著者の所属・活動拠点の国は、メキシコ、スペインです。

掲載誌:Life

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

袋入りのふくらんだスナック菓子の多くは、トウモロコシや米などの精製した穀物粉を原料に作られます。エクストルーダーという機械で加熱・加圧して押し出し、膨らませる製法です。主成分はでんぷんで、製造後に味付けの油をまぶすため、脂質が多くなりがちです。そこで食品業界では、豆類などを加えて栄養面を改善する試みが進められています。

ひよこ豆はトウモロコシに比べて、たんぱく質、食物繊維、ミネラルが多く含まれます。トウモロコシに不足しがちな必須アミノ酸のリシンも豊富です。一方で、豆類に多い不溶性の食物繊維や、ミネラルと強く結びつく性質をもつフィチン酸という成分は、消化の過程でミネラルが溶け出すのを妨げる可能性があります。研究チームは、スナックのトウモロコシの一部をひよこ豆と米に置き換えると次のような変化が起こる、という仮説を立てて検証しました。たんぱく質の質が高まり、消化でミネラルが溶け出す割合も高まる。でんぷんの消化と推定グリセミック指数は下がる。その一方で、たんぱく質の消化性は大きく損なわれない、というものです。著者らによれば、市販のスナック製品について、消化でミネラルが溶け出す割合を調べた研究は、これまで報告されていませんでした。

何をどのように調べたか

試料は、メキシコの食品工場で工業用のエクストルーダーを使って製造されました。比べたのは次の4種類です。 ・トウモロコシ100%の対照品 ・ひよこ豆30%と米50%を配合したもの ・ひよこ豆60%と米35%を配合したもの ・60%配合品をもとにチェダーチーズ風味の油をまぶした市販品(最終的なひよこ豆含有量は約45%) 最初の3種類には味付けの油をまぶしていません。市販品には油や乳成分などの材料が追加されています。そのため著者らは、市販品と他の3種類との違いを、ひよこ豆の量だけで説明することはできないと注意を促しています。

研究チームはまず、各試料に含まれるたんぱく質、脂質、食物繊維、フィチン酸、でんぷん、アミノ酸、ミネラルの量を測定しました。さらに、口・胃・腸での消化を試験管内で再現する国際的な標準手順(INFOGEST 2.0)を使い、消化の過程を調べました。

ミネラルについて評価したのは「バイオアクセシビリティ(生体接近性)」です。これは、食品中の栄養素のうち、消化によって溶け出し、吸収されうる状態になった割合を指します。実際に体に吸収・利用された割合(バイオアベイラビリティ)とは異なる指標です。でんぷんについては、時間を追って分解の進み方を測定しました。その結果を白パンと比較し、血糖値の上がりやすさの目安となる「推定グリセミック指数」を算出しました。

主な結果

ひよこ豆を加えると、たんぱく質の含有量はトウモロコシ100%品の6.83%から、ひよこ豆60%配合品では15.09%に増えました。灰分(ミネラル分)や食物繊維も増え、食物繊維は不溶性のものが中心でした。一方、でんぷんの量は減少しました。アミノ酸では、リシンが大幅に増えました。しかしメチオニンなど硫黄を含むアミノ酸は相対的に少ないままで、これらが不足しやすいアミノ酸であることに変わりはありませんでした。味付けした市販品は油をまぶしたため脂質が25.70%と高く、ほかの3種類はいずれも1%未満でした。

ミネラルの含有量は、分析したすべての種類で増えました。一方で、消化で溶け出す割合は元素ごとに異なりました。 ・カルシウム:どの試料でも、消化後に溶け出した部分から検出されませんでした。 ・鉄:溶け出した割合は、トウモロコシ100%品が6.97%と最も低く、ひよこ豆30%配合品で83.18%、市販品で71.96%、60%配合品で43.87%でした。 ・亜鉛:トウモロコシ100%品(80%)と市販品(76.37%)で割合が高く、60%配合品(44.67%)で最も低くなりました。 著者らは、ひよこ豆に由来するフィチン酸や不溶性食物繊維が影響した可能性を指摘しています。

それでも、ひよこ豆を多く含む試料はもともとのミネラル含有量が多いため、カルシウムを除くと、消化後に溶け出したミネラルの量は多くなる傾向がありました。たとえばマグネシウムは、溶け出した割合に有意な差はありませんでした。しかし溶け出した量は、トウモロコシ100%品の14.91µg/gに対し、60%配合品では65.17µg/gでした。

でんぷんの分解は、どの試料でも消化の最初の2分間、つまり口での段階で大部分(60.95〜71.35%)が進みました。消化の終わりの時点で、トウモロコシ100%品のでんぷんはほぼすべて(約96%)分解されました。これに対し、ひよこ豆配合品では8割前後にとどまりました。推定グリセミック指数は、トウモロコシ100%品と市販品で高く、ひよこ豆60%配合品で最も低くなりました。ただし、30%と60%の配合品も値は100を上回っており、基準とした白パンより高いままでした。

研究が示すこと

著者らは、トウモロコシの一部をひよこ豆と米に置き換えると、スナックのたんぱく質、食物繊維、ミネラルの含有量が増え、栄養面が改善されたと結論づけています。たんぱく質の消化性は、配合品でやや低下しました。リン・マグネシウム・亜鉛が消化で溶け出す割合も同様です。ただし著者らは、もともとの含有量が多いことで、その分が補われたと報告しています。また、たんぱく質の消化性で補正したアミノ酸の評価値は、市販品で最も高くなりました。

でんぷんの消化については、ひよこ豆を加えることで分解がある程度抑えられました。しかし推定グリセミック指数は依然として高く、著者らはさらなる改良が必要だとしています。今回の結果は、試験管内の模擬消化に基づくものです。論文は、健康への直接の効果を評価するには、生体を用いた試験(in vivo試験)で確かめる必要があるとしています。

原著論文の著者・所属:Antonio L. García-Cordero(Área Académica de Química, Universidad Autónoma del Estado de Hidalgo, Ctra. Pachuca-Tulancingo Km 4.5 s/n, Col. Carboneras, Mineral de la Reforma 42183, Hidalgo, Mexico)、Ehira Romero-Castelán(Área Académica de Química, Universidad Autónoma del Estado de Hidalgo, Ctra. Pachuca-Tulancingo Km 4.5 s/n, Col. Carboneras, Mineral de la Reforma 42183, Hidalgo, Mexico)、Juana Fernández-López(IPOA Research Group, Institute for Agri-Food and Agro-Environmental Research and Innovation, Miguel Hernández University (CIAGRO-UMH), 03312 Orihuela, Alicante, Spain)、Fernando Díaz-Sánchez(Fritos TOTIS, C/Sur 4, 123, Tizayuca 43800, Hidalgo, Mexico)、Jose M. Lorenzo(Centro Tecnológico de la Carne de Galicia, Avda. Galicia nº 4, Parque Tecnológico de Galicia, 32900 San Cibrao das Viñas, Ourense, Spain; Área de Tecnoloxía dos Alimentos, Facultade de Ciencias, Universidade de Vigo, 32004 Ourense, Ourense, Spain)、Jose A. Rodriguez(Área Académica de Química, Universidad Autónoma del Estado de Hidalgo, Ctra. Pachuca-Tulancingo Km 4.5 s/n, Col. Carboneras, Mineral de la Reforma 42183, Hidalgo, Mexico)、Raquel Lucas-González(IPOA Research Group, Institute for Agri-Food and Agro-Environmental Research and Innovation, Miguel Hernández University (CIAGRO-UMH), 03312 Orihuela, Alicante, Spain)、Eva M. Santos(Área Académica de Química, Universidad Autónoma del Estado de Hidalgo, Ctra. Pachuca-Tulancingo Km 4.5 s/n, Col. Carboneras, Mineral de la Reforma 42183, Hidalgo, Mexico)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Antonio L. García-Cordero, Ehira Romero-Castelán, Juana Fernández-López, et al. Effect of the Replacement of Corn (Zea mays) by Chickpea (Cicer arietinum) and Rice (Oryza sativa) in Extruded Snacks on Protein Digestibility, Mineral Bioaccessibility and Estimated Glycemic Index. Life 2026-08-12. DOI: 10.3390/life16081322. 原著ライセンス:CC BY.