日本主導:この研究は、筆頭著者・責任著者、または著者の主要所属が日本の研究機関である研究です。
掲載誌:Journal of Plant Research
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
葉を使って暑さへの反応を比べる
研究チームは、マンゴーの品種・系統によって高温への耐性がどう異なるかを、葉の細胞膜に着目して調べました。樹木は大きく、生育にも時間がかかるため、木全体を使った耐暑性の比較は容易ではありません。そこで、葉の一部を使い、多くの系統を簡便に評価できる方法の確立を目指しました。
高温で葉から漏れ出す電解質を測定
細胞膜が傷むと、細胞内の電解質が外へ漏れ出します。研究チームは、この漏れ出しを液体の電気の通りやすさから測り、膜の損傷を評価しました。まず複数の品種で測定条件を検討し、円形に切り抜いた葉を試験管に5枚ずつ入れ、3時間の温度処理を行う手順を定めました。
続いて、石垣島の温室で育てた100系統の若い接ぎ木苗を対象に、2020年と2023年に測定しました。葉の切片を40~55℃の6段階の温度で処理し、電解質の漏れ出しから損傷の指標を計算しました。さらに、温度と損傷の関係を曲線に当てはめ、損傷が急に増え始める境目の温度を求めて比較しました。
系統間の差は最大で約6℃
2年間の平均で、境目の温度が最も高かったのは「Choke Anan」の46.1℃、最も低かったのは「Vallenato」の40.3℃でした。100系統の間には約6℃の差があり、年ごとの順位にも強い正の相関が見られました。これは、葉の細胞膜が高温にどこまで安定していられるかに、系統ごとの違いがあることを示す結果です。
東南アジアで選抜された品種は高い値を示す傾向があり、フロリダで選抜された品種には高いものから低いものまで幅がありました。日本で広く栽培される「Irwin」は42℃未満で、低い側に位置しました。また、調べた葉の形態的な特徴などと、境目の温度との間には有意な相関が認められませんでした。
葉の細胞膜の耐熱性を比較する手がかり
著者らは、得られた順位が、各系統の選抜・栽培地域の気候とおおむね対応すると報告しています。ただし、この対応は厳密な統計的関連ではなく、定性的な比較に基づくものです。
今回の温度は、一定条件で処理した葉の細胞膜の損傷が増え始める目安であり、そのまま木全体が耐えられる気温を表すものではありません。研究は、葉の一部と基本的な実験設備を使って、マンゴーの系統間にある細胞膜の耐熱性の違いを比較できることを示しました。
原著論文の著者・所属:Hiroshi Matsuda(Tropical Agriculture Research Front, Japan International Research Center for Agricultural Sciences, 1091-1 Maezato Kawarabaru, Ishigaki, Okinawa, 907-0002, Japan. [email protected])、Sayo Shimizu(Graduate School of Agriculture, Kyoto University, Kitashirakawa, Sakyo, Kyoto, 606-8502, Japan; Tropical Agriculture Research Front, Japan International Research Center for Agricultural Sciences, 1091-1 Maezato Kawarabaru, Ishigaki, Okinawa, 907-0002, Japan)、Hiroo Takaragawa(Tropical Agriculture Research Front, Japan International Research Center for Agricultural Sciences, 1091-1 Maezato Kawarabaru, Ishigaki, Okinawa, 907-0002, Japan)、Hirokazu Higuchi(Graduate School of Agriculture, Kyoto University, Kitashirakawa, Sakyo, Kyoto, 606-8502, Japan)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Hiroshi Matsuda, Sayo Shimizu, Hiroo Takaragawa, et al. Heat susceptibility evaluation among 100 mango (Mangifera indica) genotypes: a comparative study on leaf cell membrane stability at high temperatures using electrolyte leakage. Journal of Plant Research 2026-08-26. DOI: 10.1007/s10265-026-01735-y. 原著ライセンス:CC BY.