著者の所属・活動拠点の国は、トルコです。
掲載誌:Archives animal breeding/Archiv für Tierzucht
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
家畜の飼料に植物由来の精油を加えると、食いつきや消化の働きが良くなり、発育や飼料の効率が上がる可能性があるとして関心を集めています。ただし、これまでの研究では効果が一貫せず、成績が改善しなかった例も報告されています。
ラベンダー精油については、飼料や飲み水に混ぜて与える方法での研究が中心でした。子羊に直接口から与えたときに、血液の成分や筋肉の脂肪酸がどう変わるかについての情報は乏しいままでした。そこで研究チームは、ラベンダー(Lavandula angustifolia)の精油を子羊1頭ずつに毎日直接経口投与し、発育成績、血清の生化学的な値、筋肉の脂肪酸組成への影響を調べました。著者らは、抗菌薬に頼らない成長促進の代替手段になりうるかという観点も示しています。
どのように調べたか
対象は生後12週の雄のカンガル・アッカラマン種の子羊36頭で、開始時の平均体重は約27キログラムでした。体重に偏りが出ないよう12頭ずつ3群に分け、精油を与えない対照群、1頭1日あたり1000ミリグラムを与える群、2000ミリグラムを与える群としました。精油は毎朝の給餌前に、目盛り付きの注射筒で口から1回与えました。すべての群に同じ飼料を自由に食べさせ、1頭ずつ個別の囲いで飼育して、各個体の摂取量を測れるようにしました。
試験は7日間の慣らし期間の後、56日間行われました。研究チームは定期的に体重を測り、増体量、飼料摂取量、飼料要求率(体重を1増やすのに必要な飼料の量)を算出しました。試験終了時には採血して血清中のさまざまな成分を測定し、さらに各群6頭の背中の筋肉(ロース部分)を採取して、含まれる脂肪酸の割合を分析しました。
主な結果
最終体重、1日あたりの増体量、飼料摂取量、飼料要求率のいずれにも、群間で統計的に意味のある差はみられませんでした。1000ミリグラム群では最終体重と増体量が数値の上では対照群より高めでしたが、有意な差ではありませんでした。
血清の成分では、アミラーゼとアルカリホスファターゼという2種類の酵素の値に群間で有意な差がみられました。一方、尿素窒素、コレステロール、中性脂肪、肝臓関連の酵素、たんぱく質、血糖などには有意な差はありませんでした。中性脂肪とLDLコレステロールは投与群で数値上やや低めでしたが、統計的な差はなく、すべての群で成長期の子羊の基準範囲内でした。著者らは、これを脂質を下げる効果の証拠とはみなせず、通常の個体差の範囲と考えられるとしています。
筋肉の脂肪酸では、精油を与えた群でシス-11-エイコセン酸とアラキジン酸の割合が対照群より高く、シス-10-ヘプタデセン酸の割合は低くなりました。ただし、これらはいずれも量の少ない長鎖脂肪酸の小さな変化です。著者らは、肉の栄養価が全体として向上したことを意味するものではないと述べています。特にアラキジン酸は飽和脂肪酸であり、人の健康にとって好ましい変化とは位置づけていません。
この研究が示すこと
この研究では、ラベンダー精油を1日1000ミリグラムまたは2000ミリグラム子羊に直接与えても、発育や飼料の効率は向上も悪化もせず、血液成分にも全体として大きな変化はみられませんでした。筋肉の脂肪酸にはごく一部で変化が生じましたが、その栄養的な意味は限られるとされています。
研究チームは、胃の中の発酵の状態を測っていないため、これらの変化がどのような仕組みで起きたのかは分かっていないとしています。精油の効果をめぐっては報告が分かれていますが、この試験の条件では、成長促進の効果は確認されず、目立った悪影響もみられなかったという結果になりました。
原著論文の著者・所属:Abdullah Özbilgin(Sivas Cumhuriyet Üniversitesi (Sivas, Türkiye))、Halil İbrahim Toprak(Ministry of Agriculture and Forestry of the Republic of Turkey, Samsun Havza District Agricultural Directorate, Samsun, Türkiye)、Ömer Kayir(Hitit University Scientific and Technical Application and Research Center, Çorum, Türkiye)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Abdullah Özbilgin, Halil İbrahim Toprak, Ömer Kayir. Effects of oral administration of lavender ( Lavandula angustifolia ) essential oil on growth performance, serum biochemistry and muscle fatty acid profile in Kangal Akkaraman lambs. Archives animal breeding/Archiv für Tierzucht 2026-10-22. DOI: 10.5194/aab-69-595-2026. 原著ライセンス:CC BY.