著者の所属・活動拠点の国は、アラブ首長国連邦、シンガポールです。
掲載誌:International Journal of Biological Macromolecules
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
3Dフードプリンターは、生地を「インク」として細いノズルから押し出し、層を重ねて立体的な食品を形づくる技術です。クッキーの場合、印刷した形が焼成中に広がったり崩れたりしやすいことが課題になります。
研究チームは、ナツメヤシの果実であるデーツから得た不溶性食物繊維(水に溶けない食物繊維、以下DF)を、3Dプリントクッキーの構造を補強する材料として使えるかを調べました。抄録では、この取り組みを食品廃棄物の有効活用につながる方法としても位置づけています。
何を調べたか
材料には、バルヒ、シーシ、ネガールという3品種のデーツから得たDFと、複数品種が混ざった産業副産物の搾りかす(IP)由来の繊維を用いました。これらを0、3、6、9%(重量比)の濃度で生地に加え、印刷用の生地と焼き上げたクッキーを比較しています。
評価したのは、生地の流れやすさや弾性といった性質(レオロジー)、焼成後に形がどれだけ保たれるか(寸法安定性)、そして顕微鏡レベルの内部構造です。
繊維の成分にも品種による違いがありました。バルヒとIPの繊維は、植物の細胞壁を硬くする成分であるリグニンが多く、一緒に含まれる水溶性の食物繊維は少なめでした。一方、ネガールとシーシの繊維はその逆の組成でした。
主な結果
生地の性質やクッキーの食感は、繊維の品種と濃度の両方によって変わりました。ネガールとシーシの繊維を使った生地は、バルヒやIPの繊維を使った生地より、弾性の強さを示す指標(G')が高く、同じ濃度での別の指標(tanδ)の結果とも整合していました。
繊維を多く加えると生地の色は濃くなり、著者らは繊維の組成や色素の影響を反映したものとしています。また、繊維の濃度が上がるほど生地は硬くなり、まとまりやすさ(凝集性)や弾力は低下しました。著者らは、より密な構造ができたためと説明しています。
焼き上げたクッキーは硬く割れやすい傾向があり、とくにバルヒの繊維を高濃度で加えたもので顕著でした。これに対し、ネガールの繊維を6%加えたクッキーはよりやわらかく、印刷した形を高い精度(100%)で保ちました。このことから研究チームは、焼成中にクッキーが広がるのを防ぐには6%が最も好ましい濃度だと示唆しています。
一方、9%では内部に層のすき間や剥がれが見られ、印刷が途切れていました。凝集性の低下ともろい構造が原因とされています。
研究が示すこと
この研究は、デーツの不溶性食物繊維が、品種と添加量を選ぶことで3Dプリントクッキーの形の保持や食感を調整する手がかりになりうることを示しています。多すぎると層が離れてしまうなど、適量の見極めが重要である点も明らかになりました。著者らは、食品廃棄物を活用する持続可能な方法として有望だとまとめています。
原著論文の著者・所属:Yunda Maymanah Rahmadewi(Department of Food Science, College of Agriculture and Veterinary Medicine, United Arab Emirates University, Al Ain, United Arab Emirates)、Muneeba Zubair Alam(Department of Food Science, College of Agriculture and Veterinary Medicine, United Arab Emirates University, Al Ain, United Arab Emirates)、Mohammed Tarique(Department of Food Science, College of Agriculture and Veterinary Medicine, United Arab Emirates University, Al Ain, United Arab Emirates)、Athira Ajith(Department of Food Science, College of Agriculture and Veterinary Medicine, United Arab Emirates University, Al Ain, United Arab Emirates)、Huang Dejian(Department of Food Science & Technology, National University of Singapore, 2 Science Drive 2, Singapore, 117542, Singapore)、Afaf Kamal-Eldin(Department of Food Science, College of Agriculture and Veterinary Medicine, United Arab Emirates University, Al Ain, United Arab Emirates)、Oni Yuliarti(Department of Food Science, College of Agriculture and Veterinary Medicine, United Arab Emirates University, Al Ain, United Arab Emirates; National Water and Energy Center (NWEC), United Arab Emirates University, Al-Ain, P.O. Box 15551, United Arab Emirates. Electronic address: [email protected])
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Yunda Maymanah Rahmadewi, Muneeba Zubair Alam, Mohammed Tarique, et al. Exploring the role of insoluble dietary fibre from date fruit (Phoenix dactylifera L.) in stabilizing the 3D cookie printing structure. International Journal of Biological Macromolecules 2026-10-01. DOI: 10.1016/j.ijbiomac.2026.155047. 原著ライセンス:CC BY.