著者の所属・活動拠点の国は、中国です。
掲載誌:Ultrasonics Sonochemistry
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
サトウキビから砂糖の原料となる汁を搾ったあとに残る繊維質の搾りかすは「バガス」と呼ばれます。研究チームは、このバガスから得た食物繊維(以下、バガス食物繊維)を加えた「シンバイオティクス」ヨーグルトを対象に、品質がどう変わるかを調べました。シンバイオティクスとは、プロバイオティクスと呼ばれる有用な微生物と、その働きを支える成分を組み合わせた食品を指します。
著者らが注目したのは、発酵の工程に超音波を当てる方法と、2種類のプロバイオティクスの乳酸菌を組み合わせて発酵させる方法です。これらがヨーグルトの品質に与える影響を検討しました。
何を調べたか
抄録によると、研究チームはまずバガス食物繊維の添加量を検討しました。そのうえで、乳酸菌の Lactobacillus plantarum(ラクトバチルス・プランタルム)CGMCC 1.5953 株と Lactobacillus fermentum(ラクトバチルス・ファーメンタム)CGMCC 1.7434 株を使い、超音波を併用して発酵させました。
評価した項目は、食感、レオロジー特性、微細構造、官能評価です。レオロジー特性とは、流れやすさや粘り、変形のしやすさといった物理的な性質を指します。官能評価は、人が実際に味わったりにおいをかいだりして点数をつける評価方法です。
さらに、ヨーグルトに含まれる多数の小さな分子(代謝物)をまとめて測定するメタボロミクス解析を行いました。香り成分の分析には、揮発性成分を捉えて分離・同定する手法を、そのほかの成分の分析には液体クロマトグラフィーと質量分析を組み合わせた手法を用いています。これらの分子レベルの分析結果を官能評価と照らし合わせました。
主な結果
研究チームは、バガス食物繊維を0.25%(w/v)加えると、ヨーグルトの離水が有意に減ったと報告しています。離水とは、ヨーグルトの表面に水分(ホエー)が分離して浮き出てくる現象です。
また、2種の乳酸菌による超音波併用の発酵によって、ヨーグルトの食感、レオロジー特性、微細構造、官能評価の点数が改善したとしています。メタボロミクス解析では、糖アルコールの一種であるガラクチトールが11.91倍に増加していました。一方で、L-フェニルアラニン、L-グルタミン酸、L-アロトレオニンといったアミノ酸類の濃度は低下していました。著者らは、これらの代謝物の変化が品質の改善を裏付けるものだと述べています。
官能評価と分子レベルの分析を合わせて検討した結果も示されています。食感の評価点の向上は、バガス食物繊維に由来する代謝物(L-エリトルロース、α-ラクトース、エリトリトールなど)と関連していました。においの評価点の向上は、酢酸エチル、ヘキサン酸、2-ノナノンといった香り成分の増加と関連していました。関与する主な代謝経路としては、ガラクトース代謝、チロシン代謝、グリシン・セリン・トレオニン代謝、アミノ酸の生合成、リシンの分解が挙げられています。
この研究が示すこと
この研究は、砂糖の製造で生じるバガスから得た食物繊維をヨーグルトに加え、超音波を併用した2種の乳酸菌による発酵と組み合わせることで、食感や香りの評価が向上したことを報告しています。著者らは、その変化を代謝物のレベルでも捉えました。研究チームは、この成果がバガス食物繊維を付加価値の高い形で活用することや、高品質なヨーグルトの製造に役立つ知見になるとしています。
著者:Hui Zhou(College of Food Science and Technology, Hunan Agricultural University, Changsha 410128, China)、Wenying Yuan(College of Food Science and Technology, Hunan Agricultural University, Changsha 410128, China)、Chengfeng Xu(College of Food Science and Technology, Hunan Agricultural University, Changsha 410128, China)、Xiefei Li(School of Public Health, The Key Laboratory of Environmental Pollution Monitoring and Disease Control, Ministry of Education, Guizhou Provincial Engineering Research Center of Ecological Food Innovation, Guizhou Medical University, Guiyang 561113, China)、Zhen Wu(Key Laboratory of Animal Protein Food Processing Technology of Zhejiang Province, College of Food and Pharmaceutical Sciences, Ningbo University, Ningbo 315832, China)、Daodong Pan(Key Laboratory of Animal Protein Food Processing Technology of Zhejiang Province, College of Food and Pharmaceutical Sciences, Ningbo University, Ningbo 315832, China)、Jie Luo(College of Food Science and Technology, Hunan Agricultural University, Changsha 410128, China)、Xiankang Fan(College of Food Science and Technology, Hunan Agricultural University, Changsha 410128, China)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Hui Zhou, Wenying Yuan, Chengfeng Xu, et al. Ultrasound-assisted binary probiotic fermentation of sugarcane bagasse dietary fiber-containing synbiotics yogurt: Increased galactitol content to improve yogurt rheological properties and flavor. Ultrasonics Sonochemistry 2026-10-01. DOI: 10.1016/j.ultsonch.2026.108118. 原著ライセンス:CC BY.