著者の所属・活動拠点の国は、バングラデシュです。

掲載誌:Food Science & Nutrition

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

見過ごされてきた青いマンゴーを乾燥で活かすために

マンゴーは熟した果実として広く親しまれています。一方、熟す前の青いマンゴーは強い酸味と独特の風味を持ちながら、あまり注目されてきませんでした。著者らによると、マンゴーは傷みやすい果物で、取り扱いや追熟、保管の条件が不十分なために毎年多くの青いマンゴーが傷んでしまいます。なお論文は、研究の舞台となったバングラデシュが世界有数のマンゴー生産国であることも紹介しています。

保存方法として有効なのが乾燥です。中でも熱風乾燥は、仕組みが単純で費用も抑えやすいため広く使われています。ただし長時間熱にさらすと、褐変や色・栄養成分の劣化が起こりやすくなります。そこで乾燥前に果実を処理する「前処理」で、乾燥の効率と品質を改善する方法が研究されてきました。

研究チームは、これまでの研究が熟したマンゴーや単一の前処理に偏っていた点に着目しました。そして、化学的な前処理であるクエン酸浸漬と、物理的な前処理である湯通し(熱湯ブランチング)・蒸気処理(蒸気ブランチング)を同じ熱風乾燥条件で比較しました。乾燥の進み方、エネルギー性能、粉末にしたときの性質に加え、乾燥工程の環境負荷も評価の対象とし、青いマンゴーの活用に適した前処理を探ることが目的です。

どのように調べたか

実験には、バングラデシュ・ラジシャヒ地方の農園で同じ日に収穫した、成熟した青い状態のマンゴー(品種BARI Aam-9)を使いました。皮をむいて厚さ2.5ミリに切り、四つのグループに分けています。何もしない対照群、1%クエン酸液に30分浸したもの、90℃前後の熱湯に1分通したもの、蒸気で1分処理したものです。湯通しと蒸気処理の後は、すぐに冷水で冷やしました。

切片を60℃、65℃、70℃の熱風乾燥機で乾燥させ、一定時間ごとに重さを量って水分の減り方を記録しました。研究チームはこのデータに18種類の数式モデルを当てはめ、乾燥の経過を最もよく表すモデルを調べています。あわせて、果肉内部での水分の動きやすさを示す「有効水分拡散係数」と、乾燥がどれだけ温度に左右されるかを示す「活性化エネルギー」を求めました。乾燥機の消費電力からはエネルギー効率も計算しています。

乾燥後の切片は粉末にし、かさ密度(一定体積あたりの重さ)、水や油を吸収する力、ポリフェノール量、色と風味の官能評価を調べました。また、乾燥工程の環境負荷を、乾燥した青いマンゴー1キログラムを基準としてライフサイクルアセスメントの手法で評価しています。なお乾燥実験は、各前処理と温度の組み合わせごとに1回ずつ連続して行われました。

湯通しで乾燥が速まり、エネルギー効率も向上

どの前処理でも、乾燥温度が高いほど水分は速く抜けました。前処理の中では、湯通しと蒸気処理が乾燥時間の短縮に有効でした。対照群と比べると、湯通しは乾燥時間を60℃で約3時間、65℃と70℃で約2時間短縮しました。蒸気処理は60℃で約2時間、65℃と70℃で約1時間の短縮です。著者らは、加熱によって細胞壁が壊れて組織がすき間の多い状態になり、内部の水分が表面へ移動しやすくなったためと考えています。

乾燥の速さを示す定数は、温度が上がるにつれて大きくなりました。前処理別では湯通しが最も大きく、対照群は一貫して最も遅いという結果です。水分の動きやすさ(有効水分拡散係数)も温度とともに高まり、湯通しで最大の値を示しました。数式モデルの比較では、検討したすべてのモデルがデータとよく一致しました。中でも「Midilli型」と呼ばれるモデルが、乾燥初期の急速な水分減少から後半の緩やかな段階までを最もよく表しました。

活性化エネルギーは蒸気処理で最も低く(21.82 kJ/mol)、湯通しで最も高い値(39.72 kJ/mol)でした。湯通しは乾燥が速いのに値が高いという結果です。著者らはこれを、水分の移動が妨げられていたからではなく、湯通しした果肉では温度上昇による水分移動の促進がより大きく表れたためだと解釈しています。

エネルギー面では、温度を60℃から70℃へ上げるとすべての試料で効率が高まりました。また、前処理をした試料はいずれも未処理の試料より効率が良く、水1キログラムを蒸発させるのに必要な電力量が少なくて済みました。最も良い成績を示したのは70℃で湯通しした試料です。熱効率は25.4%、水1キログラムを除くのに要したエネルギーは2.56 kWhでした。

粉末の性質では、かさ密度は1立方センチあたり0.65〜0.86グラムでした。乾燥温度や前処理による影響は小さいという結果です。一方、水を吸収する力は前処理と温度で大きく変わりました。どの温度でも湯通し・蒸気処理した粉末の値が高く、70℃で湯通しした粉末が最も高い値を示しました。著者らは、加熱で細胞壁の構造が変化し、水と結びつきやすい部分が表に出たためではないかと考えています。

研究から見えてくること

この研究は、同じ熱風乾燥の条件で前処理を比べると、乾燥の速さ、エネルギーの使い方、粉末の性質に違いが出ることを示しました。研究チームの条件では、特に短時間の湯通しが乾燥時間を短くし、水分を除くのに必要なエネルギーを減らしました。湯通しや蒸気処理をした粉末は、水をよく吸う性質も示しています。

これまで注目されにくかった青いマンゴーを乾燥粉末として活用するうえで、前処理の選び方が加工の効率と製品の性質の両方に関わることを、具体的な比較データで示した報告といえます。

原著論文の著者・所属:S. K. Fahim Tahmid Boni(Department of Chemical Engineering Rajshahi University of Engineering and Technology Rajshahi Bangladesh)、S. M. Johir Rayhan(Department of Chemical Engineering Rajshahi University of Engineering and Technology Rajshahi Bangladesh)、Pabitra Chandra Das(Department of Chemical Engineering Rajshahi University of Engineering and Technology Rajshahi Bangladesh)、Mohammad Nurur Rahman(Department of Chemical Engineering Rajshahi University of Engineering and Technology Rajshahi Bangladesh)、Farzana Haque Reeti(Department of Chemical Engineering Rajshahi University of Engineering and Technology Rajshahi Bangladesh)、Md Zahir Mahmud(Department of Chemical Engineering Rajshahi University of Engineering and Technology Rajshahi Bangladesh)、Md. Sajjad Hossain(Department of Chemical Engineering Rajshahi University of Engineering and Technology Rajshahi Bangladesh)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):S. K. Fahim Tahmid Boni, S. M. Johir Rayhan, Pabitra Chandra Das, et al. Pretreatment‐Driven Modulation of Green Mango Drying: Kinetics, Energy Consumption, Techno‐Functionality, and Environmental Sustainability. Food Science & Nutrition 2026-08-01. DOI: 10.1002/fsn3.72231. 原著ライセンス:CC BY.