著者の所属・活動拠点の国は、トルコです。

掲載誌:Food Science & Nutrition

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

ケフィアは、乳酸菌と酵母の働きで牛乳を発酵させた飲み物です。そこに植物由来の成分を加えて、機能性を持たせる試みがあります。ただし植物抽出物に含まれる成分は、酸化や温度・pHの変化、乳の成分との結びつきなどで性質が変わりやすく、加工や保存の間に働きが弱まることがあります。

研究チームが取り上げたのは、樹木ピスタシア・レンティスクス(Pistacia lentiscus)から採れる天然樹脂「マスティックガム」です。この樹脂には、フェノール化合物などの成分が含まれることが知られています。しかし、その抽出物を包み込んだ状態で発酵乳に加えたときの振る舞いは、まだ十分に調べられていませんでした。

そこで著者らは、海藻由来の多糖類であるアルギン酸でマスティックガム抽出物を包み込み(カプセル化)、包まないままの抽出物と比べました。目的は、抽出物をどちらの形で加えるかによって、ケフィアの酸味、水分の保ち方、色、抗酸化性、食感がどう変わるかを調べることです。

何を調べたか

研究チームはまず、粉末のマスティックガムを水に分散させ、溶け出した成分をろ過して水抽出物を作りました。この抽出物にアルギン酸ナトリウムを混ぜ、注射針から冷やした塩化カルシウム溶液へ一滴ずつ落とします。アルギン酸はカルシウムと反応するとゲルになるため、抽出物を閉じ込めた小さなビーズができます。

次に、牛乳に抽出物をそのまま、またはビーズの形で、それぞれ0.1%と0.5%の濃度で加えました。何も加えない対照を含めて5種類のケフィアを作り、冷蔵(4℃)で保存しています。保存1日目、7日目、14日目には、次の項目を測定しました。酸度とpH、遠心分離にかけたときに水分(ホエイ)をどれだけ保てるか、色、抗酸化性、総フェノール量、食感です。ケフィアの製造は、1週間の間隔をあけて2回、それぞれ独立に行われました。

主な結果

ビーズの平均直径は約3.0ミリでした。「封入効率」は約78%と報告されています。これは、ビーズに含まれるフェノール成分全体のうち、表面に付着している分を除いて、ビーズ内部に保持されている割合を示す値です。電子顕微鏡で観察すると、ビーズはおおむね球形で、表面はなめらかでした。目立つ割れや大きな崩れは見られませんでした。

冷蔵保存中は、どのケフィアでも酸度が上がり、酸性化が続いていることが確認されました。酸度の上昇が最も大きかったのは対照で、抽出物を加えた試料では上昇が比較的小さくなりました。水分を保つ力は、試料や保存日数によって異なりました。最も高い値を示したのは、14日目の、ビーズを0.1%加えた試料です。色は、試料の種類と保存期間の影響を受けました。ビーズを0.5%加えた試料では、保存中の色の変化が比較的小さかったと報告されています。

抗酸化性は、抽出物を加えたすべての試料で対照より高くなりました。同じ濃度で比べると、ビーズで加えた試料は保存期間を通じて、そのまま加えた試料より高い値を示しました。最も高かったのは、ビーズを0.5%加えた試料です。総フェノール量も、抽出物を加えた試料で対照より多くなりました。ただし、加える濃度を上げても一貫して増えるわけではありませんでした。また、ビーズとそのままの抽出物との差が統計的に明確だった場面は限られていました。

硬さや粘りなどの食感は、全体として、加えた形や保存日数による大きな差が見られませんでした。一部の試料では、特定の日に硬さや粘りが変化した例がありました。著者らは、その仕組みについてはさらに調べる必要があるとしています。

研究から見えること

この研究は、マスティックガム抽出物をアルギン酸のビーズに包んでケフィアに加えると、食感を大きく変えずに、保存中も抗酸化性を高い水準で保てる可能性を示しました。一方で著者ら自身は、慎重に解釈すべきだと述べています。カプセル化の効果は保存期間や調べた項目によって異なり、フェノール量などでは明確な差が限られていたためです。植物由来の成分を発酵乳に加える際、どのような形で加えるかが製品の性質に影響することを示した報告といえます。

原著論文の著者・所属:Özge Duygu Okur(Department of Food Engineering, Faculty of Engineering Zonguldak Bulent Ecevit University Zonguldak Turkey)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Özge Duygu Okur. Alginate‐Based Encapsulation of Pistacia lentiscus (Mastic Gum) Extract and Its Application in Functional Kefir: Physicochemical, Antioxidant, and Textural Properties. Food Science & Nutrition 2026-08-01. DOI: 10.1002/fsn3.72262. 原著ライセンス:CC BY.