「きのこは低カロリー」——それ自体は間違っていません。けれど、店の棚に並ぶ生のきのこを一つひとつ数字で見ていくと、選ぶ理由としては少し弱いことに気づきます。100gあたりのエネルギーはマッシュルーム 生が15kcal、まいたけ 生が22kcal、ぶなしめじ 生が26kcal、エリンギ 生が31kcal、えのきたけ 生が34kcal。いちばん高いえのきたけといちばん低いマッシュルームの差は、わずか19kcalです。カロリーの低さで選ぶなら、生のきのこの間に「勝ち負け」はほとんどありません。好きな食感で選んでよい、ということです。

ところが乾物だけ、数字が跳ねる

同じきのこでも、きくらげ 乾は別の顔をしています。エネルギー216kcal、炭水化物71.1g、食物繊維総量57.4g——生の5種とは桁の違う数字が並びます。きくらげが特別に栄養の濃いきのこだから、ではありません。乾いて水分が抜けたぶん、同じ100gの中に「きのこ本体」がぎゅっと詰まっているだけです。生のきくらげ100gと、乾いたきくらげ100gでは、そこに入っているきのこの量がまるで違う。それが数字にそのまま表れています。

だからきくらげ乾の目安量は、10個でおよそ5g。ほんのひとつまみです。「戻せばふくらむ、だから少しでいい」——この一点が、乾物の数字の読み方を決めています。

同じ「1パック」でも、重さの意味が違う

ここが、きのこを選ぶときにいちばん読み違えやすいところです。えのきたけやぶなしめじの目安量、たとえば「1袋=約100g」は、買ったときの重さです。柄の根元、いわゆるいしづきなど、捨てる部分が含まれています。この重さに100gあたりの成分値をそのまま掛けて「一食分の栄養」を出すと、実際に口に入る量より多く見積もることになります。

いっぽう、きくらげ乾の「10個で約5g」は、食べる部分そのものの重さです。成分値と同じ物差しなので、そのまま一食量の目安に使えます。パッケージの重さが「買った重さ」なのか「食べる重さ」なのか——同じ「1パック」「1個」という言葉が指しているものは、生のきのこと乾物とで違うのです。

乾いた一握りに、鉄が35mg

乾燥で数字が跳ねる、の分かりやすい例がです。きくらげ乾の鉄は100gあたり35mgで、この6品のなかで飛び抜けて多い。鉄は赤血球のヘモグロビンの成分として、酸素の運搬に関わる栄養素です。推奨量は成人30〜49歳で男性7.5mg・女性6mg(月経なし)・女性10.5mg(月経あり)ですから、35mgという数字はいかにも大きく見えます。

ただしこれは乾いた状態の100gの話。一食の目安である10個・約5gなら、その20分の1ほどです。カリウム1000mg、マグネシウム210mgも同じで、いずれもこの6品でいちばん多いのですが、乾いて詰まったぶんの数字です。カリウムは細胞内の浸透圧を保ち正常な血圧の維持に関わるとされ、マグネシウムは骨をつくり多くの酵素やエネルギー代謝に関わるとされる栄養素です。「多い」と「たくさん摂れる」は、乾物では別のことです。

台所での使い分け

生のきのこは、5種のどれを選んでもエネルギーの差はわずかです。汁物に、炒め物に、食感やうま味の相性で選んで構いません。きくらげ乾は水で戻すと大きくふくらむので、スープや中華炒めにはひとつまみから。保存が利くので、常備しておいて汁物にぱらりと足す、という使い方が向いています。

まとめ

生のきのこ5種は、カロリーで選ぶほどの差はありませんでした。選ぶときに本当に気にしたいのは、袋の重さが「買った重さ」なのか「食べる重さ」なのか、という物差しの違いのほうです。きくらげ乾だけが食べる重さで目安量を示しているのは、少ししか使わない乾物だからこそ、その少しをきちんと数える必要があるからでしょう。次にきくらげを戻すとき、その一握りが乾く前はどれほどの量だったのか——少し想像してみるのも、悪くありません。

【摂取量の目安】きくらげ 乾ビタミンDが多い食品で、100gあたり85.0µgと、成人の耐容上限量100µg/日の約85%に相当します。ただしこれは乾物100gあたりの数値で、一食の目安は10個・約5gです。脂溶性ビタミンは体内に蓄積されやすく、とりすぎに注意が必要とされますが、ビタミンDの過剰症は通常の食事では起こらず、サプリメントの大量摂取などで問題になるとされています。

※特定の食品の効果を示すものではありません。

※本記事は日本食品標準成分表(八訂)のデータ等をもとに作成しました。

栄養素のはたらき・摂取基準の記述は、次の公的資料に基づきます:厚生労働省 食事摂取基準e-ヘルスネット「鉄」(厚生労働省)