著者の所属・活動拠点の国は、ペルー、ブラジルです。

掲載誌:Plant Foods for Human Nutrition

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

小麦のパスタに二つの粉を加える試み

パスタは手頃で調理しやすく、世界中で食べられています。一般的な小麦のパスタは、グルテンが作る弾力のある網目構造のおかげで、ゆでても形が崩れにくく、適度な歯ごたえを保ちます。一方で、主成分は炭水化物で、たんぱく質や食物繊維は多くありません。そのため、栄養価の高い素材を加えてパスタを作り替える研究が各地で進められています。ただし、別の素材を加えると、色や食感、ゆで時間、味の好ましさが変わることもあります。

研究チームが注目したのは、アンデス地域で栽培される豆の一種タルウィ(アンデス産ルピナス)と、亜麻の種子である亜麻仁です。著者らは、ルピナスは良質なたんぱく質やミネラルを、亜麻仁は食物繊維やオメガ3脂肪酸などの脂質を補える素材として位置づけています。しかし、二つを組み合わせたときに、栄養や機能性に関わる性質、パスタとしての品質、食べたときの評価がどう関係し合うのかについては、これまで知見が限られていました。そこで研究チームは、小麦粉の一部をルピナス粉と亜麻仁粉に置き換えたパスタについて、品質や食味を損なわない配合を探し出し、その配合を実際に作って確かめることを目的としました。

原料の粉と、配合を変えたパスタを比べる

研究チームはまず、小麦粉、ルピナス粉、亜麻仁粉の成分や色、粒の大きさを比べました。乾燥重量あたりでみると、ルピナス粉はたんぱく質(100グラムあたり約38.6グラム)と食物繊維(同約32.0グラム)が三つの中で最も多く、亜麻仁粉は脂質(同約35.3グラム)が最も多い結果でした。小麦粉は消化される炭水化物が最も多く、そのほかの成分は少なめでした。水に溶けるポリフェノール類の量は亜麻仁粉が最も多かった一方、ORACと呼ばれる試験管内の測定法で調べた抗酸化能はルピナス粉が最も高い値でした。また、ルピナス粉と亜麻仁粉は小麦粉より粒が粗く、著者らは、こうした違いが生地の吸水やグルテンの網目のでき方に影響しうると考察しています。

次に、二つの粉の置き換え量を組み合わせて変えた複数の生パスタを作り、色、ゆで時間、ゆでたときの重さの増え方と溶け出す成分の量、食感、ポリフェノール量、抗酸化能、食べた人の評価を調べました。そのうえで、置き換え量と各特性の関係を統計モデルで表し、条件を総合的に満たす配合を計算で求めました。

色・食感・抗酸化能・食味はどう変わったか

両方の粉を増やすほどパスタは暗い色になり、赤みが強まりました。この傾向は亜麻仁粉で特に強く、ルピナス粉の量が多いほど黄色みがはっきりする傾向もみられました。ゆで時間は6〜8分の範囲でした。ゆでたときに溶け出す成分の割合は1.04〜1.49%で、小麦だけのパスタよりわずかに多いものの、高品質なパスタの目安とされる6%未満を大きく下回りました。著者らは、ルピナスのたんぱく質と亜麻仁の粘質物(水を抱え込む粘りのある成分)がパスタの構造を保つのに役立った可能性を挙げています。食感については、置き換えたパスタの多くで、硬さや、切ったり割ったりするのに必要な力の測定値が小麦だけのものより低くなりました。研究チームは、これをグルテンが薄まった影響と、ルピナスや亜麻仁の成分が構造を支える働きとの釣り合いの結果と解釈しています。

機能性に関わる性質では、はっきりした違いが出ました。置き換えたパスタのポリフェノール量は乾燥重量100グラムあたり約273〜349ミリグラム(没食子酸換算)で、小麦だけのパスタ(約121ミリグラム)を大きく上回りました。ORACによる抗酸化能も、小麦だけのパスタの約15.5に対して約45.3〜63.1(単位はマイクロモル・トロロックス当量/グラム乾燥重量)となり、最も高い配合では約4.1倍でした。なお、これは試験管内での測定値です。

半ば訓練を受けた評価者による試食では、置き換えたパスタの評価は小麦だけのものよりやや下がりましたが、総合評価の平均点はおおむね6.3〜7.6の範囲に収まり、著者らは中程度から高い受け入れられ方だったと報告しています。置き換え量が多い配合では、色や食感の評価が下がる傾向がみられ、中程度の置き換えの方が好ましい結果になりやすいことが示されました。評価者から苦みや渋みの指摘はなく、著者らはこれをルピナスの苦み抜き処理が効いていたことを示す間接的な手がかりとしています。ただし、ルピナスや亜麻仁に含まれうる望ましくない成分の量は直接測っておらず、著者ら自身がこれを研究の限界として挙げています。

最適な配合と、その確認

計算の結果、最適とされた配合は、ルピナス粉12.0%、亜麻仁粉12.13%の組み合わせでした。研究チームがこの配合で実際にパスタを3回独立に作って測ったところ、色、ゆで特性、食感、抗酸化能のいずれでも、予測値と実測値のずれは10%未満でした。これにより、モデルが品質をよく予測できていることが確かめられたと報告しています。

この配合のパスタの成分を推定すると、乾燥重量あたりたんぱく質は約19.6%、食物繊維は約13.1%でした。乾燥パスタ80グラムを1食とすると、たんぱく質約15.6グラム、食物繊維約10.5グラムに相当します。著者らは、ペルーで販売されている一般的な小麦パスタ(100グラムあたりたんぱく質約12グラム、食物繊維約3グラム)と比べて、栄養面の構成が明らかに改善されていると述べています。

この研究は、小麦粉の一部をルピナス粉と亜麻仁粉に置き換えることで、たんぱく質や食物繊維、試験管内で測った抗酸化能を高めながら、ゆで特性や食味を許容できる範囲に保てる配合があることを示しました。同時に、置き換えすぎると色や食感の評価が下がることも明らかにしており、素材を「どれだけ加えるか」の釣り合いが大切であることを具体的な数値で示した研究といえます。

原著論文の著者・所属:Luz María Paucar-Menacho(Departamento Académico de Agroindustria y Agronomía, Facultad de Ingeniería, Universidad Nacional del Santa, Nuevo Chimbote, 02712, Peru. [email protected])、Alicia Lavado-Cruz(Departamento Académico de Agroindustria y Agronomía, Facultad de Ingeniería, Universidad Nacional del Santa, Nuevo Chimbote, 02712, Peru)、Rebeca Salvador-Reyes(Facultad de Ingeniería, Universidad Tecnológica del Perú, Lima, 150101, Peru)、Anggie Verona-Ruiz(Departamento Académico de Agroindustria y Agronomía, Facultad de Ingeniería, Universidad Nacional del Santa, Nuevo Chimbote, 02712, Peru)、John Gonzales-Capcha(Departamento Académico de Agroindustria y Agronomía, Facultad de Ingeniería, Universidad Nacional del Santa, Nuevo Chimbote, 02712, Peru)、Soledad Quezada-Berrú(Departamento Académico de Agroindustria y Agronomía, Facultad de Ingeniería, Universidad Nacional del Santa, Nuevo Chimbote, 02712, Peru)、Cesar Moreno-Rojo(Departamento Académico de Agroindustria y Agronomía, Facultad de Ingeniería, Universidad Nacional del Santa, Nuevo Chimbote, 02712, Peru)、Sander Moreira Rodrigues(Laboratório Integrado de Cereais e Lipídeos (LICEL), Instituto de Ciência e Tecnologia (ICT), Universidade Federal dos Vales do Jequitinhonha e Mucuri (UFVJM), Diamantina, 39100-000, Brazil)、Marcio Schmiele(Laboratório Integrado de Cereais e Lipídeos (LICEL), Instituto de Ciência e Tecnologia (ICT), Universidade Federal dos Vales do Jequitinhonha e Mucuri (UFVJM), Diamantina, 39100-000, Brazil. [email protected])

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Luz María Paucar-Menacho, Alicia Lavado-Cruz, Rebeca Salvador-Reyes, et al. Process Optimization and Validation of Functional Pasta Reformulated with Lupin and Flaxseed Flours: Impacts on Technological Quality, Bioactive Potential, and Sensory Attributes. Plant Foods for Human Nutrition 2026-08-10. DOI: 10.1007/s11130-026-01557-2. 原著ライセンス:CC BY.