著者の所属・活動拠点の国は、エチオピアです。
掲載誌:Journal of Food Innovation, Nutrition, and Environmental Sciences
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
エチオピアでは、トウモロコシが国民の大半にとっての主食とされています。手に入りやすく安価で、さまざまな料理や加工品に使えることも特徴です。一方でこの国では、学齢期の子ども、妊娠中や授乳中の女性、高齢者などのあいだで、たんぱく質とエネルギーの不足や微量栄養素の不足が続いていると指摘されています。
研究チームは、トウモロコシが伝統的な食品や飲料、乳幼児の補完食(母乳に加えて生後6か月ごろから与える食事)にどう使われているかを整理しました。あわせて、工業製品としての利用、トウモロコシを使った食品開発の研究、貯蔵と食品安全の問題をまとめることを目的としています。
どのように調べたか
著者らは、既存の研究を一定の基準で集めて整理する系統的文献レビューの手法を用いました。Google Scholar、African Journals Online、Scopus、DOAJといったデータベースで、2012年から2021年に発表された論文を検索しています。検索には、インジェラ(発酵させた薄焼きパン)、無発酵の平焼きパン、補完食、スナック食品、伝統飲料など、トウモロコシに関連する語を使いました。
収集した47本の論文のうち、基準を満たした24本を検討の対象としています。必要に応じて、この期間外の報告や国際機関の報告書なども背景情報として参照しました。工業製品の生産状況については、工場の責任者への対面聞き取りで得た情報も示されています。
伝統食から加工食品まで
総説によると、トウモロコシはエチオピア各地の食文化に深く根づいています。インジェラ、キッタと呼ばれる無発酵の平焼きパン、粥、南部で食べられるクルクファやフォソセといった料理に使われるほか、テラ、アレキ、ボルデ、チェカといった伝統的な飲み物の原料にもなっています。
栄養面では、通常のトウモロコシに不足しがちな必須アミノ酸のリシンとトリプトファンを多く含む「高品質たんぱくトウモロコシ」が紹介されています。引用された研究によれば、これらの含有量は通常のトウモロコシより70〜100%多いとされます。国内の品種を比べた研究では、たんぱく質含量がおよそ9.7〜15.3%の幅で報告されました。黄色い品種にはカロテノイドが含まれていた一方、白い品種の一つでは検出されなかったとされています。
トウモロコシ粉に豆類、イモ類、野菜などを混ぜた「複合粉」を使う研究も多数まとめられています。たとえば、発芽させた高品質たんぱくトウモロコシと発芽ヒヨコマメ、オレンジ色の果肉のサツマイモ、テフを組み合わせた補完食用の粥では、たんぱく質、脂質、亜鉛、鉄の含量が高まり、粘りも低くなったと報告されています。高品質たんぱくトウモロコシとテフを半分ずつ使ったインジェラが、テフのみのものと同程度に好まれたという報告も紹介されています。
工業利用の面では、トウモロコシ粉、即席トウモロコシ粉、トウモロコシと大豆の混合粉、コーンフレーク、コーン油などを製造する企業が挙げられています。著者らは、こうした製品が国内のトウモロコシ製品市場を多様にし、経済的な機会を生んでいるとしています。ただし、トウモロコシ粉の製造業者はまだ少なく、年間生産量は国内の需要を大きく下回っているとも述べています。
貯蔵と安全性の課題
エチオピアの農家は、ゴッタやゴテラと呼ばれる伝統的な貯蔵設備のほか、袋、ポリプロピレン製の袋、地下の穴、金属製サイロなどでトウモロコシを保管しています。いずれも多くは常温での保管です。
安全面で特に問題になるのが、カビが作り出す有害物質であるマイコトキシン(カビ毒)です。その代表がアフラトキシンで、健康被害や経済的損失の原因になるとされています。引用された調査では、5つの地区で6〜7か月貯蔵されたトウモロコシから、アフラトキシンが平均14.7 ng/g、オクラトキシンが平均8.2 ng/g検出されました。総説はこの2種類について、許容上限を超える量が見つかっていると指摘しています。
この総説が示すこと
この総説は、エチオピアのトウモロコシが、伝統的な食文化、栄養を高めた食品の開発、工業製品の原料という複数の役割を担っていることを一つにまとめて示しています。同時に、貯蔵中のカビ毒という安全上の課題も浮き彫りにしています。著者らは、トウモロコシがこの国の食料安全保障と栄養不良の軽減に役立つ可能性を持つ作物だと結論づけています。
原著論文の著者・所属:Milkesa Feyera(Melkasa Agricultural Research center, P.O.box 436, Adama, Ethiopia)、Eressa Dasa(Food Science and Nutrition Research, Melkassa Agricultural Research Centre, Adama, Ethiopia)、Umer Asrat(Food Science and Nutrition Research, Melkassa Agricultural Research Centre, Adama, Ethiopia)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Milkesa Feyera, Eressa Dasa, Umer Asrat. Overview of Maize-Based Value-Added Foods in Ethiopia: Traditional Uses, Product Development, Industrial Applications, Storage, and Safety. Journal of Food Innovation, Nutrition, and Environmental Sciences 2026-08-01. DOI: 10.70851/jfines.2026.3(3).291.303. 原著ライセンス:CC BY.