0.4gを大きく引き離しています。水溶性食物繊維は糖の吸収を緩やかにし、脂質の消化吸収を抑えてコレステロールの吸収を抑制し排出を促し、さらにナトリウムの排出を促すとされる成分です。低カロリー食材が「量を食べても平気」という形で満足感につながるのに対し、オートミールは「少量でも消化吸収がゆっくり進む」という形で満腹感に関わっている可能性がある、という違いが見えてきます。食物繊維の目標量(成人30〜49歳)は男性22g以上・女性18g以上とされています。
ちなみに食物繊維の総量で見ると、おから 生は11.5gと、実はオートミールの9.4gより多く、きくらげ ゆでは5.2gです。ただし水溶性食物繊維に絞ると、この並びの中で最も多いのはオートミールです。「食物繊維が多い」とひとくくりにせず、水に溶けるかどうかという性質の違いまで見ると、同じ「繊維が多い食品」でも役割が異なることがわかります。
低カロリー勢にも、それぞれの持ち味がある
えのきたけ 生は34kcalと低カロリーながら、糖アルコールの一種であるマンニトールを0.1g含みます。糖アルコールは消化管で吸収されにくく、低カロリー甘味料として用いられる成分として知られています。しらたきは7kcalとさらに低く、かさを増やして満足感を演出したいときに扱いやすい食材です。おから 生は88kcalとやや高めですが、食物繊維総量11.5gという厚みがあり、モリブデン45µg、ビオチン4.1µgも含みます(この並びでモリブデンが最も多いのはオートミールの110µgです)。モリブデンはプリン体の代謝や亜硫酸の無毒化に関わる酵素の構成成分として働く必須微量ミネラルです。モリブデンの推奨量(成人30〜49歳)は男性30µg・女性25µgとされています。
オートミールのビオチンは目安量の半分ほど
ここで見ておきたいのが、オートミールはビオチンでも22µgと、今回の並びの中でえのきたけ 生の11µg、おから 生の4.1µg、きくらげ ゆでの1.3µgを上回っている点です。ただしビオチンの目安量(成人30〜49歳)は男性50µg・女性50µgで、オートミール100gあたりでもその半分ほどにあたります。ビオチンはカルボキシラーゼの補酵素として代謝に関わり、皮膚や粘膜の健康維持を助けるとされる成分ですが、水溶性でありながら加熱には強く、ゆでる・煮るなど自由な調理で活用しやすいという性質があります。なお生の卵白に含まれるアビジンという成分はビオチンと結合しやすく、生卵を大量に一緒にとる組み合わせは避けるとよいとされています。オートミールに牛乳や卵を合わせる朝食は定番ですが、卵に火を通す食べ方であれば、この組み合わせを気にする必要はないとされています。
たんぱく質13.7gという数字も見逃せません。えのきたけ 生の2.7g、しらたきの0.2gと比べると差は明らかで、アミノ酸の内訳ではグルタミン酸が3000mgと最も多く含まれています。たんぱく質の推奨量(成人30〜49歳)は男性65g・女性50gとされています。エネルギーが高いのは、炭水化物69.1gに加えてこうした成分の厚みが積み重なった結果でもあります。
毎日の食事への取り入れ方
オートミールは目安として大さじ1が約6g、カップ1杯が約80gです。カップ1杯を主食として使えば、水溶性食物繊維や食物繊維全体をまとまった量で取り入れられます。一方、えのきたけ 生は1袋約100g、しらたきは1玉約200g、おから 生はカップ1杯約80gが目安で、汁物や炒め物にたっぷり加えてかさを増やす使い方に向いています。「量で満たしたい日は低カロリー食材、少量でしっかり満たしたい日はオートミール」と使い分けると、無理なく献立に組み込めます。
まとめ
低カロリー食材が満腹感を作る理由と、オートミールが満腹感を作る理由は、実は別の仕組みだったとわかります。前者は「量を気にせず食べられる」こと、後者は「100gあたり水溶性食物繊維3.2gという含有量の多さ」によるものです。オートミールの水溶性食物繊維は100gあたりの値なので、カップ1杯(約80g)ならおおよそその8割ほどが目安になります。カロリーの数字だけを見ていると、この違いには気づけません。満腹感を量で作るのか、消化の進み方で作るのか。その日の献立に合うほうを選べば十分です。
※本記事は特定の食品の効果・効能を示すものではありません。
※本記事は日本食品標準成分表(八訂)のデータ等をもとに作成しました。
栄養素のはたらき・摂取基準の記述は、次の公的資料に基づきます:厚生労働省 食事摂取基準