著者の所属・活動拠点の国は、韓国、アメリカです。

掲載誌:Applied Sciences

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

コーヒーの産地の個性を菓子づくりに生かせるか

コーヒーは飲み物としてだけでなく、食品に色や香り、風味を加える素材としても関心を集めています。研究チームが注目したのは、韓国の伝統的な菓子「ヤンゲン(羊羹)」です。豆あん・寒天・砂糖から作るゲル状の菓子で、日本の羊羹に近いものです。加える素材によって色や食感、味わいが変わりやすいため、さまざまな素材を組み合わせる試みが行われてきました。

グアテマラ産コーヒーの抽出液をヤンゲンに加える先行研究はすでに報告されています。グアテマラ産はチョコレートやナッツのような風味で知られます。一方、今回用いたエチオピアのイルガチェフェ産は、花のような香りや、レモンやグレープフルーツを思わせる柑橘系の風味で知られます。研究チームは先行研究と似た枠組みをこの産地のコーヒーに広げ、焙煎の深さと加える量によってヤンゲンの品質がどう変わるかを調べました。

焙煎度3段階と濃度3段階で試作

研究チームは、2024年に収穫されたエチオピア・イルガチェフェ産の生豆を浅煎り・中煎り・深煎りの3段階に焙煎し、それぞれエスプレッソとして抽出しました。ヤンゲンは実験室で作り、配合中の水の一部をコーヒー抽出液に置き換えました。抽出液の割合は2%、4%、6%で、抽出液を加えない対照試料も用意しています。コーヒーによる変化を見分けやすくするため、色や風味の強い小豆あんではなく白あんを使いました。

調べた項目は多岐にわたります。水分・灰分・脂質・たんぱく質・炭水化物などの基本的な成分、色、酸性度を示すpH、溶けている固形分の量を示す糖度(Brix値)を測りました。さらに、植物由来成分の一群であるポリフェノールの総量と、試験管内で特定のラジカル(不安定な分子)を消去する力を測る「DPPHラジカル消去活性」も調べています。このほか、機器で測った硬さ・弾力・噛みごたえなどの食感と、大学生50人による色・香り・甘さ・苦さ・噛みごたえ・全体の好ましさの9段階評価も行いました。

色と食感がはっきり変わり、深煎りではラジカル消去活性が上昇

もっとも目に見える変化は色でした。抽出液を加えると、どの焙煎度でもヤンゲンの明るさが下がり、赤みと黄みが増して、対照との色の差が大きくなりました。著者らは、焙煎中に生じる褐色の色素などが関わっている可能性を指摘しています。

pHは、抽出液を加えたすべての試料で対照より高くなりました。糖度は焙煎度と濃度の組み合わせによって変わりましたが、濃度を上げるほど高くなるという単純な傾向は見られず、浅煎りと中煎りでは4%で最も高くなりました。成分では、同じ濃度で比べると深煎りの試料はおおむね水分が多く、浅煎りと中煎りでは6%の試料で炭水化物が多くなりました。

ポリフェノールの総量は、どの試料も対照と同程度で、統計的に意味のある差は見られませんでした。これに対し、DPPHラジカル消去活性は深煎りの試料で濃度が高いほど上がり、深煎り6%の試料が全試料の中で最も高い値を示しました。浅煎りと中煎りでは、濃度による有意な差は見られませんでした。ポリフェノール総量と活性の動きが一致しなかったことから、著者らは、焙煎でできる成分などが関わった可能性に触れています。ただし、どの成分が原因かは今回の研究では特定されていません。

食感では、抽出液を加えると、どの焙煎度でも硬さが増しました。ただし、最も硬くなった濃度は浅煎りでは6%、中煎りでは2%、深煎りでは4%と、焙煎度によって異なりました。また、半固形の食品をかみ砕くのに必要な力の目安となる「ガム性」と、噛みごたえを表す「咀嚼性」の指標も、抽出液を加えるとおおむね高くなりました。ただし、食感の変化は濃度に単純に比例するものではありませんでした。

試食評価では、色・香り・噛みごたえの好ましさに、抽出液の濃度や、濃度と焙煎度の組み合わせが有意に影響しました。一方、全体としての好ましさは、ほとんどの配合で対照と同程度でした。

焙煎度と濃度の組み合わせが品質を左右する

この研究から分かるのは、エチオピア産コーヒー抽出液を加えると、ヤンゲンの色や食感、香りに関わる好み、試験管内でのラジカル消去活性が変わるということです。さらに、その変わり方は焙煎度か濃度のどちらか一方ではなく、両者の組み合わせによって決まる部分が大きいと報告されています。

著者らは、エチオピア産コーヒー抽出液が、見た目や食感などの性質を変えたコーヒー風味のヤンゲンをつくる素材になりうると結論づけています。また、グアテマラ産を用いた先行研究とはポリフェノール総量や糖度の傾向が異なっており、コーヒーの産地の違いが菓子の性質に影響しうる可能性も示唆されています。

原著論文の著者・所属:Minseo Cho(Department of Food Science and Nutrition, Dankook University, Cheonan 31116, Republic of Korea)、Taehyung Yun(School of Wellness Industry Convergence, Major in Food and Nutrition, Hankyong National University, Ansung 17579, Republic of Korea)、Jisu Lee(Department of Food Science and Nutrition, Dankook University, Cheonan 31116, Republic of Korea)、Bong-Hyun Kim(Sotirion Biosciences, Germantown, MD 20876, USA)、Miae Doo(Department of Food and Nutrition, Kunsan National University, Gunsan 54150, Republic of Korea)、Hyun-Joo Lee(School of Wellness Industry Convergence, Major in Food and Nutrition, Hankyong National University, Ansung 17579, Republic of Korea)、Jung-Heun Ha(Department of Food Science and Nutrition, Dankook University, Cheonan 31116, Republic of Korea)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Minseo Cho, Taehyung Yun, Jisu Lee, et al. Effects of Roasting Degree and Concentration of Ethiopian Coffee Extract on the Quality Characteristics of Yanggaeng. Applied Sciences 2026-08-15. DOI: 10.3390/app16168149. 原著ライセンス:CC BY.