著者の所属・活動拠点の国は、ナイジェリア、カナダ、南アフリカです。

掲載誌:International Journal of Food Science & Technology

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

超加工食品は、これまでの多数の疫学研究で、心血管疾患による死亡や2型糖尿病など、さまざまな健康上の不利益との関連が報告されてきました。ただし、そうした関連の背景に食品の栄養面でどのような違いがあるのかは、大規模にはまだ十分に調べられていないと研究チームは指摘しています。

栄養学では、食品は含まれる栄養素の単純な足し算ではなく、成分どうしが組み合わさって働くという考え方が広く受け入れられています。著者らはこの考え方を踏まえ、個々の栄養素の量だけでなく、食品の中で栄養素同士がどのように一緒に現れるかという「共起の構造」に注目しました。研究の狙いは、工業的な加工の度合いが異なる食品の間でこの構造がどう違うのか、またその違いを機械学習で見分けられるのかを確かめることです。

何をどのように調べたか

研究チームは、米国農務省(USDA)が公開している2つの食品成分データベースを使い、UPFNetと名付けた分析の枠組みを構築しました。食品の加工度は、国際的に用いられるNOVA分類に従って4つのグループに分けました。NOVA 1は未加工または最小限の加工をした食品、NOVA 4は工業的な工程や添加物を用いて作られる超加工食品です。分類は、食品の説明文に含まれるキーワードをもとに自動で割り当てる方法で行い、最終的に2万2481品目が分析対象となりました。このうちNOVA 1は1万3707品目、NOVA 4は2966品目です。

分析ではまず、33種類の栄養素について、NOVA 1とNOVA 4の食品の典型的な含有量を比べました。次に、栄養素の組み合わせごとに、ある栄養素が多い食品では別の栄養素も多い(または少ない)という傾向がどの程度あるかを計算し、一定以上の強さの関係を線で結んだ「栄養素のネットワーク」をグループ別に作りました。さらに、栄養成分のデータだけから食品がNOVA 1かNOVA 4かを判別する機械学習モデルを作り、どの栄養素が判別に大きく効いているかも調べました。

主な結果

NOVA 4の食品では、NOVA 1と比べて多くの栄養素の含有量が少なく、ビタミンCは85.7%、水分は81.8%、ビタミンB12は81.2%、たんぱく質は63.4%少ないと報告されています。33種類のうち27種類で、統計的に意味のある差が認められました。一方、ナトリウムは約450%多く、炭水化物も大幅に多い結果でした。

栄養素のネットワークにも大きな違いが見られました。NOVA 1の食品では栄養素どうしを結ぶ線が249本あったのに対し、NOVA 4では162本にとどまり、34.9%少なくなっていました。また、ネットワークの中心となる栄養素も入れ替わっていました。NOVA 1では食物繊維が多くの栄養素をつなぐ中心的な位置にあり、ビタミンCやビタミンK、葉酸、カリウム、マグネシウムと強く結びついていました。著者らは、植物の細胞壁などで食物繊維とビタミンやミネラルが一緒に存在することを反映していると解釈しています。これに対しNOVA 4では水分が中心となり、食物繊維の中心性は大きく下がりました。研究チームは、粉末、飲料、ソース、調理済み食品といった製品の形態を水分量が左右するという、製造上の事情を反映したものと考えています。

機械学習による判別では、勾配ブースティングという手法のモデルが、判別性能の指標であるAUROC(1に近いほど正確で、0.5は当て推量と同程度)で0.9848、正解率94.2%を示し、検証を繰り返しても成績のばらつきはごく小さいものでした。判別に大きく寄与していた栄養素は、エネルギー、水分、炭水化物、ナトリウム、たんぱく質の5つで、著者らは、これがネットワーク分析で見られた変化とも一致していると述べています。

この研究が示すこと

著者らは、工業的な加工が食品に与える影響は、個々の栄養素が減ることにとどまらず、栄養素が互いに結びついて存在する構造そのものの変化にまで及んでいると結論づけています。超加工食品の栄養素ネットワークは、自然な食品のネットワークが単に小さくなったものではなく、別の原理で組み立てられたものだというのが研究チームの見方です。

なお、この研究は食品成分データベース上でグループ間の違いを比べたもので、健康への影響を直接調べたものではありません。また、加工度の分類は説明文のキーワードに基づく近似であり、一部の食品が誤って分類されている可能性があることや、扱った33種類の栄養素が食品に含まれる化学成分のごく一部であることを、著者ら自身が限界として挙げています。そのうえでこの研究は、食品を栄養素のリストとしてではなく、成分同士の関係を持つ一つの仕組みとして捉え、その違いを数値で示そうとした試みといえます。

原著論文の著者・所属:Oluwaseun E Agboola(Damsem Scientific Laboratory and Research , Ado-Ekiti 360001 ,; Institute for Drug Research and Development, S.E. Bogoro Centre, Afe Babalola University , P.M.B 5454, Ado-Ekiti 360001 ,)、Zainab A Ayinla(Department of Biology, University of Waterloo , Waterloo, ON N2L 3G1 ,)、Samuel S Agboola(Department of Pharmacology and Toxicology, College of Pharmacy, Afe Babalola University , Ado-Ekiti 360001 ,)、Omotola M Fajana(Institute for Drug Research and Development, S.E. Bogoro Centre, Afe Babalola University , P.M.B 5454, Ado-Ekiti 360001 ,)、Olaposi I Omotuyi(Department of Pharmacology and Toxicology, College of Pharmacy, Afe Babalola University , Ado-Ekiti 360001 ,; Institute for Drug Research and Development, S.E. Bogoro Centre, Afe Babalola University , P.M.B 5454, Ado-Ekiti 360001 ,)、Abel Kolawole Oyebamiji(Department of Industrial Chemistry, University of Ilesa , Ilesa, Osun State ,)、Olutosin Samuel Ilesanmi(Department of Biochemistry, Faculty of Basic Medical Sciences, Achievers University , Owo, Ondo State ,)、Babatunji E Oyinloye(Biotechnology and Structural Biology (BSB) Group, Department of Biochemistry and Microbiology, University of Zululand , KwaDlangezwa 3886 ,; Institute for Drug Research and Development, S.E. Bogoro Centre, Afe Babalola University , P.M.B 5454, Ado-Ekiti 360001 ,; Phytomedicine and Molecular Drug Discovery Laboratory (PMDDL), Department of Biochemistry, Faculty of Life Sciences, Federal University Oye-Ekiti , Oye-Ekiti 371104 ,)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Oluwaseun E Agboola, Zainab A Ayinla, Samuel S Agboola, et al. Artificial intelligence detects the dismantling of nutrient co-occurrence architecture by ultra-processing: explainable machine learning and network analysis of 22,481 usda-classified foods. International Journal of Food Science & Technology 2026-10-19. DOI: 10.1093/ijfood/vvag222. 原著ライセンス:CC BY.