著者の所属・活動拠点の国は、ポルトガルです。
掲載誌:Foods
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
肉の一部を植物素材に置き換えたハムを比べる
食肉生産は温室効果ガスの排出や土地利用などの環境負荷と結びついており、食品に使う動物由来原料を減らす方法に関心が集まっています。そのひとつが、肉の一部を植物性のたんぱく質に置き換えた「ハイブリッド」食肉製品です。同時に、食品業界では添加物をなるべく減らす「クリーンラベル」志向も広がっています。
著者らは、豚肉の一部を豆類の粉とジャガイモたんぱく質で置き換えた場合に、薄切りハムの栄養、物性、消化性、ミネラルの溶け出しやすさ、抗酸化性、環境面、官能評価がどう変わるかは、まとめて比べた例が少ないと指摘しています。特に、通常の添加物を使う配合とクリーンラベル配合の比較がはっきりしていませんでした。そこで、3種類のハムをさまざまな角度から比べました。
3種類のハムをどう作り、何を調べたか
1つ目は対照のハムで、たんぱく源として豚肉を76%使い、リン酸塩の一種であるトリポリリン酸ナトリウム、増粘剤のカラギーナン、硝酸塩を含みます。2つ目のハイブリッドハムでは、豚肉の質量の50%をひよこ豆粉、赤レンズ豆粉、ジャガイモたんぱく質を混ぜたものに置き換えました。食物繊維素材のサイリウム、油、天然着色料、香料を加え、食塩は対照より29%減らしています。3つ目のクリーンラベル版ハイブリッドハムは、肉の置き換え率と減塩は同じですが、硝酸塩とカラギーナンを使わず、トリポリリン酸ナトリウムを天然由来の代替素材に替えました。この研究での「クリーンラベル」は、加工肉によく使われる特定の添加物を減らす、または置き換える配合方針を指す用語として定義されています。
研究チームは、硬さなどの食感、生地の弾性、水分、成分組成、ミネラル含量を測定しました。消化の過程を模した試験管内の実験では、消化されやすさと、ミネラルがどれだけ溶け出して吸収されうる状態になるか(バイオアクセシビリティ)も調べています。抗酸化活性も測定しました。さらに、原料の生産に伴って環境中に出る反応性窒素の量をモデルで推定する「窒素フットプリント」を計算し、40人の一般パネルによる試食評価と購入意向の調査も行いました。
主な結果:利点と課題の両方
食感では、対照のハムはハイブリッドの2種より硬さが28%高く、まとまりやすさも約25%高い値でした。ハイブリッド2種の間には、測定した食感の項目で差がありませんでした。一方、ハイブリッドは保水性が高く、小さな変形に対する弾性も対照より高い値を示しました。著者らは、保水性の高いサイリウムや豆の粉がこうした性質に関わっている可能性を挙げています。ハイブリッドは色が濃く、水分が少なく、炭水化物が多いことも報告されています。
消化を模した実験では、対照ハムの全体の消化率が81.4%、たんぱく質の消化率が87.4%でした。ハイブリッドではそれぞれ約48%と約66%で、対照より低い結果でした。ミネラルの溶け出しやすさは、鉄が対照で44.5%、ハイブリッドで約16%、亜鉛が対照で39%、ハイブリッドで24〜27%、カルシウムも対照のほうが高い結果でした。一方、ナトリウムはハイブリッドで、特にクリーンラベル版で高く、リンもクリーンラベル版で高い値を示しました。抗酸化活性は、豆の粉を含むハイブリッドのほうが高い結果でした。
窒素フットプリントの推定値は、100gあたり対照が10.8g、ハイブリッドが6.76g、クリーンラベル版が9.7gでした。著者らは、これは一定の前提と範囲に基づくモデル上の推定差であり、窒素損失を直接測ったものではないと説明しています。
試食評価では、配合の変更によっていくつかの評価項目が下がりました。「きっと買う」「たぶん買う」と答えた人の割合は、対照が68%、ハイブリッドが35%、クリーンラベル版が20%と、配合を変えるほど低くなりました。
この研究が示すこと
著者らは、提案した配合でスライスできるハムの試作品が作れることを示しました。ただし、豚肉の置き換えとクリーンラベル化には、食感、消化性、ミネラルの溶け出しやすさ、購入意向の面で課題があることも明らかになりました。
各配合は1回分の製造ロットで分析しており、微生物学的な安全性や冷蔵での保存期間は評価していません。そのため著者らは、これらを市場に出せる段階ではない実験的な試作品と位置づけています。この研究は、肉の一部を豆の粉で置き換えたハムに、環境負荷の推定や抗酸化性での利点と、品質や消費者の受け入れでの課題が同時にあることを、具体的に示したものといえます。
原著論文の著者・所属:Lisiane Carvalho(LEAF—Linking Landscape, Environment, Agriculture and Food Research Center, Instituto Superior de Agronomia, Universidade de Lisboa, Tapada da Ajuda, 1349-017 Lisboa, Portugal)、Soundary Seriacaroupin(LEAF—Linking Landscape, Environment, Agriculture and Food Research Center, Instituto Superior de Agronomia, Universidade de Lisboa, Tapada da Ajuda, 1349-017 Lisboa, Portugal)、Adriana Ferreira(R&D—Department, Primor Charcutaria-Prima, S.A., Gavião, 4760-003 Vila Nova de Famalicão, Portugal)、Cláudia S. C. Marques-dos-Santos(CEF—Forest Research Centre, Associate Laboratory TERRA, Instituto Superior de Agronomia, Universidade de Lisboa, Tapada da Ajuda, 1349-017 Lisboa, Portugal)、Teresa J. S. Matos(LEAF—Linking Landscape, Environment, Agriculture and Food Research Center, Instituto Superior de Agronomia, Universidade de Lisboa, Tapada da Ajuda, 1349-017 Lisboa, Portugal)、Isabel Sousa(LEAF—Linking Landscape, Environment, Agriculture and Food Research Center, Instituto Superior de Agronomia, Universidade de Lisboa, Tapada da Ajuda, 1349-017 Lisboa, Portugal)、Anabela Raymundo(LEAF—Linking Landscape, Environment, Agriculture and Food Research Center, Instituto Superior de Agronomia, Universidade de Lisboa, Tapada da Ajuda, 1349-017 Lisboa, Portugal)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Lisiane Carvalho, Soundary Seriacaroupin, Adriana Ferreira, et al. Development and Characterization of Clean-Label Hybrid Deli Ham with Pulse Flours as Partial Meat Replacers. Foods 2026-10-04. DOI: 10.3390/foods15193541. 原著ライセンス:CC BY.