著者の所属・活動拠点の国は、マレーシアです。
掲載誌:Tikrit Journal for Agricultural Sciences
ライセンス: CC BY 4.0 対象: 公開論文 確認元: 論文PDF
見た目では区別しにくい二つの卵
マレーシアでは、地鶏(ビレッジチキン)の卵が高く評価されています。栄養面で優れ、自然な方法で生産されていると受け止められているためです。ただし著者らによると、地鶏卵は大きさや殻の色が、市販の小ぶりな卵(重さ50〜54.9グラムのグレードD)と似ています。そのため見た目だけでは区別しにくく、取り違えが起きたり、卵の真正性や品質の評価に不安が生じたりする可能性があります。
そこで研究チームは、地鶏卵と市販卵について、物理的・化学的な性質、脂肪酸の組成、コレステロール量を調べました。さらに、多数の測定値をまとめて解析し、両者の成分にどのような違いがあるのかを明らかにしようとしました。
8つのサンプルを多角的に測定
地鶏卵は、マレーシアのセランゴール州にある4つの農場から集めました。各農場から45個を無作為に選び、合計180個です。市販卵は、スーパーマーケット2店と地元の生鮮市場2か所から45個ずつ、合計180個を集めました。仕入れ先や生産農場が異なる卵を選び、試料が多様になるよう配慮しています。こうして地鶏卵4サンプルと市販卵4サンプル、計8サンプルを比較しました。
測定項目は多岐にわたります。物理的な性質としては、重さ、形の丸さを示す指標、殻の厚さ、殻の色(明るさや色味)を測りました。あわせて、卵白の粘り気と「ハウユニット」も測定しています。ハウユニットは、卵白の盛り上がり具合から内部品質を評価する指標です。化学的な性質としては、卵白と卵黄それぞれについて、水分、灰分(ミネラル分の目安)、たんぱく質、脂肪、炭水化物、pHを調べました。さらに、脂肪酸の組成とコレステロール量も分析しました。
得られた多数のデータは、「ケモメトリクス」と呼ばれる統計的手法でまとめて解析しました。用いた手法は二つです。一つは、多くの変数を少数の軸に集約してサンプル同士の位置関係を示す主成分分析です。もう一つは、似たサンプル同士をグループに分けるクラスター分析です。
大きさ・殻・脂肪酸に違いが見られた
市販卵は全体に重く、卵全体に占める卵白の割合も高い結果でした。卵白の割合は、市販卵で60.86〜65.34%、地鶏卵で50.94〜58.08%です。一方、地鶏卵は卵黄の割合が高めでした。殻は市販卵のほうが概して厚い結果でした。殻の色は、地鶏卵が統計的に有意に明るく、主に白っぽい殻だったのに対し、市販卵は茶色の殻でした。卵白の粘り気、ハウユニット、卵の丸さを示す指標には、サンプル間で統計的に有意な差は見られませんでした。
脂肪酸の組成では、はっきりした違いが報告されています。飽和脂肪酸の割合は、市販卵が41.85〜44.22%、地鶏卵が35.12〜37.22%で、市販卵のほうが高い値でした。反対に、一価不飽和脂肪酸の割合は、地鶏卵が41.87〜50.88%、市販卵が28.29〜37.44%で、地鶏卵のほうが高い値でした。著者らは結論の中で、市販卵ではオメガ3を含む多価不飽和脂肪酸の割合が高かったと報告しています。また、コレステロール量は地鶏卵のほうが有意に多かったとしています。
すべての測定値をまとめた主成分分析では、市販卵のサンプルがすべて地鶏卵のサンプルから明確に分かれました。クラスター分析でも、サンプルは地鶏卵と市販卵の二つのグループに分類されました。また、地鶏卵の1サンプルと市販卵の1サンプルは、それぞれのグループの中で平均的な性質を示す位置にありました。
成分を組み合わせて卵を評価する手がかり
この研究は、見た目が似ていて区別しにくい地鶏卵と市販卵の間に、測定可能な違いがあることを示しました。違いが見られたのは、殻の性質、卵白・卵黄の割合、脂肪酸の組成などです。著者らは、物理的・化学的性質、脂肪酸、コレステロールの測定を多変量解析と組み合わせることで、両者の特徴の理解が深まったとしています。そして、卵の品質評価や分類に役立つ知見が得られたと述べています。
原著論文の著者・所属:Nur’ain Sharifuddin(Laboratory of Food Safety and Food Integrity, Institute of Tropical Agriculture and Food Security, Universiti Putra Malaysia, 43400 UPM Serdang, Selangor Darul Ehsan, Malaysia)、Nur Aqillah Yunus(Faculty of Food Science and Technology, Universiti Putra Malaysia, 43400 UPM Serdang, Selangor Darul Ehsan, Malaysia)、Peir Shinn Hew(Laboratory of Food Safety and Food Integrity, Institute of Tropical Agriculture and Food Security, Universiti Putra Malaysia, 43400 UPM Serdang, Selangor Darul Ehsan, Malaysia)、Rashidah Sukor(Laboratory of Food Safety and Food Integrity, Institute of Tropical Agriculture and Food Security, Universiti Putra Malaysia, 43400 UPM Serdang, Selangor Darul Ehsan, Malaysia)、Nornajibah Kamarudin(Laboratory of Food Safety and Food Integrity, Institute of Tropical Agriculture and Food Security, Universiti Putra Malaysia, 43400 UPM Serdang, Selangor Darul Ehsan, Malaysia)、Nuzul Noorahya Jambari(Laboratory of Food Safety and Food Integrity, Institute of Tropical Agriculture and Food Security, Universiti Putra Malaysia, 43400 UPM Serdang, Selangor Darul Ehsan, Malaysia)、Hasliza Abu Hassim(Faculty of Veterinary Medicine, Universiti Putra Malaysia, 43400 UPM Serdang, Selangor Darul Ehsan, Malaysia.)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Nur’ain Sharifuddin, Nur Aqillah Yunus, Peir Shinn Hew, et al. Physicochemical Properties, Fatty Acid Composition, and Cholesterol Levels in Malaysian Village Chicken and Commercial Chicken Eggs: A Chemometric Approach for Comprehensive Egg Quality Assessment. Tikrit Journal for Agricultural Sciences 2026-09-01. DOI: 10.25130/tjas.26.3.21. 原著ライセンス:CC BY.