著者の所属・活動拠点の国は、インドネシアです。

掲載誌:World s Veterinary Journal

ライセンス: CC BY 4.0 対象: 公開論文 確認元: original_cached_pdf

研究の目的

高温で殺菌した牛乳(殺菌乳)は栄養豊富な乳製品ですが、食物繊維や抗酸化成分は比較的少ないとされています。研究チームは論文の中で、牛乳にはもともと食物繊維がほとんど含まれないことや、インドネシアやマレーシアの成人の食物繊維摂取量が推奨量を下回っているという先行研究の報告を背景として挙げています。

そこで著者らが注目したのが緑豆(りょくとう)です。緑豆はたんぱく質や食物繊維を含み、抗酸化作用を示すフラボノイドなどの成分も持つことが知られています。一方で、緑豆の抽出液を殺菌乳に加えた場合に、加熱殺菌後の抗酸化活性、食物繊維、たんぱく質、粘り気、色がどう変わるかについての情報は限られていました。この研究は、牛乳の一部を緑豆抽出液に置き換えることでこれらの性質がどう変化するかを調べることを目的としています。

どのように調べたか

研究チームは、浸水させて煮た緑豆をミキサーにかけ、布でこして抽出液を作りました。この抽出液を、全脂粉乳を水に溶かした牛乳と混ぜ、牛乳だけのもの(緑豆0%)と、牛乳の20%、40%、60%を緑豆抽出液に置き換えたものの4種類を用意しました。各配合には甘味料のステビアと、こんにゃくいもの一種であるポラン芋の粉を少量加えています。それぞれ3回ずつ作り、オートクレーブ(高圧加熱装置)で105℃・5分間加熱しました。なお、出来上がった製品を人や動物が飲む試験は行っていません。

加熱後の試料について、抗酸化活性(DPPHと呼ばれる試薬を用いて、有害な反応を起こしやすい分子をどれだけ打ち消せるかを調べる方法)、食物繊維含量、たんぱく質含量、粘度、そして色を測定しました。色は、明るさを示すL*、赤み(プラス)と緑み(マイナス)を示すa*、黄み(プラス)と青み(マイナス)を示すb*という三つの指標で表しています。

主な結果

論文によると、緑豆抽出液の置き換えは、調べたすべての項目に統計的に意味のある影響を与えました。抗酸化活性は、牛乳だけの18.54%から、60%を置き換えたものでは29.14%に高まりました。食物繊維含量も0.25%から3.22%へと、緑豆抽出液の割合が増えるほど段階的に増加しました。

一方、たんぱく質含量は単純には増えませんでした。数値が最も高かったのは20%置き換えの2.28%で、牛乳だけのもの(2.17%)とは統計的な差はなく、40%と60%では約1.7%に下がりました。著者らは、緑豆抽出液は水分が多く牛乳よりたんぱく質の濃度が低いため、割合を増やすと薄まる効果が出たことや、加熱中に緑豆由来の成分と牛乳のたんぱく質が相互作用した可能性を考察しています。

粘度は、緑豆抽出液が多いほど高くなり、1.43センチポアズから1.84センチポアズへと、とろみのある状態になりました。色については、60%置き換えで明るさ(L*)が74.80から66.90に下がり、赤み(a*)が5.61から0.58に減って緑寄りになり、黄み(b*)は2.44から3.67に増えました。つまり、緑豆抽出液を多く加えるほど、やや暗く、緑がかった黄色の見た目になったと報告されています。

研究が示すこと

研究チームは、緑豆抽出液を加える割合によって殺菌乳の性質が変わり、割合を調整することで目的に応じた栄養・機能面の特徴をねらえると結論づけています。抗酸化活性や食物繊維を重視するなら置き換え割合を高く、たんぱく質の量を保つなら20%程度という具合に、成分ごとに望ましい割合が異なる点がこの研究の示すところです。

ただし著者ら自身が述べているように、今回調べたのは物理的・化学的な性質に限られ、保存できる期間や微生物面の安定性、牛乳由来のカルシウムと緑豆由来の鉄の相互作用や吸収のされやすさなどは評価されていません。この研究は、緑豆抽出液が殺菌乳の成分や見た目をどう変えるかを具体的な数値で示した基礎的な報告といえます。

原著論文の著者・所属:Andi Ratna Dewi Sari(Student of the Animal Science and Technology Study Program, Faculty of Animal Science, Hasanuddin University, Makassar 90245, Indonesia)、Fatma Maruddin(Faculty of Animal Science, Hasanuddin University, Makassar 90245, Indonesia)、W. Hatta(Faculty of Animal Science, Hasanuddin University, Makassar 90245, Indonesia)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Andi Ratna Dewi Sari, Fatma Maruddin, W. Hatta. Physicochemical Characteristics of Sterilized Milk Supplemented with Mung Bean (Vigna radiata L.) Extract. World s Veterinary Journal 2026-09-25. DOI: 10.54203/scil.2026.wvj75. 原著ライセンス:CC BY.