大豆に含まれるイソフラボンを多く摂っていた人ほど、2型糖尿病の新規発症が少なかった——中国の大規模栄養調査をもとにした前向きコホート研究が、そのような静かな傾向を示しています。

中国人成人を対象とした前向きコホート研究が示したこと

中国の大規模栄養調査(1997〜2015年)をもとにした前向きコホート研究では、成人14,652人を平均10年間追跡し、その間に1,051人が2型糖尿病と新たに診断されました。研究チームは、食事中のイソフラボン摂取量と糖尿病発症リスクの関係を詳細に分析しました。

結果として、イソフラボン全体の摂取量が多いグループほど糖尿病リスクが低い傾向が見られ、その傾向はイソフラボンを構成するダイゼイン・グリシテイン・ゲニステインといった成分別に分けた場合でも同様に確認されました。さらに非線形分析では、イソフラボン10.65〜24.58mgの摂取範囲で糖尿病リスクが低い傾向が観察されており、サブタイプ別にはダイゼイン3.80〜8.29mg・グリシテイン0.70〜2.02mg・ゲニステイン4.97〜11.31mgの各範囲でも同様の傾向が示されています。

ただし、これらの数値はあくまでこの研究の観察の中で見られた摂取範囲であり、「この量を目標に摂るべき」という摂取目標値ではありません。また、これはあくまで観察研究で見られた統計的な傾向であり、「イソフラボンを摂れば糖尿病リスクが下がる」と因果関係を断定できるものではありません。食生活全体の違いや生活習慣など、多くの要因が絡み合っているためです。研究者たちも、この知見を糖尿病予防に向けたイソフラボン摂取の参考情報として位置づけています。なお、大豆イソフラボンを食品から摂る場合と異なり、サプリメントで補う場合は食品安全委員会が設定する耐容上限量(70〜75mg/日)を超えるリスクがあり、特にサプリメントを利用している方は過剰摂取にご注意ください。

日本の食卓が舞台になるわけ

イソフラボンは大豆に多く含まれるポリフェノールの一種で、ダイゼイン・グリシテイン・ゲニステインがその主なサブタイプです。日本の日常食には、これらのイソフラボンを含む大豆食品が自然に溶け込んでいます。以下で紹介する食品はいずれも大豆由来のイソフラボン含有食品であり、この研究が注目した食品群に連なります。

糸引き納豆は、発酵によって大豆の栄養が変化した食品で、日本で広く食べられているイソフラボン含有大豆食品の代表格です。1パック(約40g)を食べると食物繊維は約3.8g、うち水溶性食物繊維は約0.9gです(100gあたりでは食物繊維総量9.5g、水溶性食物繊維2.3g)。水溶性食物繊維は水に溶けると粘性が高まり、消化・吸収のペースをゆるやかにする性質があるとされています。

絹ごし豆腐木綿豆腐も、大豆を原料とするイソフラボン含有食品です。絹ごし豆腐は圧搾せずに固めるためなめらかで水分が多く、100gあたりのエネルギーは56kcalと軽やかです。一方、豆乳を圧搾して水分を抜いた木綿豆腐は100gあたりのたんぱく質が7gと絹ごし(5.3g)より多くなっています。どちらを選ぶかで食感も栄養の密度も変わります。

豆腐を作るときに出る副産物がおから(生)です。大豆由来のイソフラボン含有食品であり、この研究が注目した食品群の一つです。別名「うのはな」「きらず」とも呼ばれ、食物繊維総量は100gあたり11.5gと大豆食品の中でも際立ちますが、そのほとんどは不溶性食物繊維(11.1g)で、水溶性食物繊維の割合は低いことを付記します。炒り煮や和え物に100g(大さじ約8杯分)加えることで、大豆食品を日常的に取り入れる一つの手段になります。

毎日の選択の積み重ねとして

今回の研究は中国人成人を対象とした観察研究であり、日本人への直接の適用には慎重さが必要です。食文化や食パターン、生活習慣の違いもあります。それでも、「大豆イソフラボンを継続的に摂取していた集団で糖尿病の新規発症が少なかった」という傾向は、イソフラボンを含む大豆食品と健康の関係を日本の食習慣の視点から考える一つの材料を与えてくれます。

納豆を朝食に、豆腐を汁物や副菜に、おからを炒り煮に——特別な努力ではなく、いつもの一品を積み重ねることは、日本人の食事摂取基準が示す多様な食品を組み合わせたバランスのよい食生活とも重なります。特定の食品の摂取量にこだわるより、日々の食卓全体を見渡すことが健康の土台であることは変わりません。

※本記事は日本食品標準成分表(八訂)および日本人の食事摂取基準(2025年版)のデータ等をもとに作成しました。参考文献:Associations between dietary isoflavones and subtypes intakes and the risk of new-onset of type 2 diabetes mellitus in Chinese adults: a prospective cohort study from the Chinese health and nutrition survey(フロンティアーズ・イン・ニュートリション(2026-06-16))