「ナイアシン当量」という言葉を目にしたとき、これがナイアシンそのものの含有量とイコールだと思う人は多いかもしれません。ところが実際は少し違います。ナイアシンは皮膚や粘膜の健康維持を助ける栄養素で、体内の酸化還元反応を支える補酵素の材料にもなります。そのナイアシンの摂取量を評価するとき、日本の食事摂取基準はナイアシン当量という合成値を使います。計算式は「ナイアシン+トリプトファン÷60」。タンパク質を構成するアミノ酸のひとつであるトリプトファンが体内でナイアシンに変換されることから、その分を60分の1換算で加算した数字が「ナイアシン当量」です。女性30〜49歳の1日推奨量は12mgNE(ナイアシン当量)とされています。

この算出ルールを頭に置いてランキングを見ると、同じ「高い数値」でも中身がまったく違うことに気づきます。それがこのデータの最大の読みどころです。

1位はなぜ乾燥まいたけなのか

トップはまいたけ 乾で100gあたり69.0mgと、ランキングのほかの食品を大きく上回ります。推奨量の約575%にあたる数字ですが、これは100gというまとまった量を食べた場合の話であり、乾物は水分が飛んで成分が凝縮されています。実際の料理では戻して使うため、乾燥状態100gをそのまま食べる場面はほとんどありません。きのこ類がこれほど高い値を示す理由は、ナイアシン当量の計算式ではなく、もともとのナイアシン含有量そのものが高いことによります。一方でトリプトファンの底上げがどの程度あるかはこのデータからは読み取れません。つまり1位の正体は「純粋なナイアシンが濃縮された乾物」です。なお、ナイアシン当量には耐容上限量(成人女性で1日250mgNE)が定められていますが、まいたけ乾100g分の69.0mgはその範囲に収まる量です。

3〜5位にかつお節系が集中する「見えない底上げ」

ここから記事の背骨に触れます。かつお節(61mg)、裸節(推定値60.0mg)、削り節(54mg)と、3〜5位にかつお節系加工品が並ぶのはなぜか。削り節のデータにはトリプトファン1000mgという数値が明記されています。これを式に当てはめると、トリプトファン由来のナイアシン当量は1000÷60≒約16.7mg。かつお節系のナイアシン当量の相当部分が、このトリプトファン由来の「見えない加算」によって押し上げられていると考えられます。かつお節は可食部100gあたりタンパク質を約77g含む高タンパクな食品で、その分アミノ酸も豊富です。ナイアシン当量が高い食品として選ぶとき、かつお節系は「ナイアシン本体」と「トリプトファン由来の換算分」が両方乗った値だと知っておくと、数字の読み方が変わります。

なお、かつお節は1パック約5g、削り節は1カップ約10gが目安の一食量です。その量での摂取量は100gあたりの値より大幅に少なくなりますが、だしや薬味として日常的に使える手軽さは変わりません。少量を繰り返し取り入れられるのが、かつお節系の実用的な強みです。

たらこは数値とともに留意点も

2位の焼きたらこ(62mg)と、5位タイのたらこ(生)(54mg)は、たらこがナイアシンを多く含む食品であることを示しています。たらこ(生)の目安量は1腹(小)50gで、その量でも相当量のナイアシン当量が摂れる計算になります。ただし、たらこは塩分の高い食品でもあり、焼きたらこの食塩相当量は100gあたり5.3gにのぼります。コレステロールも100gあたり410mgと記載されており、日常的に大量に食べる食品というより、少量でも存在感のある食材として位置づけるのが現実的です。

「数値が大きい=ナイアシンが豊富」とは限らない

このランキングから持ち帰ってほしい視点は一つです。ナイアシン当量の大きさは、「ナイアシン本体の多さ」と「トリプトファン由来の換算分の多さ」の合計であり、食品によってその内訳は大きく異なります。まいたけ乾のように乾燥によって成分が凝縮されたケース、かつお節系のようにアミノ酸由来の底上げが効いているケース、たらこのように魚卵そのもののナイアシン含有量に由来すると考えられるケースまで、その成り立ちはさまざまです。数字だけを並べると同じ「高含有食品」に見えても、中身は別々なのです。

日常の食卓でナイアシン当量を意識するなら、かつお節や削り節はだし・薬味として手軽に使えるうえ、一食量は少量でも繰り返し取り入れやすい点が実用的な強みです。まいたけ乾は戻す手間があるぶん、スープや炊き込みごはんに加えると活躍します。「どの食品から、何由来のナイアシン当量を取っているか」を少し意識するだけで、成分表の数字がより立体的に見えてきます。

なお、今回のデータではかつお節の「ナイアシン本体」とトリプトファン由来分の内訳が一部推定値を含んでいます。成分表の更新でこの内訳が詳しく整理されれば、かつお節系のナイアシン当量の正体はさらにくっきりします。そのときにまたこの数字を見返してみると、新しい発見があるかもしれません。

※本記事は日本食品標準成分表(八訂)および日本人の食事摂取基準(2025年版)のデータ等をもとに作成しました。

栄養素のはたらき・摂取基準の記述は、次の公的資料に基づきます:厚生労働省 食事摂取基準