ナイアシンは、糖質・脂質たんぱく質をエネルギーに変えるときに働く酵素の補酵素の一種で、皮膚や粘膜の健康維持にも関わるとされる栄養素です。一部は体内でトリプトファンからも作られるとされますが、食品から摂るのが基本になります。そこで100gあたりの含有量が多い食品を並べてみると、面白い構図が見えてきます。上位6食品は、たらこ・かつお節といった「動物性の凝縮食品」が4つと、水分を抜いて濃縮された動物性でない食品——まいたけ乾とインスタントコーヒー——が2つ、という顔ぶれでした。しかも、同じくらいナイアシンを含んでいても、隣について回る成分はまるで別物です。

数値に入る前にひとつだけ。食事摂取基準の推奨量・耐容上限量はナイアシン当量(mgNE)——ナイアシンに、体内でナイアシンに変わるトリプトファンの1/60を足した量——に対して設定された値です。以下に並べるのは成分表に載るナイアシン(mg)そのもので、基準値とは別の量になります。

トップはまいたけ乾、ビタミンB群が勢ぞろい

第1位はまいたけ 乾で、ナイアシン64mg(273kcal)。上位6食品のなかで唯一のきのこ類です。ビオチン240µg(成人の目安量50µg/日を大幅に上回る量)やビタミンB2 1.92mg(女性30〜49歳の推奨量1.2mg/日の160%)、ビタミンB1も豊富で、ビタミンB群がそろって高いのが特徴です。しかもナトリウムはわずか3mg(食塩相当量0g)と、動物性食品とは対照的にほぼゼロです。乾燥品なので少量でも栄養密度が高く、効率よく摂れる一方、料理に使うのは戻してからのごく少量になる点は意識しておきたいところです。

上位を占めるたらこ2種と、意外な第4位

第2位はすけとうだら たらこ 焼き(57mg/158kcal)、第3位はすけとうだら たらこ 生(50mg/131kcal)です。焼きたらこはコレステロール410mg、食塩相当量5.3gを含み、摂りすぎには配慮が必要な食品といえます。生たらこにはヨウ素130µg(成人推奨量140µg/日の約93%)やビタミンB12 18µgも多く含まれますが、ヨウ素は摂りすぎると甲状腺機能に影響しうる栄養素でもあるため、たらこを日常的に多く食べる人は、頭の片隅に置いておくとよい栄養素です。実際の一食量は1腹(小)で約50gが一般的とされます。ナイアシンの数値は100gあたりの表示なので、実際に口にする量ではその半分ほどに収まります。

第4位はインスタントコーヒー(47mg/287kcal)。魚が続いたなかで、ここだけが嗜好飲料です。大さじ1杯は約4g、小さじ1杯は約1gしか使わないため、実際に飲む一杯あたりのナイアシン量はごくわずかになります。数字の迫力と実際の摂取量のギャップが最も大きい食品といえそうです。

かつお節2品は「タイ」、でもセレンの量が違う

第5位タイはかつお類 加工品 裸節かつお類 加工品 かつお節で、どちらもナイアシン45mgと同程度です。ただし中身には差があります。裸節はセレン240µg、かつお節はセレン320µgを含み(100gあたり)、どちらも推奨量(女性成人25µg/日、男性成人30〜35µg/日・年齢帯により異なる)を大きく上回ります。セレンには耐容上限量が定められているため、大量摂取は避けるのが望ましい栄養素ですが、料理でかつお節を出汁取りや振りかけに使う通常の使用量はごく少量です。かつお節はイソロイシン3600mgやトレオニン3800mgといった体内で作れない必須アミノ酸も豊富で、出汁を取るだけでなく栄養面でも凝縮された食品であることがわかります。

「ナイアシンが多い」だけで選ばない

ここまで見てきた6食品を貫く発見は、ナイアシンの量そのものよりも「一緒についてくる成分」の違いです。たらこ側は塩分やコレステロールへの配慮が必要な凝縮食品、かつお節側はセレンが際立って多い凝縮食品、まいたけ乾はナトリウムがほぼゼロでビタミンB群も充実したきのこ類、インスタントコーヒーは数字こそ大きいものの一杯に使う量がごくわずかな食品でした。同じ「ナイアシンが多い」という共通点の裏に、これほど違う顔ぶれが隠れていたわけです。食卓では「量が多い食品」ではなく、塩分やセレンなど一緒に摂れる成分まで見て選ぶと、目的に合った一品を選びやすくなります。

※特定の食品の効果・効能を示すものではありません。

※本記事は日本食品標準成分表(八訂)および日本人の食事摂取基準(2025年版)のデータ等をもとに作成しました。

栄養素のはたらき・摂取基準の記述は、次の公的資料に基づきます:厚生労働省 食事摂取基準