著者の所属・活動拠点の国は、ルーマニアです。

掲載誌:Foods

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

捨てられがちなマンゴーの皮を食品素材に

マンゴーは世界で年間5500万トンを超えて生産される主要な熱帯果実です。ジュースやピューレ、乾燥品などに加工される過程で、皮や種が大量に残ります。マンゴーの皮には食物繊維や、ペクチンと呼ばれる多糖類、カロテノイド(黄色やオレンジ色の色素)、ミネラル、ポリフェノール類が含まれることが知られています。そのため、乾燥・粉砕して保存しやすい粉末にし、食品素材として活用する試みが進められてきました。

一方、クリームチーズはなめらかで均一な口当たりとバランスのよい風味が好まれる食品です。植物由来の粉末を多く加えすぎると、色や硬さ、なめらかさ、風味が変わり、品質が損なわれるおそれがあります。研究チームは、マンゴーの皮の粉末をスプレッドタイプのクリームチーズに加えたとき、成分や構造、食感、風味がどのように変化するかを調べました。あわせて、栄養面の強化と製品としての品質のバランスが最もよい添加量を見極めることを目指しました。

どのように調べたか

著者らは、ルーマニアのヤシの市場で購入したチャウンサ種のマンゴーから皮をむき、40℃で乾燥させて粉砕しました。その後、ふるいで粒の大きさをそろえ、微生物を減らす目的で光を断続的に照射する処理を行って粉末にしました。この粉末を、チーズのもとになる凝乳とバターの混合物に対して3%と6%の割合で加え、粉末を加えない対照品と比べました。

比較した項目は多岐にわたります。水分・脂肪・たんぱく質・繊維などの基本成分、ポリフェノールやフラボノイド、カロテノイドの量、ミネラルを測りました。さらに、試験管内で抗酸化力(物質が酸化を抑える働き)を調べる「ABTS法」、機器による色と食感の測定、電子顕微鏡による微細な構造の観察も行いました。ポリフェノール類などの成分と抗酸化力は、冷蔵21日間の保存前後でも測定しました。風味や食感の評価には、訓練を受けていない30人の参加者が7段階の尺度で協力しました。

主な結果

論文によると、使用した皮の粉末は約33%が粗繊維で、ミネラルではカリウムが最も多く含まれていました。この粉末を加えたチーズは、対照品に比べて水分が少なく、粗繊維と炭水化物が多くなりました。フラボノイドとポリフェノールの量、ABTS法で測った抗酸化力も高くなりました。たとえば保存開始時のフラボノイド量は、対照品の乾燥重量1グラムあたり0.27ミリグラムに対し、3%添加品で0.46ミリグラム、6%添加品で0.55ミリグラムでした。カロテノイドは対照品では定量できる下限を下回り、粉末を加えた2種類でのみ測定でき、6%添加品のほうが多く含んでいました。ミネラルでは、リン・カリウム・マグネシウムの変化が最もはっきりしており、カルシウムと亜鉛は緩やかに増え、ナトリウムは添加量が増えるほど減少しました。

見た目と食感も変わりました。粉末を多く加えるほどチーズはより暗く、鮮やかな黄橙色になり、機器で測った硬さは対照品の4.38ニュートンから、3%添加品で5.59ニュートン、6%添加品で7.09ニュートンへと高まりました。電子顕微鏡で見ると、3%添加品では粉末の粒子がチーズ全体に分散し、比較的まとまった外観を保っていました。一方、6%添加品では表面がより粗く、粒子の固まりや不連続な部分が目立ちました。

冷蔵21日間の保存では、ポリフェノール類などの成分の量は数値上減少しました。それでも、粉末を加えたチーズは対照品より高いフラボノイド・ポリフェノール量と抗酸化力を保ち、抗酸化力は3種類とも当初の約99.5〜99.6%が維持されました。官能評価(人が実際に見て、嗅いで、味わう評価)では、3%添加品の総合的な好ましさが7点満点中6.81点と最も高く、対照品や6%添加品を統計的に有意に上回りました。6%添加品は色の濃さやマンゴーの香り、硬さがより強く感じられ、苦みや酸味もより強く表れました。

研究が示すこと

この研究は、マンゴーの皮の粉末がクリームチーズの繊維やポリフェノール類を増やす素材になりうる一方で、添加量を増やすほど色や食感、構造も大きく変わることを示しました。成分の変化が最も大きかったのは6%添加品でしたが、最も好まれたのは中間の3%添加品でした。栄養面の強化と食べやすさの間には釣り合いが必要だという点が、具体的なデータで示されています。

ただし著者らは、官能評価は人数の限られた予備的なものであり、広く一般の消費者の好みや最適な添加量を確定するものではないとしています。また、食感と官能評価は保存開始時にのみ行われており、保存中の品質全体や微生物面での安全性は確かめられていません。論文では、マンゴーの皮にはアレルギーにかかわる成分が含まれうることにも触れています。食品の加工で出る残りかすを、品質とのバランスを見ながら身近な食品に生かす道を探った研究といえます。

原著論文の著者・所属:Ionuț Dumitru Veleșcu(Department of Food Technologies, Faculty of Agriculture, “Ion Ionescu de la Brad” Iasi University of Life Sciences, 3 Mihail Sadoveanu Alley, 700489 Iasi, Romania)、Florina Stoica(Research Institute for Agriculture and Environment, “Ion Ionescu de la Brad” Iasi University of Life Sciences, 14 Sadoveanu Alley, 700490 Iasi, Romania)、Ioana Cristina Crivei(Department of Food Technologies, Faculty of Agriculture, “Ion Ionescu de la Brad” Iasi University of Life Sciences, 3 Mihail Sadoveanu Alley, 700489 Iasi, Romania)、Andreea Bianca Balint(Department of Food Technologies, Faculty of Agriculture, “Ion Ionescu de la Brad” Iasi University of Life Sciences, 3 Mihail Sadoveanu Alley, 700489 Iasi, Romania)、Roxana Nicoleta Rațu(Department of Food Technologies, Faculty of Agriculture, “Ion Ionescu de la Brad” Iasi University of Life Sciences, 3 Mihail Sadoveanu Alley, 700489 Iasi, Romania)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Ionuț Dumitru Veleșcu, Florina Stoica, Ioana Cristina Crivei, et al. Valorization of Mango Peel Powder in Spreadable Cream Cheese: Effects on Composition, Bioactive Properties, Structure, and Sensory Quality. Foods 2026-10-16. DOI: 10.3390/foods15203689. 原著ライセンス:CC BY.