著者の所属・活動拠点の国は、トルコです。

掲載誌:Foods

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

食用花は、料理の素材として使われるだけでなく、多くの文化で薬用植物としても利用されてきました。ビタミンやミネラル、アミノ酸、ポリフェノールの一種であるフェノール化合物などを含む素材として、関心を集めています。ただし著者らによると、これまでの研究の多くは、食べる前の花に含まれる成分を調べたものでした。成分が体内で意味を持つかどうかは、含まれる量だけでなく、消化の過程でどれだけ残り、腸で吸収されうる状態になるかにも左右されます。この性質は「バイオアクセシビリティ」と呼ばれます。

研究チームは、ジャスミン(Jasminum officinale)、ウスベニタチアオイ(Althaea officinalis、マーシュマロウとも呼ばれます)、ニオイスミレ(Viola odorata)の花を比較しました。論文によれば、これら3種では、消化に伴う個々のフェノール化合物の変化やアミノ酸組成の変化はこれまで報告されていませんでした。成分の組み合わせが異なる花では、消化中の変化の仕方も種類によって違うのではないか、というのが研究チームの仮説です。

何を調べたか

研究チームは、乾燥させて粉末にした花について、たんぱく質・脂質・灰分・炭水化物といった基本成分と、カルシウムやカリウムなどのミネラルを測定しました。さらに、エタノール水溶液と超音波を使って成分を取り出した抽出物について、フェノール化合物の総量、個々のフェノール化合物、抗酸化力を調べ、アミノ酸組成も測定しました。

消化の影響は、国際的に標準化された試験管内の模擬消化法「INFOGEST」で調べました。口、胃、小腸での消化を、消化液や酵素、温度、pHを再現した条件で順に進める方法です。小腸の段階では透析膜の袋を使い、膜を通り抜けた分画を分析しました。消化前の値と比べて、この分画にどの程度の成分が回収されたかを相対的な指標として表しています。著者らは、この指標は成分の出入りを厳密に計算した値ではなく、比較のための目安だと説明しています。

あわせて、試験管内の実験で、抽出物が5種類の酵素の働きをどの程度抑えるかを調べました。対象は、糖の分解に関わるα-アミラーゼとα-グルコシダーゼ、神経伝達物質の分解に関わるアセチルコリンエステラーゼとブチリルコリンエステラーゼ、炎症に関わる物質の生成に関わるリポキシゲナーゼです。さらに、大腸がん由来のCaco-2細胞、膵臓がん由来のMiaPaCa-2細胞、HEK-293細胞を培養し、抽出物を加えたときの細胞の生存への影響も調べました。

主な結果

基本成分の量は花の種類によって異なりました。たんぱく質は3.80〜4.74%、脂質は2.55〜4.35%、灰分は9.57〜11.88%でした。炭水化物は他の成分を差し引いて求めた値で、69.40〜79.94%でした。ミネラルではカルシウムとカリウムが多く、特徴は種類ごとに異なりました。ジャスミンはマグネシウム、ウスベニタチアオイはカルシウムと亜鉛、ニオイスミレはリン、鉄、マンガンを多く含んでいました。

消化前の段階では、フェノール化合物の総量と抗酸化力はジャスミンが最も高く、総量は100グラムあたり884.00ミリグラム(没食子酸換算)でした。ジャスミンのフェノール化合物のバイオアクセシビリティの指標は60.89%でした。研究チームは、模擬消化によってフェノール化合物の量と抗酸化力は全体として低下したと報告しています。個々の成分では、ニオイスミレがプロトカテク酸、カテキン、クロロゲン酸、フェルラ酸、エラグ酸を特に多く含んでいました。

酵素の働きを抑える試験では、α-グルコシダーゼ、α-アミラーゼ、アセチルコリンエステラーゼ、リポキシゲナーゼのいずれでも、ウスベニタチアオイの抽出物が最も強い抑制を示しました。ブチリルコリンエステラーゼに対しては、ジャスミンの抽出物が最も強い抑制を示しました。培養細胞の試験では、抽出物はCaco-2細胞とMiaPaCa-2細胞に対して種類ごとに異なる細胞毒性を示し、HEK-293細胞への影響はこれらと比べて弱いものでした。

研究から分かること

この研究は、食用花の栄養成分や生理活性に関わる成分の特徴が、花の種類によって異なることを示しました。また、模擬消化の実験から、食べる前に含まれていたフェノール化合物や抗酸化力が、消化の過程で全体として低下することも報告されました。

酵素や細胞を使った結果はいずれも試験管内の実験によるもので、人が花を食べたときの効果を直接示すものではありません。著者らはこれらの結果が、食用花を複数の機能を持つ食品素材としてさらに調べることを後押しするものだと述べています。

原著論文の著者・所属:Zehra Yaman(Department of Nutrition and Dietetics, Hamidiye Faculty of Health Sciences, University of Health Sciences, 34668 İstanbul, Türkiye)、Kubra Feyza Erol(Department of Nutrition and Dietetics, Hamidiye Faculty of Health Sciences, University of Health Sciences, 34668 İstanbul, Türkiye)、Gozde Kutlu(Department of Gastronomy and Culinary Arts, Faculty of Fine Arts, Design and Architecture, Ankara Medipol University, 06050 Ankara, Türkiye)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Zehra Yaman, Kubra Feyza Erol, Gozde Kutlu. Comparative Assessment of the Nutritional, Phenolic, and Amino Acid Profiles, INFOGEST-Based Gastrointestinal Bioaccessibility, and Biological Activities of Althaea officinalis, Jasminum officinale, and Viola odorata. Foods 2026-10-08. DOI: 10.3390/foods15193561. 原著ライセンス:CC BY.