著者の所属・活動拠点の国は、トルコです。

掲載誌:Frontiers in Nutrition

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

食べ物の生産は、温室効果ガスの排出や水の使用などを通じて環境に大きな影響を与えています。そこで、人の健康と地球環境の両方に配慮した食べ方として、国際的な専門家委員会(EAT–ランセット委員会)が2019年に「プラネタリー・ヘルス・ダイエット(地球の健康のための食事)」を提案しました。果物、野菜、全粒穀物、豆類、ナッツなどの植物性食品を中心にし、赤身肉や加工肉、精製穀物、砂糖の摂取は控えめにするという考え方です。

この食事にどれだけ近い食べ方をしているかは、「プラネタリー・ヘルス・ダイエット指数(PHDI)」という点数で表せます。これまで、この指数と食事の質、環境への負荷、食品選びの意識などとの関係は個別には調べられてきましたが、同じ人たちを対象にまとめて評価した研究は限られていました。研究チームは、PHDIの点数が食事の質、食事に伴う炭素と水の負荷の推定値、体格の指標、そして持続可能性を意識した食品選びとどのように関係しているかを、多面的に調べることを目的としました。

何をどう調べたか

調査は、トルコ東部ビトリスの公立病院にある食事外来(特定の病気に限らず、栄養相談を希望する成人が訪れる外来)で、2025年1月から7月にかけて行われました。対象は18〜64歳の成人300人で、精神疾患や摂食障害のある人、妊娠中・授乳中の人、大きな食事制限が必要な病気のある人は除かれています。ある一時点の状態を調べる「横断研究」と呼ばれる方法で、時間を追って変化を見るものではありません。

参加者には対面の聞き取りで、前日24時間に食べたものを思い出してもらい、その記録からPHDIを計算しました。PHDIは16の項目からなり、0〜150点で、点数が高いほど地球の健康のための食事に近いことを示します。あわせて、米国で作られた食事の質の指標である「健康的な食事指数(HEI-2020)」も算出しました。

環境への負荷については、食べた食品の量に、文献で報告されている食品ごとの係数を掛けて、1日あたりの炭素フットプリント(温室効果ガス排出量をCO2に換算したもの)と水フットプリント(その食品の生産に使われる水の量)を推定しました。トルコ独自の係数がすべての食品にそろっていなかったため国際的な値を使っており、著者らはこれらを正確な環境影響ではなく、人どうしを比べるための目安の値として扱うとしています。

さらに、食品を選ぶときに環境や倫理、動物福祉、地元産・旬のものをどれだけ重視するかを尋ねる「持続可能な食品選択質問票(SUS-FCQ)」に回答してもらい、体重、腹囲、体脂肪率なども測定しました。

主な結果

PHDIの点数が高い人ほど、食事の質を示すHEI-2020の点数も高い傾向があり、両者の間には中程度の正の相関(相関係数0.48)が見られました。PHDIの点数で参加者を4つのグループに分けると、最も点数が高いグループではHEI-2020の点数がほかのグループより高くなっていました。

PHDIと炭素・水フットプリントの間には、PHDIが高いほど負荷の推定値がやや低いという弱い逆向きの相関(相関係数マイナス0.13)が見られました。年齢、性別、教育、BMI、運動、喫煙、総摂取エネルギーの影響を統計的に考慮した分析でもこの関係は残り、摂取エネルギー1000キロカロリーあたりに換算した分析でも同様でした。ただし、PHDIが加わることで説明できる負荷のばらつきは1〜2%程度とわずかでした。また、PHDIの4つのグループの間で負荷の推定値に統計的に意味のある差は見られませんでした。

一方、PHDIと持続可能な食品選択の意識の点数、BMI、腹囲、体脂肪率との間には、意味のある関係は見られませんでした。持続可能な食品選択の点数は、女性、教育歴の長い人、学生や公務員で高く、肥満の人より過体重の人で高いなど、属性によって違いがありました。この点数と腹囲の間には、弱い逆向きの相関が報告されています。

この研究が示すこと

研究チームは、PHDIの高さは食事の質の高さと結びついており、食事に伴う環境負荷の推定値ともわずかながら逆向きの関係があると結論づけています。ただし、PHDIとHEI-2020は同じ24時間の食事記録から計算され、果物や野菜、全粒穀物などの共通する項目を含むため、両者の関係は指標どうしの重なりを一部反映している可能性があり、慎重に解釈すべきだと述べています。

また、地球の健康のための食事に近い食べ方をしていることと、本人が持続可能性を意識して食品を選んでいるかどうかは必ずしも一致しないことも示されました。この調査からは、食事の栄養面の質と環境面の持続可能性を、別々ではなく一緒に考えていく必要性がうかがえます。

原著論文の著者・所属:Hilal Toklu Baloglu(Department of Nutrition and Dietetics, Faculty of Health Sciences, Bitlis Eren University)、Sevgi Karakose(Department of Nutrition and Dietetics, Faculty of Health Sciences, Bitlis Eren University)、Zeynep Yavuz(Department of Nutrition and Dietetics, Faculty of Health Sciences, Bitlis Eren University)、Hediye Unlu(Department of Nutrition and Dietetics, Faculty of Health Sciences, Bitlis Eren University)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Hilal Toklu Baloglu, Sevgi Karakose, Zeynep Yavuz, et al. Associations of the Planetary Health Diet Index with diet quality, environmental footprints, and sustainable food choices in adults attending a diet clinic. Frontiers in Nutrition 2026-10-28. DOI: 10.3389/fnut.2026.1983987. 原著ライセンス:CC BY.