著者の所属・活動拠点の国は、イランです。

掲載誌:Food Science & Nutrition

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

捨てられてきた「種」に着目した研究

ナツメヤシの実であるデーツは、果実の重さのおよそ1割を種が占めます。研究チームによると、デーツの種はデーツ加工業の主要な副産物で、大量に廃棄されています。一方で、栄養成分や、体内外で何らかの働きをもつと考えられる生理活性成分を含むため、食品に機能性をもたせる素材として活用できる可能性があると著者らは述べています。

この研究の目的は、カルテ(Kaluteh)という品種のデーツの種について、基本的な化学組成、脂肪酸の構成、総フェノール含量を調べることでした。あわせて、種を焙煎することや、成分を抽出するときの条件が、生理活性に関わる性質にどう影響するかを評価しました。フェノール類は植物に含まれる成分群で、抗酸化性との関わりで注目される物質です。

生の種の成分と脂肪酸

抄録によると、焙煎していない生の種は、炭水化物が約74.92%、脂質が9.30%、水分が8.45%、たんぱく質が6.21%でした。種の大部分を炭水化物が占めることになります。

脂肪酸の分析では、飽和脂肪酸のなかではラウリン酸が、不飽和脂肪酸のなかではオレイン酸が最も多いと報告されています。

抽出条件の最適化と焙煎の影響

研究チームは、応答曲面法と呼ばれる手法で抽出条件を検討しました。これは、複数の条件を組み合わせて変えながら、結果がどう変わるかを統計的に把握し、条件の最もよい組み合わせを探す方法です。検討した条件は、抽出温度、抽出時間、溶媒と試料の比率の三つです。

その結果、抽出温度を上げる、抽出時間を長くする、溶媒と試料の比率を高めることで、総フェノール含量と抗酸化活性がいずれも高まったと報告されています。総フェノール含量が最も高くなる条件は63℃、2.03時間、比率0.017 g/mLでした。抗酸化活性が最も高くなる条件は51℃、3時間、比率0.016 g/mLで、二つの指標で最適条件は少し異なっていました。

こうして最適化した条件では、焙煎した種の抽出物の総フェノール含量は1グラムあたり没食子酸換算で14.8ミリグラムでした。没食子酸換算とは、フェノール類の量を代表的な物質である没食子酸の量に置き換えて表す方法です。また、DPPHという試薬を使った抗酸化性の試験で、ラジカル消去率は98.53%と報告されています。これは、不安定な分子であるラジカルを抽出物がどれだけ打ち消せたかを示す値です。

焙煎によって種の水分は4.05%まで下がりました。脂肪酸の構成にも変化が見られましたが、焙煎後もオレイン酸とラウリン酸が主な脂肪酸であることは変わりませんでした。

研究が示すこと

著者らは、焙煎と抽出条件の最適化によって、カルテ種のデーツの種の生理活性に関わる性質と栄養価が大きく向上したと結論づけています。そのうえで、廃棄されがちなデーツの種が、天然の抗酸化物質の供給源や食品向けの機能性素材として活用できる可能性を示したとしています。

原著論文の著者・所属:Sedighe Moghbeli(Department of Food Materials and Process Design Engineering Gorgan University of Agricultural Sciences and Natural Resources Gorgan Iran)、Fatemeh Heidari‐Dalfard(Department of Food Science and Technology, Faculty of Agriculture University of Jiroft Jiroft Iran)、Elham Assadpour(Food Industry Research Co. Gorgan Iran; Food and Bio‐Nanotech International Research Center (Fabiano) Gorgan University of Agricultural Sciences and Natural Resources Gorgan Iran)、Mohammad Mahdi Shojaa‐Fard(Amir Kabir Borna Bam Company Bam Iran)、Seid Mahdi Jafari(Department of Food Materials and Process Design Engineering Gorgan University of Agricultural Sciences and Natural Resources Gorgan Iran; Halal Research Center of IRI, Iran Food and Drug Administration Ministry of Health and Medical Education Tehran Iran)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Sedighe Moghbeli, Fatemeh Heidari‐Dalfard, Elham Assadpour, et al. Roasting‐Induced Changes in the Chemical Composition, Fatty Acid Profile, and Bioactive Properties of Kaluteh Date Pits. Food Science & Nutrition 2026-10-29. DOI: 10.1002/fsn3.72479. 原著ライセンス:CC BY.