掲載誌:Artefactum
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
毎日の食事は、歯や歯ぐき、口の中に住む細菌の集まり(口腔細菌叢)の状態に関わっていると考えられています。著者らは、栄養が虫歯(う蝕)や歯周病の予防と管理にどのように関わるのかについて、既存の研究を整理しました。
論文によると、栄養の重要性は認識されていても、歯科の現場では治療の一部として食事指導を行う必要性がまだ軽視されがちです。そこで著者らは、食事と口の健康の結びつきを歯科と栄養の両面からとらえ、予防や教育に役立つ視点を示すことを目指しました。
どのように調べたか
この研究は、新たに人を対象とした調査を行ったものではなく、既存の論文を一定の手順で集めて検討する系統的文献レビューです。著者らは文献選定の国際的な指針であるPRISMAに沿い、PubMed、Scopus、Web of Science、SciELOといった論文データベースを、ポルトガル語と英語の検索語で調べました。対象は2015年から2026年に発表された論文です。
査読を経ていること、栄養と口の健康の関係を扱っていること、人を対象とした研究であることなどを条件に選別し、最終的に46本の論文を詳しく分析しました。結果は「栄養素が口の健康に与える影響」「超加工食品の摂取がもたらす影響」「予防策と実践的な提言」の三つの柱に分けて整理されています。
主な報告内容
まず砂糖について、論文は虫歯ができる仕組みを紹介しています。糖質の多い食事は、虫歯の原因菌として知られるミュータンス菌などを増やし、歯の表面に細菌の膜(バイオフィルム、いわゆる歯垢)を作りやすくします。細菌が糖を分解して出す酸によって口の中が酸性に傾き、エナメル質ではpH5.5未満、その内側の象牙質ではpH4.5未満で歯のミネラルが溶け出すとされます。特に砂糖の主成分であるショ糖は、細菌が歯に付着しやすくなる物質の生成を促し、ミュータンス菌の病原性を高めると説明されています。
引用された研究の一つでは、ショ糖の摂取が多い子どもで虫歯の発生が9倍、ミュータンス菌が優勢なバイオフィルムの形成が10倍以上になったと報告されています。一方、その研究では、ショ糖の多量摂取と子どもの過体重との直接の関係は確認されませんでした。また論文は、ブラジルの人々の砂糖摂取量が平均で年約30kg(1日約80g)にのぼり、世界保健機関(WHO)の推奨を上回っているというデータも紹介しています。著者らは、砂糖の1日摂取量が多い区分ほど虫歯の有病率が高くなる関係を、独自にまとめた表で示しています。
栄養素については、カルシウム、リン、ビタミンDが歯のエナメル質の形成と骨密度の維持に欠かせないと整理されています。カルシウムを十分にとっている人では虫歯や歯の破折が少なく、乳製品、ナッツ類、緑の葉物野菜を多く含む食事は虫歯の少なさと関連していたと報告されています。ビタミンDは免疫の調整を通じて歯を支える組織の健康にも関わり、ビタミンDが十分な集団では歯周炎が少ない一方、不足すると歯周炎のリスク上昇と関連するとされます。さらに、果物や野菜に含まれる抗酸化物質や、コラーゲンの合成を助けるビタミンCは、歯ぐきの炎症を抑える方向に働くと述べられています。
超加工食品については、砂糖や酸を多く含む清涼飲料や菓子が虫歯の原因菌を増やしやすく、しかも栄養価が低いため歯や歯ぐきの維持に必要な栄養を補えない点が問題とされています。甘い飲み物を頻繁にとることは、特に子どもや若者でエナメル質のミネラルが失われやすいことと関連していたと報告されています。
研究が示す意味
著者らは、口の健康と食事の関係は砂糖を控えることだけにとどまらず、必要な栄養素を十分にとることが虫歯の予防に加えて歯を支える組織の強化や炎症の軽減にもつながるとまとめています。そのうえで、自然な食品を選ぶための食育、甘い飲み物への課税や啓発といった公共政策、そして歯科医師と栄養士が連携して患者に助言する分野横断的な取り組みが、口の病気の負担を減らすために重要だと結論づけています。
著者:Ana Livia Amaral Ferreira Finocchio、Aldinete Amaral Ferreira Finocchio、Fabio Pereira Soncela、Leidy Cristiane Amaral、Marco Antonio Ferreira Finocchio
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Ana Livia Amaral Ferreira Finocchio, Aldinete Amaral Ferreira Finocchio, Fabio Pereira Soncela, et al. THE RELATIONSHIP BETWEEN PROPER NUTRITIOUS NUTRITION AND PATIENT ORAL HEALTH. Artefactum 2026-10-09. DOI: 10.23900/artefactum.v25i10.4588. 原著ライセンス:CC BY.