ジャーキーをかじったときの、あの奥にある酸味をご存じでしょうか。乳酸は、その名の通り牛乳や乳製品だけのものではありません。糖を利用する過程でできるエネルギー基質で、筋肉や心臓などでエネルギー源として使われる有機酸です。

今回注目するのは、体の中で作られる乳酸ではなく、食品そのものに含まれている乳酸です。日本食品標準成分表には乳酸を含む食品が数多く載っており、その中で含有量の多い上位5品を、可食部100gあたりの数値で見比べてみます。

上位5食品、出自は肉と乳の二手に分かれる

最も多いのはビーフジャーキーで、可食部100gあたり乳酸1.6g。続いて乳酸菌飲料(殺菌乳製品)が1.2g、そして1.1gで3品が同じ水準に並びました。生ハム(促成)プロセスチーズナチュラルチーズ(チェダー)です。

1.1gで並んだ3品の間に優劣はありません。目を引くのは、むしろ顔ぶれです。牛肉・豚肉の加工品と、乳製品という、由来のまったく異なる2つの系統が同じ土俵に並んでいます。

乳酸というと発酵食品や乳製品を思い浮かべやすいところですが、肉の加工品にも乳製品と並ぶ量の乳酸が含まれています。乳酸菌は、米や麦を発酵させたみそやしょうゆ、漬け物、日本酒、そして牛乳を発酵させたチーズやヨーグルトに存在するといわれています。一方で乳酸そのものは、哺乳類の体内で糖が分解される際に生じる中間代謝物でもあり、乳製品や発酵食品だけの成分ではないことが、この顔ぶれからもうかがえます。

量は近くても、中身はまるで違う

乳酸の量だけを見ればひとかたまりに見えるこの5品ですが、他の成分に目を移すと個性がはっきり分かれます。ビーフジャーキーは、乳酸だけでなくアミノ酸が豊富な食品です。体内で合成できず食事から摂る必要がある不可欠アミノ酸のイソロイシンが2600mg、筋肉のエネルギー代謝に関わる分岐鎖の不可欠アミノ酸であるロイシンが4500mg、セロトニンの材料になる不可欠アミノ酸のトリプトファンが690mg含まれています。乾燥させて水分を抜いた分、栄養素が凝縮された食品といえます。目安は1枚5gぐらいですが、食塩相当量も4.8gと多いため、一度に何枚も食べるものではありません。

乳酸菌飲料(殺菌乳製品)は、脂質がほぼゼロという際立った特徴を持ちます。発酵させたあとに殺菌したタイプの乳酸菌飲料で、水などで薄めて飲む濃縮タイプの飲み物です。

もう一段、桁の変わる数字があります。生ハム(促成)ヨウ素です。可食部100gのうちヨウ素は180µgで、これは女性30〜49歳の推奨量140µg/日の129%にあたる量です。

ヨウ素は甲状腺ホルモンを構成し、成長・発達やエネルギー代謝に関わる栄養素とされています。耐容上限量も定められていますが、目安は1枚7gぐらいですから、通常の食べ方で問題になる量ではありません。豚肉に牛・馬・羊の肉を混ぜて作られることもあるといわれ、皮膚や粘膜の健康維持を助けるナイアシンも9.9mg含まれています。

チーズ2品はさらに対照的です。プロセスチーズは、コラーゲンに多く含まれるアミノ酸で、20種のたんぱく質構成アミノ酸の中で唯一の環状イミノ酸であるプロリンが2600mgと豊富です。一方チェダーは、視覚の維持や成長・生殖、皮膚や粘膜の健康に関わるとされるレチノール(ビタミンA)が310µg、そしてカルシウムが740mgと際立ちます。

このカルシウムは、可食部100gのうち女性30〜49歳の推奨量650mg/日の114%にあたる量です。カルシウムにも耐容上限量が定められていますが、目安は1切れ25gぐらいですから、通常の食べ方で問題になるものではありません。ナチュラルチーズには乳酸菌や酵素が含まれているといわれ、そのカルシウムは牛乳より吸収率が高いとされています。

量は並んでも、選ぶ理由は食品ごとに違う

乳酸の量という一つの物差しで見れば、肉の加工品も乳製品も近い水準に並びます。しかし数字の裏側をのぞくと、ビーフジャーキーはアミノ酸の濃縮度で、生ハムはヨウ素の含有量で、チェダーはカルシウムの豊富さで、それぞれ異なる持ち味を持つことが分かります。つまり、この5品を分けるのは乳酸の量ではありません。ビーフジャーキーはアミノ酸の濃さと塩分の多さ、生ハムはヨウ素、チェダーはカルシウム。選ぶ手がかりは、食品ごとに別の成分にあります。

※本記事は日本食品標準成分表(八訂)のデータ等をもとに作成しました。

栄養素のはたらき・摂取基準の記述は、次の公的資料に基づきます:厚生労働省「日本人の食事摂取基準」食品安全委員会 評価書厚生労働省 e-ヘルスネット