著者の所属・活動拠点の国は、マレーシアです。

掲載誌:Tikrit Journal for Agricultural Sciences

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

硬い水牛肉をどう柔らかくするか

水牛の肉は、牛肉と比べてたんぱく質が多く脂肪が少なく、栄養面で優れた肉として知られています。一方で、硬くて噛みごたえが強いことが加工肉づくりの大きな課題とされてきました。論文によると、市場に出回る水牛肉の多くは高齢の個体や役目を終えた個体に由来します。こうした肉は筋繊維が粗く、結合組織が多いため、柔らかさが損なわれやすいとされています。

肉を柔らかくする方法には、たんぱく質を分解する酵素や、酸を含む植物素材に肉を漬け込む方法があります。植物由来のたんぱく質分解酵素であるブロメラインは、その代表的な例です。研究チームが注目したのは、酸味の強い熱帯の果実ビリンビ(学名 Averrhoa bilimbi)です。ビリンビにはクエン酸、酢酸、シュウ酸などの有機酸が含まれています。研究チームは、この果実の抽出液を水牛肉パティ(ハンバーグ状に成形した肉)の軟化剤として使い、その効果をブロメラインと比べました。著者らによると、水牛肉製品でビリンビを軟化剤として評価し、ブロメラインと比較した研究はまだ少ないということです。

漬け込み条件を変えてパティを作り、多角的に測定

研究チームは、切り分けた水牛肉を5つの条件に分けました。何も処理しない対照、ビリンビ抽出液30%と50%、ブロメライン溶液7%と30%の5条件です。それぞれ4℃で24時間漬け込んだ後、肉をひき肉にし、脂肪や塩などと混ぜてパティに成形しました。

出来上がったパティについて、次の項目を調べました。酸性度を示すpH、肉が水分を抱え込む力(保水性)、加熱後に重さがどれだけ残るか(加熱歩留まり)、水分・たんぱく質・脂肪などの成分、色、そして機械で測った硬さや噛みごたえです。さらに、専門的な訓練を受けていない30人の参加者に、香り、味、柔らかさ、総合的な好ましさなどを9段階で評価してもらいました。

ブロメラインはよく柔らかくするが、味の評価は下がった

ビリンビ抽出液に漬けたパティは、対照やブロメライン処理よりpHが低くなりました。加熱前のpHは、対照が6.04だったのに対し、ビリンビ処理では5.89〜5.95でした。著者らは、果実に含まれる有機酸が肉に染み込んだためと考えています。

機械で測った硬さは、どの処理でも対照より低くなり、軟化剤の濃度が高いほど下がる傾向がありました。特にブロメラインの効果は大きく、30%ブロメラインのパティの硬さは対照の半分以下でした。噛みごたえを示す値も、30%ブロメラインで最も小さくなりました。保水性はすべての処理で対照より高くなりました。一方、加熱歩留まりは処理によって下がりました。対照が約65%だったのに対し、30%ブロメラインでは約49%にとどまりました。また、軟化剤の濃度が上がるにつれて、パティに含まれるたんぱく質と脂肪の割合は低くなりました。

味わいの評価では、ビリンビとブロメラインの間で差がはっきり分かれました。ビリンビで処理したパティは、味や風味の点数が対照と統計的に差のない水準を保ちました。これに対し、ブロメラインで処理したパティは点数が有意に低くなりました。総合的な好ましさは対照が最も高かったものの、ビリンビ処理との間に統計的な差はありませんでした。一方、ブロメライン処理、とくに30%では評価が明らかに下がりました。著者らは、ブロメラインの強いたんぱく質分解作用が行き過ぎ、風味や香りなどに悪影響を与えたと解釈しています。

身近な果実を使ったほどよい軟化

研究チームは、ブロメラインは肉を柔らかくする作用が強い一方で、味わいを損ないやすいと結論づけました。ビリンビ抽出液は、硬さを下げながらも、味や風味、総合的な好ましさを損なわなかったと報告しています。なかでも30%の濃度は、食感の改善と味わいのバランスがとれていたとしています。この研究は、地域で手に入りやすい果実が、硬さが課題とされてきた水牛肉製品の価値を高める軟化剤になりうることを示しています。

原著論文の著者・所属:NUR AQILAH MOHAMAD ARIF(Department of Food Technology, Faculty of Food Science and Technology, Universiti Putra Malaysia, 43400 UPM Serdang, Selangor, Malaysia)、Nor Anis Zabidi(Department of Food Technology, Faculty of Food Science and Technology, Universiti Putra Malaysia, 43400 UPM Serdang, Selangor, Malaysia)、Kowsar Abdirahman Afyare(Department of Food Technology, Faculty of Food Science and Technology, Universiti Putra Malaysia, 43400 UPM Serdang, Selangor, Malaysia)、Nor-Khaizura Mahmud Ab Rashid(Department of Food Science, Faculty of Food Science and Technology, Universiti Putra Malaysia, 43400 UPM Serdang, Selangor, Malaysia.)、Nurul Izzah Khalid(Department of Food Technology, Faculty of Food Science and Technology, Universiti Putra Malaysia, 43400 UPM Serdang, Selangor, Malaysia)、Asyrul-Izhar Abu Bakar(Department of Food Technology, Faculty of Food Science and Technology, Universiti Putra Malaysia, 43400 UPM Serdang, Selangor, Malaysia)、Ismail-Fitry Mohammad Rashedi(Halal Products Research Institute, Universiti Putra Malaysia, 43400 UPM Serdang, Selangor, Malaysia)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):NUR AQILAH MOHAMAD ARIF, Nor Anis Zabidi, Kowsar Abdirahman Afyare, et al. Effect of Averrhoa Bilimbi Extract and Bromelain as Tenderisers on Physicochemical and Sensory Properties of Buffalo Meat Patties. Tikrit Journal for Agricultural Sciences 2026-09-01. DOI: 10.25130/tjas.26.3.22. 原著ライセンス:CC BY.