著者の所属・活動拠点の国は、ナイジェリア、マレーシアです。
掲載誌:Scientific Reports
ライセンス: CC BY 4.0 対象: 公開論文 確認元: 論文PDF
捨てられがちな熟れすぎバナナに注目
バナナは世界で広く食べられている果物で、食物繊維やミネラル、ポリフェノールなどを含みます。一方、熟れすぎて皮が黒ずんだバナナは見た目が悪く商品価値が下がるため、捨てられることが少なくありません。研究チームは、熟れすぎたバナナにも栄養分や生理活性のある成分が残っている可能性があり、糖分が多いことから天然の甘味料の原料として活用できるのではないかと考えました。
著者らによると、マレーシアのバナナ研究はこれまで生産や輸出、皮の利用が中心でした。国内で栽培される品種同士を、栄養成分、物理化学的な性質、抗酸化性の面から総合的に比べた研究は限られていたといいます。そこで研究チームは、マレーシアの8種類のバナナ(タンドゥク、バトゥ、ナンカ、エマス、キャベンディッシュ、アワ、ルマッ・マニス、カパス)を熟れすぎの段階で使って甘味料を作り、その特徴を比べました。さらに、機械学習と、果実の大きさと果肉の量の関係を扱う解析を一つの枠組みにまとめた点を、この研究の新しさとしています。
甘味料の作り方と調べた項目
バナナはマレーシア東部ケランタン州の農園から入手されました。研究チームは果肉を重さの比で1対3の水と混ぜて均一にし、遠心分離とろ過で繊維分を取り除きました。こうして得た液体を60℃で16時間乾燥させ、濃縮したシロップ状のものを甘味料として分析に用いています。
調べた項目は多岐にわたります。果実、皮、果肉の重さ、甘味料の色(明るさなど)、水分、灰分(燃やした後に残るミネラル分)、脂質、たんぱく質、炭水化物、食物繊維、エネルギー量、ショ糖・ブドウ糖・果糖の量を測定しました。抗酸化性は2種類の試験で評価しています。DPPH法は、不安定な分子(ラジカル)を消去する働きを色の変化で測るもので、FRAP法は鉄イオンを還元する力を測るものです。いずれも試験管内で甘味料の性質を測る方法です。各品種は、世界の生産と貿易で中心的な品種であるキャベンディッシュを基準として統計的に比べられました。
データ解析には、多数の決定木と呼ばれる予測モデルを組み合わせて平均をとる機械学習手法「ランダムフォレスト」を用いました。成分や見た目などの特徴から抗酸化性を予測し、どの特徴が予測に重要かを順位づけるためです。また、果実全体の重さに対して果肉の重さがどう変わるかを、べき乗の式(アロメトリー解析)で表しました。
品種によって成分も抗酸化性も大きく異なった
論文は、品種によって甘味料の物理化学的な性質と抗酸化性に有意な差があったと報告しています。果実の大きさでは、タンドゥクが最も重く(平均約426グラム)、果肉の量も最大でした。一方、バトゥは全体として最も軽い品種でした。
成分を見ると、タンドゥクの甘味料は食物繊維が最も多く(100グラムあたり8.89グラム)、この差はキャベンディッシュと比べて統計的にも有意でした。ルマッ・マニスは灰分と粗繊維が、カパスは炭水化物(100グラムあたり71.99グラム)が、エマスはたんぱく質が最も多い結果でした。糖については、ナンカが総糖量とブドウ糖量で最も高い値を示しました。
抗酸化性では、キャベンディッシュがDPPH法とFRAP法の両方で最も高い値を示し、エマスがそれに次ぎました。エマスは、試験したどの量でもキャベンディッシュと統計的な差が見られず、著者らは抗酸化性がキャベンディッシュに最も近い品種だとしています。反対に、ナンカはDPPH法で最も低い値でした。また、どの甘味料でも、試験に使う量を増やすほど抗酸化性の値は高くなりました。
ランダムフォレストの解析では、品種、エネルギー量、炭水化物、食物繊維、皮の重さ、たんぱく質、色の明るさ、果肉と皮の重さの比、粗繊維が、甘味料ごとの抗酸化成分のばらつきに関わる主要な要因として挙げられました。これはモデルの予測にとって重要だった特徴を示すもので、それぞれが抗酸化性を直接生み出していることを示したものではありません。アロメトリー解析では、果肉の重さと果実全体の重さの間に、べき乗の式でよく表せる強い関係が見られました。
品種ごとの特徴を知る手がかりに
この研究は、同じ熟れすぎのバナナから作った甘味料でも、品種によって栄養成分、糖の組成、抗酸化性が大きく異なることを示しました。原料として捨てられがちな熟れすぎバナナを甘味料に活用する際には、どの品種を使うかで性質が変わることを、具体的なデータで示した報告といえます。
原著論文の著者・所属:Olayemi Joshua Ibidoja(Department of Mathematical Sciences, Faculty of Science, Federal University Gusau, Gusau, Nigeria)、Wan Rosli Wan Ishak(School of Health Sciences, Universiti Sains Malaysia, 16150, Kubang Kerian, Kelantan, Malaysia)、Majid Khan Majahar Ali(School of Mathematical Sciences, Universiti Sains Malaysia, 11800 USM, Penang, Malaysia)、Yee Vern Ng(School of Health Sciences, Universiti Sains Malaysia, 16150, Kubang Kerian, Kelantan, Malaysia)、Nurraihana Hamzah(School of Health Sciences, Universiti Sains Malaysia, 16150, Kubang Kerian, Kelantan, Malaysia)、Muhamad Syahir Fitri Mohd Zaini(School of Health Sciences, Universiti Sains Malaysia, 16150, Kubang Kerian, Kelantan, Malaysia)、Mohamad Haziq Haikal Azhar(School of Health Sciences, Universiti Sains Malaysia, 16150, Kubang Kerian, Kelantan, Malaysia)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Olayemi Joshua Ibidoja, Wan Rosli Wan Ishak, Majid Khan Majahar Ali, et al. Integrated allometric scaling, physicochemical profiling, and random forest modelling for predicting antioxidant compounds in sweeteners from overripe Malaysian bananas. Scientific Reports 2026-10-08. DOI: 10.1038/s41598-026-71027-x. 原著ライセンス:CC BY.